29話 5月20日

5月20日


 正直に話しましょう。現在、時刻は朝の9時。学園の朝のHR開始が朝9時。

 今、自宅のベットで横になっています。どういうことでしょうか?


 そう、正解は完全な寝坊です。お恥ずかしい話ですが、昨日の戦いが思った以上に私の体力、気力をゴッソリ削り、その疲れなのか、深い眠りに入り目が覚めらたなんと朝の9時を回っていました。急いで、支度をして学園に向かうはずです。普通は......。


 でも、今回は、体調不良って名目で学校を休みになりました。私は寝ている間、璃子りこさんが三守みかみ先生に連絡してお休み頂くことができた。


 本来なら、体調不良で休むなんてズル休みを企てている生徒が真っ先に思いつくこと。

 でも、私の場合、それが可能。担任で協力者の三守先生、巌(いわお)理事長を始め、教師陣の何名かは協力者なので許されている。まぁ、他の生徒と公平さを保つためにちゃんと成績に響くけど。


 そんなこんなで、私は先週に引き続き3連休を確保しました。

 しかし、ただ部屋でゴロゴロするわけがなく、勿論、来週のテストに向けての勉強と怪盗としてのスキルアップを兼ねて、傷が癒えたら始める。


 携帯端末を見ると画面にいくつもの文章が表示されていた。

 ちょっと前までは中高生の間で人気が高いSNSアプリをインストールしていなくて、すずちゃんと綾(あや)ちゃんから変な目をされた。


 だって、仕方ないじゃない。今までの人生でこんなものを使ったことがなかったし、学園生活でも人見知りが発揮されていてまともに同級生と話しができなかったんだから。


 色々、あって今は3人のグループチャットができ、そこにコメントの嵐状態になっていた。


【灯ちゃんと愉快な仲間たちASA】

 と表示されているグループチャットに入り、2人にコメントした。


 すず:灯、大丈夫???? いたら返事して!!!!!!!!!!!!


 綾:三守先生の話では持病が再発したから、病院に行くって聞かされたよ!?


 すず:持病......マジですか......。


 綾:今日、どうする?


 すず:そうだね......。


 灯:2人ともおはよう!!


 すず:(・・?)


 綾:( ゜д゜)


 綾:大丈夫なの?


 灯:うん、大丈夫だよ


 綾:良かった!!


 灯:今日だけど、家に来てもいいよ


 綾:良いの?


 灯:検査も無事に終わったから、月曜日から登校できるよ!! 家から出れないけど......。


 綾:それはご愁傷様。わかった、学校終わったら2人で行くね



 そこでチャットが止まった。しかし、個人ですずちゃんからコメントがきた。



 すず:もしかして、今日休んだの昨日の火事と関係があるの?


 灯:うん、ネコ型のソドールと戦って、その過程であんなことになったの。生きていたのが奇跡だよ


 すず:そっか......綾に言うの? 怪盗のこと......。


 灯:言いたい自分とそうじゃない自分がいるの......。


 すず:まぁ、いきなり「私、怪盗で日夜怪物と戦ってるの」って言われたらみんな目が点になるよーー100%ね。それにカミングアウトした結果、綾にも危険が降りかかるかもしれない。


 灯:どうすれば良いんだろう......。


 すず:まぁ、ここで考えていても埒が明かないし多分、正解はないと思う。灯が決めた決断で進めれば良いと思う。それで、もしダメだったら急いで学園から去るのも1つの手かもね。


 灯:すずちゃん......。


 すず:その時は私もついていくからね、よろしく!!


 私はすずが残した文章を見ながらベットでずっと考えていた。自分がどうしたいのか。


 後悔しない選択をするために。



 現在、私は以前にクロがやっていたトレーニングモードをやっていた。

 以前、クロがやったトレーニングモードは「無双」と呼ばれるもので大多数(100体)にわたって群がるロボットが襲いかかってきて単身でそれらを倒すトレーニング。

 璃子さんが多種多様なトレーニングモードを用意してくれたが試運転第1回でやめていたが前に進むことにしたので再度、挑戦することにした。


 しかし、10体連続で倒したところで終了した。


「ハア、ハア、ハア......ハア、ハア......ハア......ハア......」

 両手を膝に置きながら、下方の一点を見つめたまま、私の視線は動かなかった。


(クロはあんなに涼しい顔しながらロボットを倒していたのに)


「初めのことよりかはできるようになったんじゃない、灯」


 実験場の中の至るとことにスピーカーが嵌め込まれていて、そこから璃子さんの声が聞こえた。


「ロボット1体、1体の弱点のコアはそれぞれランダムに配置してあるから的確に狙わないと頭を破壊しても動くやつもいるから」


 始めの10体は、最初はただ向かってくるだけのもの。


 それが段々、学習し敵の弱点や攻撃の癖を見抜きそれに合わせた行動をとってくる。


 さらに、周りの落ちているロボットの部品を武器にし、打撃や投擲をしてくる。


 上にある実験場の白い壁を見つめながら私は思った。

(まだまだそのステージには早いってことか)


「今は単調な攻撃だけだけど、そこからさまざまな行動をとってくるようにプログラムしてあるからその場の状況を正しく判断して臨機応変に対応して行ってほしいと思って作ったの」


