普通の女の子
思った以上に遅くなってしまった。ハイロン王国に先に着いていたコンラッドと合流する。
「え!?ウィルバートが来たんですか!?てっきり三騎士が来ると思いましたよ!?どうしたんですか!?」
「自分の王妃と民を取り戻しに来て何が悪い」
オレがムスッとして、そう言うと、コンラッドが機嫌悪いですねーと苦笑する。
「我々三騎士がウィルバート様を守りますから、ユクドール王におかれましては心配ご無用です」
トラス、フルトン、エリックがオレの周りを固めるようにいる。
「もちろん三騎士もついてるし、心配はしてませんが、きっとリアン様の策はユクドールとシザリアが通過する時に、圧をかけてほしかっただけだと思いますが、まさか王様自らの迎えに来てるとは考えていないんじゃないですかね」
コンラッドは面白いとばかりに口元が笑っている。
「迎えに来てほしいってリアンなら思うさ。口には出さないだろうけど、リアンだって、普通の女の子で、こんな他国に売り飛ばされるなんて、相当、怖い思いをしたはずだ」
ギュッとオレは拳を握りしめる。世論なんて
無視してリアンだけの安全を考え、あのベラドナを処罰してしまえばよかったんだ!ほぼ尻尾を掴んでいたのだからな。自分の動きの遅さがこんなことを招いてしまうなんてと今更、後悔しても遅いが。
「普通の女の子ですか……ねぇ……?普通の女の子は自分の居場所を自ら示してきたり、他国の王を利用したりしようとしませんけどねぇ」
コンラッドがボソッとそう呟いてから、言葉を付け足す。
「内部に入り込みやすいように、ユクドールの水のろ過装置について知りたいとハイロン王が言ってるらしいですが、これもきっとリアン様てすよね?使者をたてて、行かせようと思いましたが、気が変わりました。なんだか楽しそうなので、僕も参加しようと思います!」
「コンラッドもか!?」
「除け者にしないでください。僕もせっかくここまで来たんですから、つきあいますよ。どうせ国へ帰るついでですから」
……実はコンラッドの参加こそ、リアンの策略に含み済みのような気がしたが、それは口には出さずにおこう。
「リアン様を普通の女の子と言うのは少し無理がありますよね」
「普通の女の子なら、裏切られて奴隷商に売り飛ばされた時点で泣いて、心折れてるよな」
「自分の身はどんな手を使おうが、しっかり守ってると思うなぁ」
トラス、フルトン、エリックまでもが、ヒソヒソ話をしている。
「リアンは意外と繊細な普通の女の子だぞ!?」
オレが力説するが、他の四人は肩をすくめたり苦笑したりするばかりだった。
コンラッドも何を言ってるんですかと信じない。
「陛下の周りの敵を次々と潰してるしなぁ〜。今回も長年の因縁の敵を消せたわけだし、リアン様を普通の女の子と呼ぶには、無理があるよなぁ」
エリックが軽い口調でそう言った。普通の女の子なんだ!中身が人より多少好奇心が強いだけなんだよ。なんて言い返しても、これ以上無理そうなので口を閉ざした。
オレには、リアンの無事がわかる。なぜなら最後の切り札をまだ使ってないからだ。使えばわかる。皆が気づくことになるだろう。
使った瞬間、オレは何もかも投げ捨てて助けに行くことになるけどな。リアンが、それくらいやばい状況ということだからだ。そう思い、少し赤い砂の混じった砂漠の街の奥にある大きな城に目を向けたのだった。
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