海の王と少年リアム
「ちなみに今回、かかった費用はシザリア王に請求させてもらうわよ」
私は戦費の紙をヒラヒラさせる。
「なんでだっ!」
「当たり前でしょう?そもそもよく考えてみなさいよ。シザリア王国の船で勝手に人の国の海に乗り込んできて、この騒ぎ。責任をとってもらいます」
「……さっきから気になっていたが、その声、容貌。まさかあの参謀の少年は!?」
私は答えずにニッコリ微笑んだ。シザリア王の目が見開く。
「信じられん。女を参謀に置いていただと?しかも王妃だぞ?エイルシア王は何を考えてるんだ」
「優秀な者を重用するという姿勢なのよ。それが王妃だろうとね。視野や懐が狭いと損するわよ」
「……確かにエイルシア王は、そう言っていたな。王妃を使うとか、やりすぎだろ!?」
そこで、ハッ!とするシザリア王。ぷるぷると震える人差し指を私に向けた。
「ま、まさかとは思うが、霧が出ることも計算してたのか?さらにエイルシアの港は地形的に湾になっていて、船を左右から砲撃で挟撃できるということも計算か?樽に潜んだ騎士たちも!?」
「もちろん私が、陛下に進言したのよ」
パクパクと空気を吸うだけの口になってて、魚のようなシザリア王。見た目は頬に傷があり、態度も威圧的なのに、楽しいリアクションをしてくれる。なかなか可愛く思えてきた。
私とシザリア王が交渉していると、ウィルバートが入ってきた。
「悪い、遅れた。……ん?なんでシザリア王は驚いているんだ?」
静かに護衛として立っていたセオドアがボソッと報告する。
「リアムの正体がリアン様とバレました」
なるほどなぁと笑うウィルバート。笑ってる場合かっ!とシザリア王が突っ込む。
「はああああ……しかし、実際してやられたからな。仕方ない。その才能は認める。かなり悔しいがなっ!」
「才能褒められるのは嬉しいけど、ちゃんとお金払ってくれるほうが嬉しいから、そこはうやむやにしないでくださいね」
私がにーっこり笑ってそう言うと、請求書をバッと奪い取って、ちきしょおおおおお!と叫んで部屋からシザリア王は出ていった。
「さすがあの親にしてこの娘ありだな……似てるな」
「お父様と一緒にしないでっ!」
小さく呟いたウィルの言葉を逃さない。
「今回も見事な策だった。ありがとうリアン」
「どういたしまして。私の策を使ってくれるのはきっとこの世でウィルバートだけよ。シザリア王の反応は普通よ」
「オレは昔からリアンといるから、リアンの才能を嫌というくらい見せつけられてきた。それを幸運と思っても良いのかな?」
「私、ウィルバートに幸せを運ぶ人になってる?」
「ちゃんとなってるよ。……戦に参加してもしなくてもだ」
さりげなく、戦への参加は危険だから反対だよと優しく言っているウィルの言葉を聞こえないふりをしたのだった。
あり得ない王妃だと言われようが、なんだろうが、私はウィルバートとこの国の危機をどんな手を使ってでも守りたい。何を犠牲にしようが、誰かになじられようが。
……でもこれは。きっと危険でもある。回り回って自分の身になにかが返ってくる。策に嵌めるものは策に嵌められる。そんな嫌な予感がした。
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