11話 ガイコツは傘を、アルマジロは運を
伸びた右腕が上から叩きつける様に向かってきた。
後ろにジャンプして下がりそのまま1階に落下した。
着地に成功し、そのまま橋間とか言う女を肩に乗せ、工場の入り口に向かった。
流石に、守りながら戦うのは面倒だ。後ろから煙を撒き散らせながら猛スピードで向かってくる物体。こちらに向かってくるアルマジロに向かって引き金を引いた。撃ち出された銃弾は標的に当たらず近くの柱や地面に当たった。
正直言って、僕はそこまで射撃が得意ではない。初めて、『イエロー』になり近接戦闘は問題なくできたが、射撃はものすごく苦手なのがわかった。しっかりと銃を構えて撃っても的の端にも当たらなかった。それを見た青奈が腹を抱えて笑っていたので襲い掛かったこともあった。
目の前の敵と至近距離での戦闘には集中的に慣れるが慎重とか冷静になって何かを取り組むことを毛嫌いしている。向かってくる敵をただ、遠くから狙い勝つより近くで圧倒的な力でねじ伏せた方が楽しいしスカッとする。そういう理由で僕はあまり撃つことはしない。
あくまで、牽制したりソドールの能力を使う位。
入口の扉に着き女を開放した。
「僕の仲間が近くにいるから」
そう言い残した黄華は後ろに引っ張られた。
よく見たらお腹にしっかり骨の手がホールドされ工場の中に戻された。
左手で右腕に装着している鉤爪から1本取り外し、骨の手を切断した。
左手に持っている刀剣を同じく宙に浮いているガイコツ目掛けて一直線に投げナイフの要領で投げた。
ガイコツは傘の外側を自分の方に向けるとそのまま後ろに下がった。
勢いを失った刀剣はそのまま落ちていった。
『ホッパー』
そう鳴り響いた後、怪盗は宙に浮いていた。そして、数秒経つにつれて場所を移動していた。
No.33『ホッパー』
宙に撃つことで即席の足場が作成される。片足が乗る位の大きさしかなく、板の耐久性もない(2〜3秒程)
撃ち足場を作りながら、スピードをつけるために身体を前にして押し出す様に前傾姿勢になりながらガイコツがいる方向に移動した。
先程、言った通り射撃が極端に下手である。変なところに撃てばジャンプしても届かない場所に板が作成される。これを回避する最も簡単な方法は真下に撃てばいい。山なりにジャンプし、予想着地地点に撃てばどんなに射撃が下手でも足場を作ることができる。時々、着地地点からずれて失敗してるけど。
左手に持ってる傘の内側には気流を変える能力があり傘の内側に自分がいれば宙に浮蹴ることができる。
この能力は風の強さでスピードが変わる。今日、吹いている風はあまり強くなく、その結果動きも鈍くなっている。
傘を使って後ろに後ろに後退し続けているが追いつかれるのも時間の問題。
ガイコツは工場内の構造を把握していなかったのか、策を考えている内に壁にぶつかってしまいこれ以上後退することはできなかった。
下に下がるために逆持ちにしようと傘を持ち替えようとした直後、懐に黄色の姿が見えた。
肘を曲げたまま下から突き上げるように鉤爪で切り裂いた。
胴体部分に骨が砕かれ大打撃を受けた。そのまま脱力したかのように仰向けで重力に従って地面に向かって落下した。
ジャンプして逆立ちの体勢になりながら足場を上に作り、屈曲して力を溜めて、伸展して力を放出しスピードを上げながら回転し円錐螺旋状に攻撃した。
ガイコツの身体は貫通し、そのまま地面に叩きつけられた。
砂埃が舞い上がりながら巨大なガイコツのソドールは再起不能になった。
注射器を刺して成分を採取した。
(うまく採取できたね)
(骸骨だから刺さるか心配だったけど杞憂だったね)
立ち上がり、近くにいたアルマジロに向かって人差し指を天井に差しながら・・・
「まずは1体!!」
アルマジロは外敵から身を守るため、体のほとんどが硬く変化した皮膚で覆われておりお腹は柔らかい生態をしている。
丸まり高速で転がりながら僕に向かってくるが、横にしゃがんで回避。
そのまま、壁にぶつかると思ったが、軌道を変え、転がり続けてこちらに突進してきた。
『捕食者の影爪』で防御した。
加速し続けたため力負けし、僕の方が壁に激突してしまった。
激突し、壁を突き破り外に転がりながら出てしまった。
結構な威力だったが、かすり傷程度で済み大したダメージにはならなかった。
他の2人とは違い、着ているコスチュームの性能のおかげ助かった。
