禍々しい渦は棘に絡み合って
澪凪
第1話 渦
「死んでよ、早く。」
「分かってる。」
「どうして死なないの?」
「死ねないから。」
「やる気がないのよ。」
「他人に迷惑かけることを考えると億劫だから。」
「本当に死にたいの?」
私は友達に肩をぽんぽんと叩かれた。
「なぎささん、大丈夫?」
友達に視線をやり、教卓に視線を向けると教授が不思議そうにしていた。
「なぎささん、答えられそうにないなら俺が答えるよ。」
教授は私と目線を合わせ、答えを待つ姿勢を保った。
このタイプは、きっと私に答えて欲しいのだろう。そう思い、友達の有難い提案を断り、マイクを持った。
「心理学的アプローチとしては……」
マイクを持ちながら震える手元を、友達は優しく撫でてくれていた。
話し終えた瞬間に、マイクは友達の手に渡り、次のグループへと回っていた。
「なぎささん、無理しないで良かったのに。」
「心配かけてごめんね、無理はしてないよ。」
優しく手を撫でないで。
貴方の骨張った手のひらから伝わる優しい温もりを忘れたくなくなるから。
小さな小さな渦が私の中に生まれた。
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