第15話
午後11時半。神父様は就寝前のお祈りをしてる。
ウチ、何処で寝るんやろ。また縄でぐるぐる巻きにされて床で一晩放置やったら嫌やの。一応契約してるんやから、待遇も変えてほしいやの。
神父様の後をぽてぽてついていく。一緒のお部屋に入る。
「そういえば、貴女の寝床を考えてなかったですね」
「ウチは小焼様と一緒に寝たいやの。なんなら、下半身のお世話もさせてもらいますやの」
「では、床に寝てください。私はベッドで寝ますので」
「……神父様、女の子には優しくしたほうがええやの」
「聖職者が悪魔に優しくする必要はありませんよ? ここに置いてもらえるだけ優しいと思ってください」
「むぅ……」
確かに、ここに置いてもらえるだけ優しいとは思うやの。でも、聖職者って階級があるはずやから……、ここに悪魔がおるってことを上層部の人が知ったら、大変な騒ぎになりそう。
「それなら、この教会にサキュバスがおるってことを言いふらしてきてやるやの!」
「悪魔の言うことと私の言うこと、どちらを信じると思いますか?」
……この神父様、脳味噌筋肉かと思ってたけど、けっこう頭も回る方やったやの。
人間共はきっと聖職者を信じるから、ウチは退治されるだけ。もれなく悪魔を退治した神父様の株も上がる。もしかして、ウチ、利用されてる?
神父様はお布団を持ってきてくれた。マットも持ってきてくれたやの。
「では、私はここで寝るので」
そんで、持ってきたお布団に入ってしもた。
あれ? ウチ、ベッドで寝てええの? それとも、神父様と同じ布団に入ってええの?
すぐに規則正しい寝息が聞こえてくる。時刻は午前0時ちょうど。朝のお祈りが6時ぐらいやったはずやから……、大変やの。人間は8時間寝るのが良いって、知り合いの睡魔が言うてたやの。
ウチはベッドに入ることにした。ふかふか。神父様の匂いがいっぱいする。いつもここで一人で寝てるんやろから、当然なんやけど……、男の匂いやの。
枕に顔を埋めて、すー、はー、すー、はー……。ちょっぴりエネルギー充電。でもやっぱりまだ足りへん。神父様は町の人らについては何も言うてなかったと思うし、外でせーえき搾り取って来てもええかも。
抜き足差し足忍び足。そろーっと窓を開いて、外に飛び出す。脱出成功やの! このまま逃げてもええけど、悪魔は縄張り争いがあるから、変なところに入ったら攻撃されてまう。難しいところ。友好的な子に会えたらええんやけど……、もしくはエルフ族とか。とりあえず、悪魔を嫌ってる人間と天使以外に会えたらええの。でも、どこにも人外の気配が無い。この町はサキュバスがひとりもおらんかったくらいやし……、牛乳を毎晩置くような町なんて早々ないやの。それに引っかかってもうてたウチのおバカ!
活きの良い男の匂いがする方向に飛ぶ。窓からこっそり覗く。あかんの。既に女がおるやの。ヤッてる途中にウチが紛れ込んだら面倒くさいことになってまう。神父様かエクソシストを呼ばれて退治されてまうやの。
できれば、童貞で、なおかつ既に寝てる子がええの。寝てたら夢に入り込んで、せーしを搾り取れるやの。
美味しそうな匂いがする方向に飛ぶ。窓からこっそり覗く。寝てるやの。窓を開いてお邪魔しますやの。濃厚な香りを放つ瓶を手に取って、窓から出て行く。あ、あかんの! そんなつもりやなかったのに。手には牛乳瓶。もうええの。牛乳飲むやの。……神父様が作ってくれたホットミルクのほうが美味しい。帰ろ。
窓から寝室に戻る。神父様がベッドに座ってた。
「おかえりなさい。早かったですね」
「寝てたんやないの?」
「寝てましたよ。けいが夢に現れてくるのを待っていました。ですが、貴女は何処かに行って牛乳を盗んできたようですね」
夢に入り込んで良かったんやの!?
ウチ、また失敗したやの……。この神父様の考えがいまいちわからへん。どうしたら正解かわからへん。メロメロにしてやりたいのに、これやとウチが振り回されてしまってるやの……。サキュバスを悩ませるなんて、なかなかやるやの。
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