3人が着ているコスチュームは多少、見た目の違いはあるが高い運動能力を保有しており、跳躍力・瞬発力・俊敏性に優れており、敵から攻撃を吸収する構造で攻撃力・防御力に優れており、バランス良い性能になっている。
しかし、これを100%を現時点では使えない。長期間の訓練をして徐々に生身の身体能力を上げないと使うことができない。
僕が最後に出てきた時より多少、動ける様になったので強大な弾丸のような威力でも吸収してくれたので大事に至らなかった。
間髪入れずに丸みを解除し連打してきた。連打してきた手をこちらも『捕食者の影爪』で対応し、殴ってくる攻撃を避けて、脇腹にパンチを入れるがアルマジロは硬い皮膚を持っていたため大したダメージを入れることができなかった。
(やっぱり、正面の腹部を狙うしかないか)
どうやって、懐に行くかを考えていると同時に右腕の『捕食者の影爪』を見つめた。
月の光で増えそうにないのを感じ落胆してしまう。
『捕食者の影爪』(シャク・ロドエ)
右腕に黒のガントレットに『リッキープレイド』という伸縮自在の黄色の鉤爪状の武器が3本備わっている。
取り外しが可能で刀剣位の長さ。一度外した『リッキープレイド』は再装着はできない。射出することができる。刀剣として使用したり、ブーメランの様に投げたりした後の『リッキープレイド』はそのまま、消滅せず残る。他のスライドキーに変更したり『イエロー』を変身解除すると『リッキープレイド』は消える。
爪が無くなってもガントレットには太陽電池が内蔵されており、日光を当てることで3分で『リッキープレイド』1本分が生えてくる。
あらかじめ、日光に当てていたらその分『リッキープレイド』が蓄積される。
戦闘開始0分で3本、その後、日中戦闘している最中に外して刀剣として扱ったり、射出したりせず、3分経過すれば、残機プラス1になる。
ただし、これはあくまで『捕食者の影爪』を使用中に発生する場合であり、『イエロー』以外で戦っている場合、『捕食者の影爪』は日光に当たっていないため3本のままになる。
今回、約3、4ヶ月が経っているため残機は存在していない。
今は、夜のため『リッキープレイド』をチャージすることはできない。
敵目がけて前のめりで前傾姿勢で走った。
丸みを帯びて防御しているその皮膚を破壊し、選択肢を奪っていく。全身の皮膚を剥がすことは攻撃の手数が少ないため、時間がかかるが一部分を削りそこを狙って再起不能にさせる。
頭を使うのはあまり苦手だから考えられた華麗な戦術を使うより、至近距離からの殴り続けた方が性に合っている。
右腕は『捕食者の影爪』で殴りダメージを与えることはできているが、左腕は何も付けていないため素手の状態で殴った。効率良く殴っていてもダメージ差が歴然としていた。
ただ、殴った。ひたすら、殴った。敵の硬い皮膚に亀裂が入りさらに内側の皮膚を露出させるために殴り続けた。
何か折れる音がした。地面に2刃の刃先が落ちていた。刀剣などの剣は使い方次第で簡単に折れてしまうもの。
残ってしまった黒のガントレットのみ。あと1歩のところで攻撃手段の1つが消えた。戦況は絶望だが笑いが止まらなかった。こういう状況こそ僕が求めていたもの。
まだまだ、殴りかかる。そう意気込み、拳をあげた。
残ってしまったのは黒のガントレットのみ。あと1歩のところで攻撃手段の1つが消えた。戦況は絶望だが笑いが止まらなかった。こういう状況こそ僕が求めていたもの。
まだまだ、殴りかかる。そう意気込み、拳をあげた。
(ケッコウ、ツカッテシマッタ・・・)
もう1つの能力である『運』には使用回数が決められている。
自分の運が上がるのは1日5回。これは人間であっても怪人になっても合計5回となっている。
今日は全て使ってしまったためこうやって防御するしかない。偶然にも奴の武器は壊れたため、これ以上の攻撃はないと思いたい。
兎に角、これを奴に気づかれないようにするしかない・・・
と思っているのかもしれない。
単純な『運』の向上なら殴っている間に作動して全部回避されると思われたがそれを使ってこなかった。
どうやら、常時使用できる訳ではないらしい。一度使用したら再利用まで時間がかかる、1日の使用回数に限りがあるなどの制限があると考えられる。
好都合。お互いに残っているのは攻撃か防御だけ。どちらの心が折れるか勝負!!
