幸せになるためには

 陛下より贈り物ですとアナベルが花を飾っている。たまにウィルは季節の花々を贈ってくれる。


 部屋に花があると、なんだか明るくなる感じがする。アナベルは手際よく活けていく。


「お嬢様、なんでしょうか?」


 その姿をジッと見つめていたことに気づかれてしまった!私は慌てて、なんでもないわっ!と本で顔を隠した。


 ……ダメ。本の内容に集中できない。


「あのぅ……」


 恐る恐るアナベルに話しかける。花を美しく飾り終わって、どうしたんですか?と問われる。


「アナベル、最近なんだか綺麗になった気がして!もしかして……」


「嫌ですねー!そんなこと言っても、お茶の時間のおやつはいつもどおりですからね!」


 いや、そうじゃなくて!と私は口をパクパクさせた。……ダメ、聞けない。


 私は夜を待った。今日はウィルに話があるのと伝達を頼んだので、来てくれると思う。


 執務で忙しいところ悪いけどと、思いつつ、この問題を一人で抱えきれない私だった。


「やあ。リアンから呼んでくれるとか、なんだか嬉しいなー」


 ニコニコしてやって来たウィルが能天気なセリフを言って部屋に入ってくるとアナベルは一礼して出ていった。私はその姿を見送る。


「ちょっと座って」


 ウィルは私の真面目な顔を見て、え!?深刻なやつ!?とちょっと驚いている。


「オレに会いたくて来てほしいっていったわけじゃなかったのか!?」


「ウィルは呑気ね」


「いや、まぁ……リアンから甘いお誘いって来たことないから、そんなわけないよなって思ってはいたんだけど。で、なんだろう?」


 そんなわけないよなって言いつつも、ちょっと残念な顔をしているウィル。


「実はアナベルとセオドアに恋や愛という感情が互いにありそうで……」


「えっ!?………っと、ごめん」


 大声をあげかけて口を塞ぐウィル。あなたが叫ぶと何事かって兵が駆けつけてくるわよと私は半眼になった。


「そんな、まさか……そういう雰囲気だったか?」


「雰囲気どころか、恋人っぽい会話してたのよっ!私、目を閉じてずっと寝てる演技をしてて、二人の話を聞いていたんだもの!」


「……夢と勘違いしてないか?」


「失礼ね!ちゃんと起きてたわ」


 うーんとウィルは腕を組む。


「でもアナベルはセオドアとの身分差があるって言って、退いてしまったのよ」


「身分差か……まあ、セオドアの家は貴族だからそうなるか」


「どうにかならないかしら?アナベルに幸せになってもらいたいわ。私の姉よりも姉らしい存在だもの」


 私の困っている様子を見て、クスッと笑うウィル。


「なに??なんで笑ってるの?」


「頭脳明晰、軍略に長け、内政にも詳しいリアンが策をたてるのに、この件に関してはオレの力まで必要とするくらい大変なものなんだなぁと思ってね」


「……苦手だもの」


「こういうものは本人達に任せておくべきなんだ。様子を見よう。オレもセオドアの様子を見ておく」


「そうね余計なお世話かもしれないし、見守るわ」


 ウィルは大人だわと私は思う。気になって、そわそわしてるのは私だけなのね。


「……と、いうわけで、リアン、貴重な夜だし………ね?」


 ニッコリとウィルは微笑んだのだった。

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