空の城
リアンは兵法オタクでもある。『この策何処に使おうかしら?とかパズルのピースがハマるようにその時、その瞬間に使い、相手がハマるのがゾクゾクするわ〜!』
今、読んでるその本……そんなに面白いか?とオレはウィルの時、リアンの横にいて、そう思った。
オタクと天才の違いってなんだろな……?
せっかく王の仕事を手早く終わらせて教室の隣の席に座ってるのに、オレと会話を楽しむより新しい兵法書に彼女は夢中……まぁ、いいか。こんなリアンだから面白くて好きだ。王宮内の擦り寄ってくる連中よりよっぽど良い。
ふと、懐かしいリアンの姿を思い出してしまった。
「さて、兵法オタクの力を見せてもらおうかな」
黒髪の少年になったリアンことリアムはニッと自信ありげに笑った。エメラルド色の眼に光が宿る。
「陛下!コンラッド王子が橋を渡りきり、こちらに進軍してきたと伝令です!」
「了解した。最初はエリックだな」
ポンッと筒を空に投げると中からシュッと飛んでいくものがあった。黄色の鳥。その鳥は城へ行く。
今、オレたちは城にいなかった。
その頃、その城にはエリックがいた。黄色の鳥が窓辺にとまった。
「陛下からの合図が、来たか!くっそー!こんな役をさせるなんて!なんかあったら末代まで祟ってやるからなーっ!」
「エリック様……お静かに!来ましたよ!コンラッド隊ではなく、その副将です。なんとあのダレン副将軍ですよ!」
「ダレン副将軍かー。強いよなー。剣を交えて見たかったー」
そう答えたエリックは女物の服を着てハープ奏でる。
「ハープの演奏お上手なんですね。しかも女装されてるエリック隊長、お似合いです!」
部下の一人はまったく似合っていないメイド服。
「うるさいっ!女の子にモテると思って練習したん………なんでできるって陛下は知ってるんだ?言ってないんだけどな?」
ポロンポロン鳴らしながら話すが、その腕前はなかなかのもの。美しい音色に部下もうっとりしている。
「さあ……?ひえー……来た!来ました!ダレン副将軍率いる隊が城に入ってきましたよ!」
「入って………きた!?すごいな。読みどおりか」
奇抜な策だった。敵の兵は何も知らずに城内にどんどんなだれ込んていく。
『警戒しろ!城に誰もいないだと!?』
『ハープの音色が聞こえる!?』
『お、おいっ!おまえ………』
『体が!うわああああ!』
そして暫くして敵兵達は静かになった。
エリックと部下は階段を降りていく。その所々に石となった兵士……そして副将軍の姿があった。ポゥッと輝く壁、天井、床には術式が描かれて光りを放つ。
あたり一面帯びただしい数の石像が出来上がっていた。
エリックと部下は予め、呪いよけの札を身につけている。ごくっと息を呑む。
「ゾッする光景だな。呪いの城。この城まるまる一つを囮にするとは大胆な策だよな。他の軍隊は?」
「コンラッド王子が異変を感じて、とりあえず橋の向こう側まで撤退しようとしてますね」
窓から望遠鏡で覗いた部下はそう告げる。
「………作戦の流れは完璧だな。恐ろしい女だよ。陛下はとんでもない人を王妃にしたものだね」
「心強いではありませんか?」
「そうか?」
ゴロンと一体の石造が転がった。ヒッとひきつった声を出した部下。
物静かな城の中に恐怖の顔を浮かべた石像があるのは不気味で、気持ち悪いものであった。たった数名の兵でこの人数を仕留めるとは……とエリックはゴクリとつばを飲み込んだ。
残る策は2つ。他の策がどのように嵌っていくのか見てみたい……そんな気持ちになるエリックだった。
「って、いうか、この女装必要あったか?」
ふと、気づいて部下にエリックが尋ねると『いいえ』と言われる。
「あの王妃っ!!面白半分でさせたなあああああっ!」
今さら気づくエリックだった。
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