2人?2体?の攻防が繰り広げている中、工場の周りを取り囲んでいる壁から怪しい影が1つ。
(まさか、本当にいるとは思わなかったが・・・)
そう思ったのは白と紅色に包めれたコスチュームを着た緋山燐兎ひやまれんと。
未確認生物「ソドール」の対策室実行部隊所属の隊長である。
完成した新装備の試運転をしている最中に通報があった。
近くの工場跡地で銃声やでっかい騒音が鳴り響いていると。
その通報を受けて現場に駆けつけた。同じ所属の2人はまだ新装備に慣れていなく俺だけがいくことになった。
俺もどんな部署であれ隊長に就いた以上、責務を全うするつもりだったが、相手は謎の怪人とその怪人を倒している怪盗。怪人の方は暴れていると通報があれば現場に駆けつけるが着いた段階でもう怪人の姿はなく、いるのは倒れている人とその怪人に襲われた被害者達しかいなかった。被害者達の話で加害者であることはわかったが怪人になっていた人間に話を聞いても何も覚えていないと全員そう供述しているため、捜査は難航していた。
正直、何かのクスリをやっており幻覚を見てえいるのだと思ってしまうことも多々あった。しかし、病院で精密検査しても加害者・被害者両方に何も以上はないことがわかった。
怪盗の方も被害者の話でしか分からず実際に見ていないためあまり信じていなかった。
だが、今日ようやく対象達を目撃することができた。
今すぐ、突入し身柄を確保するように行動を起こすことは簡単だ。
しかし、この装備を2人より動かせるだけで実践をしてないため不安がある。
ここは、一旦様子を見ることにしようとその場を動かないようにした。
(あまりに野蛮な戦いとしているな・・・?)
聞いた話では怪盗の方は相手を撹乱させるために良く動き、華麗に回避し、敵に効率的な攻撃をしているだったが、目の前にいる怪盗は敵をタコ殴りしており、あれはどう見ても虐めているようにしか見えない。
被害者達も急に変な怪人に襲われ少し情緒不安定だったかもしれない。
巨大な丸みを帯びたアルマジロを両手で持ち上げた。そのまま工場の中に向かってスローイングした。
投げられたアルマジロはスーパーボールの様に跳ね飛び、工場の中に入るなり上下左右にバウンドし自身の平衡感覚がなくなり、乗り物酔いと同じような状態になってしまい、頭の上では無数のヒヨコが時計回りに回っていた。
よろけてしまい丸まっていた身体は自由になってしまい、ひっくり返って腹部が露わな状態になっていた。
(もうちょっと戦いたかったけど、飽きたからおしまい!!)
黄華は好戦的、乱戦が好きだが何分飽き性な部分があり長時間同じ敵を戦うのが嫌いで急に戦いを終わらす癖がある。
注射器を刺し成分を採取に成功した。
「よし!!」
「これで任務成功だね!!」
あとは警察にでも任せえるか・・・
そう思い、携帯端末を使って警察を呼ぼうとした時、危険を感じた。
工場に置いてあるものは一般人が普段使わないものも多数存在しており、その中には当然危険物または爆破物もある。先程、バウンドした拍子に工場の中のものがぶつかった。工場にあった電気コードなどがぶつかった拍子の中の導線が剥き出しになり切れた導線同士が接触し火花が出た。落ちた火花がこれまたぶつかりドラム缶に入っていたオイルが地面に巻かれた。これらが合体するとどうなるか
答えは火災・爆破の地獄絵図になる。ここまで負の連鎖してるとなると今日の僕はもしくは周りにいる誰かの運勢が最悪なのだろう。そして、それに巻き込まれた人もまた不幸なもの。
目の前が炎に包めれていた。
まだ、全体に火が回っていないのが不幸中の幸いである。
笑えない冗談だな・・・・
急いで目の前に倒れている男を抱え脱出することにした。
そう言えば、橋間とガイコツに変身していたやつは・・・・
「急いで!!」
入口から女の子の声がした。そして、その傍らに男が倒れていた。
「救出してあるから」
「早く急いで!!」
後ろからなお、燃える炎。止まらない爆発。ゾンビの様に襲い掛かる火の粉。
なんとか、離脱することができたが、爆風でみんな吹き飛ばされた。
抱えていた男は無事だったが、後の2人は・・・
あたりを見渡したが煙の量がひどく碌に前も見えない。煙を掻き分けながら進むと両手を腰に置き三角筋、僧帽筋、腕のデカさを強調するポーズをしている影があった。
「何者だ!!」
煙が少し晴れ、謎のポーズをしているやつの全貌が見えた。全身は白となっている。両肩・腕周り・膝部分に、赤?いや紅色のアーマーが付けられていた。右肩後ろには何かを収納しているバックパックの様なものを装備しており左腕には小型の丸い盾を装着していた。
