第6話

 クラウス・ヴィンセントは、小国アナント王国公爵家の長男としてこの世に生を受けた。


 父親の名前はランドルフ・ヴィンセント公爵。時の王、ルーカス・ゲアート・アナント。通称ルーカス王の弟であった。


 クラウスの実母であるディアマンテ・エレノア・ヴィンセントは大国・ヘイムス王国の元第八王女であったが、クラウスを産んで間もなく他界した。


 最愛の妻を亡くして失意のランドルフ公爵は、同じように夫を亡くしていた使用人――アデリナと恋に落ち、妻とした。


 アデリナには二人の連れ子がいた。


 その連れ子の名前こそが、エロディアとマルターである。


 二人は双子で、姉であるエロディアも妹であるマルターもともに義理の義兄が大好きだった。


 ヘイムス王家とアナント王家双方の血を引くクラウスには、幼い頃から強い期待が寄せられていた。

 アナント王国執政部からすれば、クラウスの存在は両国の絆を結ぶ鍵でもある。


 ――だから従兄妹にあたるアナント王国王女――アレクサンドラ・ベルティーナ・アナント王女と親しくしていても、強く咎める者は誰もいなかった。


 クラウスは幼少の頃より、アナント式宮廷剣術を父から学んでいた。

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