第17話

 今日も昨日と同じようにバイクでびゅうううん! って、孤児院に向かった。

 振り落とされへんようにしがみつくだけで精一杯やから、エネルギー補給できへんやの。神父様の近くにおるだけでちょっとは補給されていくような気はするんやけど、それはきっと、気のせいなんやと思う。ダークエルフの血が濃いなら気のせいやないかもしれへんけど……。

 バイクを降りる瞬間を見計らって、幻術を解く。周りに人がおったら、急にウチが現れることになるから怪しまれそう……。ピクシーとかエルフが働いてるんやから、サキュバスがおっても――ううん、駄目やの。サキュバスは討伐対象に入ってまうから駄目やの。

 リラクゼーションサロンやと大歓迎されるのに……、ひどいやの。

「おっ。今日もサキュバスを連れてるんだな」

「傍に置くと便利ですからね」

 ダメンズエクソシストの夏樹様がお花に水やりしてたから、神父様はお話してた。きっと近くにピクシーがおるんやと思うけど、四つ葉のクローバーを頭に乗っけてへんから、姿が見えへん。急に夏樹様のほっぺが伸びてたから、肩の上におるんかな……。

「サキュバスって何ができるんだ? リフレ以外に」

「愛玩ですかね」

「……おまえ、よく祭司できるよな」

「よく言われますが、できますよ」

 ウチ、可愛がられてるんかな……。どちらかというと慰み者扱いされてる気がすると思うやの。もしかして、ペット扱いされてる!?

 神父様の後ろをぽてぽてついていく。今日はお誕生日会があるらしくて、プレゼントが用意されてた。鮮やかで派手派手な箱がいっぱい並んでるの。ちょっと目が痛いやの。

「プレゼントを渡してやってください。私は子供が苦手なので」

「それなら、どうして孤児院なんてしてるんやの」

「生きるためには必要なんですよ。それが神が私に与えた試練なのでしょう。……なりゆきですけど」

 最後の一言が余計やったやの。

 お誕生日会は大きなお部屋で開催された。壁から壁に折り紙をわっかにして繋げたやつがぶらさがってるし、折鶴がいっぱいぶらさがってた。お花もいっぱい飾られてた。なんというか、めちゃくちゃやの。統一感がゼロやの。子供達が好き勝手に飾り付けたんか、あっちは和風。こっちは洋風。そっちは中華。って感じやの。

 神父様はそんなところには目もくれず、少し高い床に乗って、お祈りを始める。それに合わせて子供達も祈る。

 あんまりにも子供やから、せーえきを出せそうな子はおらへん。まだ体の成長が追い付いてないやの。せっかくやから魅了チャームかけとこっかなぁって思ったけど、神父様に睨まれたからやめたやの。気付かれるとは思わんかったの。

 いつの間にかピアノにエルフが座ってた。耳が尖ってるからすぐに人外ってわかるの。エルフがピアノを弾いて、それに合わせて子供たちは聖歌を歌う。ちょっと耳が痛い。祈りの言葉は平気でも歌はダメージを受けるやの。このままやと幻術が解けてまうかも。こっそりお外に避難する。もしかしたら、あのエルフにはウチがサキュバスってバレてるんかもしれへん。攻撃してきてるんかも。それやったらウチも対抗してやらな。

 ――って、神父様もお外に出てきてるやの。

「中におらんくてええの?」

「子供の謎の大声は苦手なんです。『大きな声で歌いましょう』と教えたやつを聖書の角で殴ってやりたい」

「殴るんは駄目やと思うの……」

 しかも聖書で殴るんは駄目やと思うの。

 歌声が止まったので、部屋に戻る。ピアノを弾いていたエルフがドヤァって顔をしてた。聖書の角で殴られて良いと思ったやの。

 その後は、ウチがプレゼントを子供達に配って、子供達のお遊戯を見学して、おしまい。子供が好きならとっても楽しい時間なんやと思うけど、別にウチは子供好きやないから楽しくない。精力をちょっとずつ抜き取ることはできるんやけど、大人のソレとはまた違うから、ほんのちょびっとしか回復せえへん。

 まだお昼前やのに、なんか疲れてきたやの……。一日が長いやの。


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