周りの縁は白く中央は紅色になっていた。その盾が炎を吸収していた。
そして、両腕に橋間と男が抱えられている状態になっていた。
2人を下ろしながら
「本来なら、警察官として有るまじき行動だが民間人を助けたことを評価し、今回は見逃す」
「えぇ!?」
「次会った時は容赦しない」
「一応、礼は言っとく」
「ありがとう」
そう言い残し僕はその場を立ち去った。
「さてと、鎮火作業を始めるか」
この盾はどの位の性能なのか試すか・・・
謎のアーマー着た警察官らしき男は炎の中に入っていった。
「まさか、一度に2体も倒されるとは思わなかったぜ」
野生的で乱暴そうな風貌の全身に着こなし、要所に動物の骨が付けられており頭を覆い隠せる骸骨兜は黄色の立髪にこめかみ部分に2本の角が後から付け加えられた様な加工がされている。手には黄色のチェーンソーを持っていた。
工場から少し離れたところで戦闘を見ていた黄色は後ろから何かが接近してくるのを感じた。
そこにいたのは170㎝で腰まで伸びている黒髪に服の上からでもわかる胸、クラシカルなロング丈・長袖、王道の黒と白カラーのオードソックスなメイド服を着ている女がいた。
何かに気付いたのか不敵な笑みをこぼした。
「お久しぶりです!!」
「先輩!!」
「この姿でもわかるのね?」
「何百年一緒に仕事してきたと思うんですか」
「身に纏っているオーラでわかりますよ!!」
黄色の蛮族は悪魔であり、クロが魔王からの任務で捕獲対象の元部下の1人。
「今はカサンドラと名乗っています」
「しかし、あの日、脱走したガキが怪盗となりクラスメイトから顕現した怪人の遺伝子を回収しているとはね〜」
「しかも、人間離れした身体能力を見せている」
「あのコスチュームだけでは説明できない動きだった」
「そう!!」
「まるで、昔の先輩みたいに??」
「それもそうよ」
「あの子と契約し、力を与えたから・・・」
腹を抱えながら黄色もといカサンドラは笑っていた。
「先輩と契約って命知らずですね」
「しかも、力を与えるって対価どうするのかなあのガキは・・・・」
「そんなのどうでも今はいいわ」
「貴方を捕獲する」
「そして、残りの奴らの居場所も吐いてもらいよ」
「そう簡単に教えませんよ」
「逃げるが勝ちってね」
「さようなら」
手を振りながら走っていたカサンドラ。
後を追ったが見失ってしまった。
あの戦闘から数日が過ぎ、明日からゴールデンウィーク。今年は多めの10連休になっており、どこに行こうなど浮き足立っている生徒達とは対照的に教室の窓から見える景色を静かに見ていた灯。
主人格を灯に戻し学園生活を過ごしていた。
「あの〜」
声をかけられた方に顔を向けると橋間すずがいた。
「すずちゃん!!」
「久しぶり、灯!」
「ちょっといい?」
2人は教室から出て屋上に出た。周りに誰もいないことを確認しながら2人は話を始めた。
「学校に復帰できたんだね」
「良かった!!」
「ありがとう!!」
「私の場合は警察の事情聴取や一応、検査入院してただけだったの」
「でも、2人は・・・」
「命に別状はないけどソドールになっていたから記憶がなくて」
「なんであんなところにいたのか分からない状況でもう少し入院する羽目になっている」
「そう言えば、すずちゃんは記憶あるんだ??」
「私も理由はよく分からないけど何故か覚えているの??」
「自分がソドールになって色々やっていたことも何もかも覚えている・・・」
「初めてのケースだね」
「これは後で調べるとして」
「すずちゃん!!」
「あのね・・・」
「この前言ったことは本当だよね??」
「うん?」
「友達になってくださいってやつ・・・」
「もちろんよ!!」
「灯!!」
2人は両手を重ねながら嬉しそうにしていた。
その様子をドア越しで見ているクロがいた。
「ようやく、灯にも友達ができたのね」
「今日は赤飯か〜」
また、普通の生活に戻った。以前とは少し違うけど・・・・
11話現在、ソドール能力回収済
No.25 カメラ 黄茶色
No.33 ホッパー 青ピンク色
No.35 スパイダー 赤紫色
No.47 シャーク 青水色
No.52 ダイヤモンド 水白色
No.53 ミラー ピンク赤色
No.59 アイヴィー 緑黄緑色
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No.48 ??? ???色
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