王が動けば皆が動き出す
「リアン様、嬉しそうですね」
部屋に帰った私にアイシャがクスクス笑って声をかけてきた。
「えっ……ええっと……そう見える?」
「はい。なんだかキラキラしてます。ユクドールのカッコいい王様のこと好きになったわけじゃないですよね?」
ガタッと私は机の脚に引っ掛かってコケかけた。違うわ。そっちじゃないのよ……と言いたいけど言えない。せめて否定しておく。
「そ、そんなわけないわ!」
アイシャが私の言葉を聞いて、ニッコリ笑う。その表情は従順な侍女の顔をしていなかった。自信に溢れ、強い意思が感じられる。まるで別人の顔になった……どういうこと?私は目を細めて警戒した。
「冗談です。リアンお嬢様」
リアン……お嬢様!?このアイシャの正体って!!
私のことをリアンお嬢様と呼ぶ者たちは限られている。それは……。
「クラーク家当主より命じられて、お傍に付き、お守りしておりました。何かわたしにしてほしいことはありませんか?陛下がいらっしゃったら動け!という当主からの言葉でしたので、本日より身を明かしました」
スラスラと自分の正体を明かしていく。
アイシャもまた世界商人だったのね。そしてお父様の手際の良さに舌を巻く。我が父ながら侮れないわ。
「世界商人である証を見せてほしいの。信用してないわけではないけど、大事な役目を頼みたいから確認したいの」
アイシャは無言で、服の腕を捲る。その腕には世界商人の証である銀色の腕輪が溶接されて簡単にはとれないようになっている。
「これでよろしいですか?この国にいることが不審に思いますか?世界商人はどこの国にも入り込んでますよ。商売に情報はかかせませんからね」
「世界商人の名は伊達じゃないのね。でも私はそれに値する報酬を差し上げられるかしら?」
「フフフ。この状況で、報酬の話をだすなんて、さすがはクラーク家当主の娘ですね。リアン様の傍にしばらく仕えましたが、表向きは怠惰に過ごして周囲の女性たちへ向けて寵愛争いに参加しない意思表示をし、ハイロン王の性格を瞬時に見抜き、巧妙にゲームへ誘い、自分からの興味を逸らしましたね。そして水不足を利用してユクドール王がこの王宮に入り込みやすいようにした」
「偶然よ。考えすぎよ」
そうですか?と笑ってアイシャは腕を組む。今までの朗らかな雰囲気は消え失せて妖艶さすらある女性の顔をしている。商人とはすごいものね……。
「リアン様へ報告するまでもなく、察していると思いますが、ハイロン王が手に持っていた、エイルシア王家の印が入っている手紙は陛下ではありません。密かに確認しました」
私はやはりそうなのねと頷く。
「ベラドナが偽造したものね?」
「そのとおりです。中身は元王妃はエイルシア王の寵愛を失い、行く宛がないため、良かったら差し上げようと……もしいらないなら奴隷にでもしてくれという内容でした」
「燃やしてやりたいわ」
ベラドナの悪意がすごく伝わるわ。私は眉を潜める。
「リアン様、それで何をすればよろしいのです?頼みたいこととはなんでしょうか?報酬はご心配なく。クラーク家当主より頂きます」
「今すぐ行ってほしい場所があるの」
アイシャは私の頼んだ内容に目を見開いて驚いた……そして優しく微笑んだのだった。
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