 クロの場合、結構長生きしていてそこで培った即ち数の戦闘経験を元にこのトレーニングをクリアしたと考えられる。戦闘しながら最善の手を考え尽くすことで、多種多様なロボット達の弱点も”多分ここにあるであろう”という経験則で点と点とを繋げている。


 少しして、息を整えトレーニングを再開した。

「璃子さん、お願いします!!」


 目の前からロボットが1体出現し、勢いつけてダッシュした。







 私は悪魔のクロ。灯の相棒としてソドールと戦っている。

 ある組織が、魔界から脱走した私の元部下の悪魔の力を利用し新たな生物を誕生させた。


 今は、その怪人(ソドール)は、現在を生きている人々の手によって、その力を使い悪事をしている。

 その成分を全て回収することが私達の現在の活動。


 あくまで非合法なやり方、正義の行いではない相手から盗むやり方。


 今日も思春期の若者からの相談を受け解決してきた所。私は木ッ菩魅烏高校の養護教諭として働いている。

 約半年前に木ッ菩魅烏高校の理事長を勤めている大文字巌(だいもんじ いわお)が偶然見つけた本によって人間界にきた。丁度同じく魔界では私の元部下の7体が脱走し人間界に行ってしまった。

 正規の方法以外で人間界に行くと処罰の対象になってしまう。


 私は魔王から指令を受けた瞬間に大文字巌(だいもんじ いわお)に呼ばれた。


 大文字巌(だいもんじ いわお)も驚いていた。ボロボロの胡散臭い本に書かれていた通りにやったら、いきなり魔法陣らしきものから私が出てきたもんだから腰を抜かしていた。


 彼からの依頼内容で森の中にある研究施設に行き、そこで元部下の3人がいた。赤と青、黄色の悪魔達。その時は逃げられたが、そこで行われていた実験に彼らが関わっていることを知った。

 施設の中で私は1人の少女を見つけた。


 生き残っていたのはその少女だけだった。他の子はみんな怪人になって、私が起こした爆発で、どこかに散らばってしまった。


 そこから、私はいや、私達の活動が始まった。


 色々あって、順調に成分を回収できたり悪魔も見つけつつあった。


 そんな昔話で頭を使っているうちに家に着いた。

 今住んでいる家はあの森にあった実験場の元研究員だった天織璃子(あまおりりこ)の所有しているうちの1件。


 そこで私達が住んでいる。


 中に入ると誰もいなかった。璃子はここより奥にある研究室に籠っていることが多い。

 慣れた手付きで秘密の扉を開け、進んだ。


「おかえり、クロ」


「ただいま、璃子。灯は?」


「あの子ならあそこよ」

 指で指された方を見ると灯がロボットと戯れていた。



「くっそー」


 ジグザクに早く動くロボットと対峙していた。攻撃を受け流しジャンプしながら【スパイダー】を起動。


 実験場を銃から出ている糸を使って縦横無尽に動き回っている。対峙していたロボットの真上に着き、壁を蹴りながら加速していって距離を一気に詰めた。




 持っている【裁紅の短剣】ピュニ・レガを振るったが、両腕をクロスして受け止められた。


 次第にロボットが押され気味になり、最後は腕もろとも頭から両断された。

 今、対峙していたロボットの頭が弱点だったらしく、すぐに動かなくなっていた。


 1体終わってもまたすぐに別にが迫ってきていた。


 さっきより高速で移動しており今度は灯の方が押されていた。持っていた武器も棍棒のような大きくてナイフを持っている灯には分が悪かった。徐々に押されていき、ナイフを離してしまっていた。その一瞬の隙に灯の方に棍棒を振りかぶっていて大ダメージを与えるようにしていた。

 灯は冷静にホルスターにしまっている銃、クイーンズブラスターASKを取り出し、大体の位置を掴んでいたのかノールックでマガジンを装填していた。


 ロボットの胴体に向かって撃ち、空中に浮かんでいるダイヤモンドの柱で吹っ飛ばされていた。





(あんな使い方もあるんだね......)

 私(クロ)は今まで回収してきた能力を改めて関心していた。


 結果、灯は50体目で失敗し、クリアにはならなかった。

 肩で息をしていたが、苦しい顔ってより楽しそうな顔をしていた。


「初めのことよりできるようになったんだね」


 声が聞こえた方に私が振り向くとパンツスーツ姿のクロがいた。


「あぁ!! クロ、おかえり!!」


「ただいま、灯。それにしても......」


 実験場の地面置かれているロボットの残骸を見て感心していた。

「これ、50体分じゃないでしょう?」


「うん、璃子さんにお願いして再スタートになっても、残骸は残すようにしてもらったの。ソドールとの戦いは何も平地だけとは限らないから敢えて環境を悪くしたの。こうすれば、限られた状況から最善の手を見つけられるかなって思ってやってた! でも、不思議なんだけど、50体を超えてから1回も倒せなくなった......」


「もしかしてだけど、朝からずっとやってた?」


「......なんのことかな」

 口笛を吹きながら、腕を頭の後ろに組みながら明日の方を向いていた。


「今日はもう休むようにーーもし、隠れてやったら何を要求しようかな〜」



「......分かりましたぁ!!」

 頬を膨らませて変身解除した。


 そしてその足で、私はシャワールームに向かった。

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