彼女のもとへ何度でも駆けて行く

 クラーク男爵からリアンの居所を突き止めたと知らせを受けた。


 すぐ三人の騎士を呼ぶ。


「よーっし!名誉挽回!やるぞ!」


「フルトン、なるべく殺すな。裏で糸引く人物をじっくり聞き出してからだ」


 張り切るフルトンに真面目な顔をして釘を刺すトラス。エリックはキョロキョロしている。


「どうした?エリック?」


「陛下、最近、あの王たちの姿を見ないんですが?」


「ああ……。帰った」


『帰った!?』


 声が揃う。三騎士。


「あの二人は二人で忙しいんだ。国へ帰ってもらった」


 エリックが眉をひそめ、トラスは失望を隠さず、フルトンは首を傾げていた。

 

「二国の王だ。するべきことがある。……できればあの二人の出番はない方が良いんだ。その前に相手の動きを止めるぞ!」


「なるほど。わかりました」


 エリックは理解したらしい。トラスも一呼吸遅れて、頷いた。フルトンだけが、なに?なんなんだよー!説明してくれよーっ!と騒ぎながら馬に跨る。


「いくぞ!」


 オレの合図に馬が走りだす。


「フルトン、静かにしろ。こっそり行くのに、バレるだろ!セオドアが陛下の影武者をしてくれているが、時間がない!」


 エリックがフルトンを叱る。唇を尖らせるフルトン。


「陛下、久しぶりですね。四人で行動するのは王になってからは初めてではありませんか?」


 馬を横に並べて走らせるトラスがどこか嬉しそうにそう言った。


「確かにそうだな。父王の時代の腐敗した者たちを粛清しに駆けて行ったな」


「平穏はなによりなのですが、時々退屈になるんです。リアン王妃に感謝です」


「真面目なおまえが言うのは珍しいな」


 トラスにしては珍しい。エリックやフルトンならわかるが、トラスは血の気の多い二人を抑える役目をよくしている。


「腕をふるう場がないと腕が鈍りますから。王妃様のこと、責めないであげてください」


 リアンに感謝していると言って、トラスがリアンを遠回しに庇っていることに気付く。まったくトラスまでリアンに取り込まれてしまったかと苦笑してしまう。


 わかってる。リアンは自分のことで無茶はしない。昔から人のために動くんだ。彼女は人のために自分の才能を使う。だから後宮や王家に入れてはいけなかったのかもしれない。民のために命を削る。オレのために命をかけて守る。そうなるとわかっていたのに我慢できなくて、後宮にとどめたのはオレだ。


 だけど、あの時、リアンがオレを選ばず、家に帰ったなら、絶対に迎えに行っていた。リアンのいない人生なんてオレには考えられないんだ。


 風のように郊外に向けて四人で走る。駆けてゆこう。どこまでもリアンがいる場所へオレは何度でも行こう。


 いつの日か鼓動が止まるその瞬間まで、君と出会えたことを後悔しない。

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