リアンの心を守るもの
「リアンって頭が良いだけの女だよな」
「黙ってれば美人なのにもったいないよな」
私塾の教室の扉を開こうとした私の手がピタリと止まる。
「勉強オタク、魔法オタク……ああいう娘を可愛いってやついるのかー?」
「アハハ!嫁の貰い手、絶対ないよな。自分より賢い嫁ってどうよ?」
「無理だな。まあ、リアンが魔法も使わず、喋らず、生意気な態度をとらなきゃ考えてやらないこともないけどな!」
私ははぁ………とため息が出た。その途端、後ろから、止まっていた私の手を握って教室の扉を開けた人がいた。
えっ!?と私のことを噂をしていた人たちが今の話を聞かれていたことがわかり、しまった!という顔をした。気まずい雰囲気が漂う。
遠慮なく扉を開けた人物はヘラヘラ笑ってる。その犯人はウィル。……足でも踏んでやろうかしら?
「あれ?どうしたの?リアン、いつもの元気はないかい?無理なら僕が反撃しようか?」
「け、けっこうよっ!ウィル……あなた性格悪いわよっ!」
「賢さは君のほうが上かもしれないけど、性格の悪さは僕の勝ち?勝てるものがあって良かったなー……いや、やっぱりリアンほうが性格悪くないか?」
「褒めてるの!?貶したいのっ!?どっちよ!?」
「アハハ。ごめん。……リアンが結婚したいなって時に相手がいなかったら、僕のところへおいでよ。僕はずっと君のこと待ってるよ」
「なにいってるのよっ!?からかわないでよ!べ、別に結婚なんてする予定ないわ」
ウィルは愉快そうに笑うと、私の席の隣に座る。ふざけた天然男だわ!
「僕は本気だけどなぁ?本気だってこと……忘れないでいてほしい」
冗談ではないよと青い目がジッとこちらを見据えた。私の悪口を言っていた周囲の人達はもはや空気となっている。ウィルの人を惹き寄せるような雰囲気が皆の注目を集める。そして堂々とした発言。
優しくて少し頼りないウィルは時々こうやって意外な一面をみせる。
ほ、本気?でもこんな公衆の面前で言うんだし、やっぱりからかってるの!?
「ま、外野は気にしないことだね」
「気にしてなんていないわっ!天才とはいつの世もこうした嫉妬に晒されるものなのよ!」
「ハハッ!良かった。いつものリアンだ」
……男だらけの私塾。その中でトップをとればこうなる。わかっていた。
でも後から考えてみれば、ウィルはいつもそんな私の壁となり、さり気なく守ってくれていた。ヘラヘラ優しい男のふりして。
本気だってこと忘れないでって言われたけど、現実にそうなるなんてあの頃は思いもよらなかった。冗談だと思ってた。
……しかもまさか王妃様だとは思わないじゃない?
ウィル、私もあの頃から、あなたのこと好きだったと思う。一生、一緒に生きていくなら、他の人じゃなくてウィルが良かったもの。
彼は傍にいて私の心が傷を負う前に守ってくれていた。青い目が細められて楽しそうに笑うウィルを目を閉じて想う。
私はウィルのためなら命は惜しくない。だから行くわ。このまま私は私の思い描いた道を。
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