拗らせた者は一途さを通り越す

 ラッセルが出仕しない。無断で休むようなやつではないと思うのだが、なにかあったか?


「ラッセルはなんでこないんだろうな?」


「はりきって仕事していたのに急に来ないのはおかしいですね」


 セオドアとオレの会話を聞いたエリックが妙にソワソワしている。なんか知ってるな?こいつと直感で思った。


「エリック、なにか知ってるのか?」


「陛下……これはリアン様から聞いたほうが……」

  

「はあ?リアンも絡んでるのか!?……今すぐ話せ。何があった?」


 エリックが図書室であった出来事をポツリポツリと話した。


「ラッセルがオレを!?エリック……冗談言うべきタイミングは考えるべきだぞ?」


 オレが半眼になると、本当なんですってば!と必死で訴えるエリック。


「陛下、エリックは嘘を言っていないと思います。あの男、ただのご学友にしては陛下に執着し過ぎではないかと」


「おまえまで……」


 セオドアがエリックの話にのっかる。しかしオレに常に忠実なセオドアが言うなら、気になる。


「まぁ、良いか。一度、ラッセルと話してみようと思ってた。王宮政務官の寄宿舎へ行くぞ。セオドア、ついてこい……エリックは来るな。おまえ、茶化すからな」


「ええっ!セオドアずるい………じゃなくて、お供しますよ!置いて行かないでくださいよ!」


「おまえは絶対に面白がってるだろ!?来るな!」


 ええええ!と残念そうにオレとセオドアを見送るエリック。


「あいつは……状況を楽しみすぎだ。リアンとラッセルを図書室で引き合わせるなんて、もしラッセルがリアンのことを好きだったとしたら、どうするつもりだったんだ!!」


「陛下の心配はそっちですか?」


「もちろんだ!リアンに近寄るやつは許さない。私塾の時もオレが傍にいて、余計なやつが近寄らないように気をつけていた!」


「陛下もそうとう拗らせてますね」


「…………そうかもな」


 そこは一途なんですねと言って欲しいが、セオドアはそうは思わなかったらしい。オレ、一途を通り越してたか?


 王宮政務官達の寄宿舎に行くと、他の者達はまだ仕事中らしく、シンとしていた。騒がれるとめんどくさいからちょうどよかった。ラッセルの部屋は?と尋ねると驚いたように寄宿舎にいた一人が教えてくれる。 


 静まりかえった廊下を歩く。トントンとノックする。返事が無い。


「いないんでしょうか?」


 オレは目を閉じる。中から気配を感じる。


「おい!ラッセル出てこい。王命だ」


 そう強く言うとギイッと扉が開いた。頭がボサボサで寝込んでいたとわかる風貌だった。


「具合が悪いのか?」


「……リアン……王妃に聞いたんでしょう?」


 はぁ……とオレはその憔悴ぶりにエリックの話は真実だったのかとわかり、嘆息する。他のやつに気づかれると騒ぎになりそうだな。そう思い、ラッセルの部屋へと入り、扉と鍵を閉めたのだった。

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