拒否される王

「会うことを拒否してる?」


 姉に話がしたいと言ったのに、オレに会いたくないと言うらしい。

 

「そんな権利はないだろ!?使者もやって来たのに、説明しないとか、どういうつもりだ!?」


 ドンッと机を叩く。インクの瓶が揺れる。危うく溢れるところだった。セオドアが神がかった反射神経でインクの瓶を机からサッと持ち上げて避けた。


 メイド長と後宮の責任者の者を呼んでいる。メイド長が銀縁眼鏡の奥の目をキラッとさせて、厳しい顔をした。


「リアン様と親しげにお話をされていたようです。ここはお任せしてみたらいかがでしょうか?」


「リアンに何かしようとする動きはないか?」


「それは無いようです。むしろ好ましく思ってらっしゃるようです。……ソフィー様は昔から知っておりますが、悪い方ではありません。陛下、以前も申し上げましたが、後宮にいたすべての女性達が悪かったわけではないのですよ」


「………オレは後宮を無くしたい」


「後宮は後宮の伝統と役割があるのです」


 後宮の責任者の女性はビシッと言い切る。


「経費削減にもなるだろ?」


「そんな問題ではありません。後宮の無い王家なんて……リアン様が軽んじられてると思われるかもしれませんよ。リアン様も嫌な思いをします!」


「リアンは別に気にしなさそうだけど?図書室付近に部屋を用意するほうが小躍りして喜ぶ予感がする」

  

「だめですっ!陛下、他の男性の方に近づけないためでもあります。リアン様は失礼ですが、三騎士やガルシア将軍、図書室のクロード様……そちらのセオドア様とも仲が良すぎます。たまに警備の騎士とも会話をするなど、少し自由にしすぎるのではと危惧しております」


 セオドアがリアン様はタイプじゃないから大丈夫ですとボソッと言ったが、タイプとか聞いてるわけじゃないんですっ!と後宮の責任者にピシャリと返される。


「王妃は後宮から出ないものです。リアン様のの身の安全のためにも、お考えください」


 リアンはこっそり王宮外にも出てることがあるとは言いにくい雰囲気だ。確かに、後宮で安全に守られて、リアンが大人しくいてくれるなら、オレもほんとに安心していられるんだけどな。リアンだしなぁ……。


 リアン様には無理じゃないですか?とセオドアがオレの心を読むようにそう言う。


「まあ、この話はずっと平行線だ。とりあえず姉のことが先だ。相手国は相当怒っている。外交問題だ。話をしたいからオレの方から行く。そう言っておいてくれ」


「かしこまりました。ソフィー様にそうお伝えします」


「陛下、どうか冷静に話し合われてくださいね」

  

 はあ……とオレはため息を吐く。まったく通常業務以外にこんなことがあるなんてめんどくさすぎる。でも悠長にしている時間はなさそうだ。どうもシザリア王国からは焦りに似たものを感じる。強硬手段をとってくる可能性が高い。


 その前に事をおさめなればな……。

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