第12話
ウキウキしながら寝室に向かう。
きっとシャンデリアをきれいきれいしたご褒美やの。いっぱい搾り取ってやるやの!
よし! と気合を入れて寝室のドアを開く。ガチャンッ! って音がして、上から網が降ってきた。
「何やの!?」
「貴女って疑わないんですか? 簡単に捕まってどうするんですか」
「ひどいやの! ウチを期待させといて、騙したやの!」
「何期待したんだかわかりませんが、悪魔にエサをやることはありませんよ。あと、これ洗濯ネットを繋ぎ合わせただけですから、出てきてください」
「うぅ……」
洗濯ネットを繋ぎ合わせただけの簡易的な網に引っ掛かるなんて、ウチのアホ! おバカ!
網から抜け出す。神父様はベッドに座ってるから、体当たりしたら押し倒せるはず! えい!
「抱きついてきても相手しませんよ」
「何で受け止めるんやの!?」
「貴女がぷにぷにふかふかで抱き心地が良いからですかね」
ここまで言うなら、ウチの
ぐぅうぅ……。地鳴りのようなお腹の音が聞こえてきた。神父様はウチをポイってして、部屋から出てった。
扱いが雑やの……。もっと丁寧に扱ってほしいやの。ぷにぷにふかふかで抱き心地が良いって言うなら、もっと丁寧に扱ってほしいやの。ペット扱いやとしても、こんなんやったらペットも逃げ出してまうやの!
逃げ出しても追いかけて来そうやし、下手したらエクソシストに祓われてまうから、教会に居座っとこ。まさか教会にサキュバスがおるなんて誰も思わんやろし、上手くいけば、ウチに魅了される男がホイホイ増えてくるやの。
は! まさか! そういうことやの!? ウチの魅了で信徒を集めるって魂胆なんかも! 神父様は信徒からの寄付で生活してるみたいやし……。
これは
「神父様。ウチと取引しよやの」
「何ですか? 私の作った味噌煮込みうどんを食べたいんですか?」
「……美味しそうやの」
「お椀を持ってきたら分けてあげます」
「はいやの」
ついつい味噌煮込みうどんをつられてお椀を持ってきてしもたけど、違う! そうやないやの!
あ、でも、おいしい……。熱々で味噌の香りにほっこりするやの。
「つゆは捨てないでください。明日雑炊に使うので」
「美味しかったから、楽しみやの」
「それは良かったです」
神父様は食べ終わった食器を片付けてる。
ちがう! ちがうやの! ウチ、このままやとただの食いしん坊サキュバスになってまうやの!
今度こそ、話をしな!
「ウチと契約してやの」
「それは私も考えていました。ここは信徒からの寄付金と上からの給金で運営しています。副業として孤児院も運営していますが、あちらも寄付金で活動資金を賄っていますので、貴女の労働条件として、一日に牛乳一本は確約しましょう」
「ウチを牛乳だけで働かせんといて!」
「衣食住と牛乳が保障されて、尚且つ教会にいるので、余所者のエクソシストが来ることは滅多にありません。貴女にとっては好条件だと思います。働きに応じてご褒美を与えましょう」
とても好条件のように聞こえるんやけど、神父様は何を得するんやろ? どう考えても、ウチの生活保障しかされてないやの。
「神父様は何を得するん?」
「好みの女を視界に入れることでやる気が出ます」
「……そのやる気をウチにぶつけてくれへんの?」
「貴女を見てると腹が減るんですよね」
ウチ、食べ物として見られてるやの? もしかして性欲と食欲が同じ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます