10話 黄華はとても無邪気な子

部室から飛び出していったガイコツはそのまま何処かへ行ってしまった。

学園にはまだ、生徒が残っていたためちょっとした騒動になった。


警察までもきてしまい、事情聴取を受けるのが面倒で、それを避けるためにすぐに家に帰った。

璃子に成分を渡し、アイテムとして出来るまで研究室の隣の実験室でホログラム敵で戦闘シミュレーションをしていた。ホログラムから発せられるプラズマの衝撃波を感知し、触れることが可能で、まるで実体があるような感覚を得られる。これを利用して様々な敵との戦闘に慣れるために実践経験を繰り返していた。外にはあまり出ないため身体が鈍っていたため、小一時間位戦っていた。さっき、倒した敵で50体目。何となく感覚が戻った気がする。

少し休憩するために実験室を出ると、そこにあの悪魔がいた。


「まずは成分採取、成功おめでとう」

研究室の椅子で足組みながら笑っている悪魔


「良い加減その悪魔っていうのやめてくれない?」


「私しの灯ちゃんを唆す貴方は悪魔で良いわ!!」

目の前の悪魔を見ずに横の方を向いていた。


「まぁ、いいわ」

「彼らの動向が分かったわよ」

机に資料が置かれていおり、その中に工場らしき写真が置いてあった。


「この工場跡地で彼らが潜伏していると協力者からの調査で分かったわ」


「早速、行くわ」


更衣室に入り、シャワーを浴びていた。


黄華:次は僕だよね??


青奈:えぇ!! 

   残り2体になってしまって申し訳ないけど・・・


黄華:それは良いけど、珍しいね。君が謝るなんて?

   明日は槍の雨が降りそうだね・・・


青奈:謝るのはこれっきりよ

   さっさと行くよ!!


 灯:ねぇ・・・

   2人とも・・・・


青奈:どうしたの??

   灯ちゃん?


 灯:私に代わって?

青奈・黄華:「「えぇ〜〜〜」」


黄華:僕の番・・・・


 灯:ごめん、でも、いつまでも逃げるのは嫌なの・・・

   少しでも成長したいの

   確かに、怪盗だってバレて動揺したり焦ったりしたけ    ど、その度に2人に代わるのは

   逃げていると思うの・・・

   それに、私が怪盗を始めたことだから

   

青奈:そっか・・・

   苦しくなったらいつでも、代わるわよ


 灯:あぁ、でも、いつでも代わるかわね

   日常生活でも戦闘でも

   2人にもっと見て欲しいから

   この世界は美しいから


灯はそのまま椅子に座った。

残された2人は・・・・

青奈:運命ってなぜこんなに残酷なのかしら?


黄華:あのこと?


青奈:いつ戻るのかしら・・・

   てか、貴方なんか不憫ね・・・


黄華:いいさ! 

   呼ばれたら、全力で戦うから!


青奈:前向きね〜 君・・・




入れ替わり青奈から灯になった

青奈がシャワーを浴びていたため、温かいお湯が身体に降りかかった状態で出てきた。

湯気が霧のように立ち込んでいた。

「あぁ、気持ちいい・・・」

蛇口を捻って、水を止めてシャワー室から出た。


「行ける?」


「ああ、クロ」

「なんか、久しぶりな気がする・・・」


「青奈ちゃんに代わってもらったの」


「行ってくる!!」


「灯!!」

振り向くと璃子さんが新しいマガジンを渡してくれた。

No.25と黄茶色のマガジンだった。



工場跡地に着いた私は周囲を見渡した。月の光しかなく鮮明に見えない。

警戒しつつ、中へ入っていった。

真ん中位のところで前と後ろに気配を感じた。

(囲まれたわね)


立ち止まって周囲を見渡したが、外とは違い、薄暗く正確な位置が分からない。

数は2。残りのソドールであり、橋間さんの新聞部所属の生徒。


前にある気配が段々、こちらに歩いてきた。橋間さんを連れ去った。ガイコツ型のソドール。

確か、根岸って男子学生だったかしら。


「連れ去った子を取り返しに来たわ」


ガイコツ型が嗤った。人が手持ち無沙汰の時などによく、首や指の関節を鳴らす音を出しながら頭を横に向けた。


「ウソヲツクナ」

「オマエノモクテキハアクマデオレタチノコノチカラダロ?」

「オワッテヨウガナクナッタアノオンナヲタスケルヒツヨウナドナイハズダロ・・・」


「確かに私の目的は貴方たちが持ってるその力」

「それが何よりも最優先事項よ!!」

「でもね、人が困っていたら助けるのに理由がいるの?」


ガイコツ型は軽く嗤った。

「セイギノヒーローニデモナッタツモリカ」


「ヒーローになったつもりもないしなる予定もない」

「だって、私は怪盗!!」

「欲しいもの全部手に入れる!!」


自分が立っている場所を1回転して碌に狙いを付けずに乱射した。

低姿勢して近くの工場で使う機械に身を隠した。


運悪く被弾したガイコツ型は呻きながらアルマジロ型に言った。

「キョウハウンガイイホウジャナカッタノカ?」


「アレハアクマデジブンダケダ」

舌打ちしながら周りにある物を当たり散らしていた。


「ヤツヲタオシテソノカメンノシタヲミテヤル」

こんな暗闇で近接武器はあまり役に立たないだろうと思い、クイーンズブラスターだけを持ち警戒しつつ銃を構えていた。

壁にしていた機械の後ろから足音がし、目の前の機械を破壊した。

振り返って、敵に遠慮なく銃弾を浴びせた。身体を硬いのか全て弾いた。

「ジブンノモウヒトツノノウリョクハ【運】ダ」


【運】とはまた面倒なものを・・・

自分の運を操作していると考えられる。そう考えると、このアルマジロ型との戦闘で銃弾が全て弾かれたのも納得がいく。

【龍神】と呼ばれている存在がいる。【龍神】は【運気の流れを作る】という大きな役割があるらしい。運には【流れ】があるとされている。つまり、運が良くなると良い傾向が続き、運が悪くなると悪い傾向が続く。あくまで自分に運気が上がるように仕向けている。


攻略法が判るまで逃げに徹するしかないわね。

『スパイダー』

2階に上がり周りを見渡すと縛られている橋間さんがいた。


「今は青奈?それとも灯?」


「灯の方だよ!」


「戦闘中はその陽気な口調なのね」


「あくまで役割だけどね」


「ご、ごめんなさい・・・」

「私、貴方に酷いことをした」

「あんな、状態になるとは思わなかったから」


「確かにあれはきつかった」

「私意外と豆腐メンタルだから・・・」


「橋間さん、こんな状況で言うものじゃないけど」

「私と友達になってくれますか?」


暫し、沈黙から橋間さんの口が動いた。

「いいの」

「私、貴方に酷いことをしたのよ」


「会って間もないし、お互い何も知らないことが多いけど・・・」

「貴方のしたことは許せないけど、その部分も含めて受け入れます」

「それが、友達ってものなのかな」


「なんて、おかしな怪盗さんなのかしら」

笑いながら、何か吹っ切れた様子の橋間がそこにいた。


微妙に風の流れが変わっていた。

傘を差しながら2階まで移動してきたガイコツ型。

骸骨顔だから骨格が動かず表情は分からないが、苛立っており、それを自覚していても抑えることが出来ないでいた。不機嫌になっていた。それは、近くにいた私達にはそう見えた。


「オイツメタゼ」


「ここで貴方に良いものをあげる」

『カメラ』


引き金を引くと、私の頭上に3機の丸型のカメラが出現した。

そのカメラ全機が工場の屋上に向けて光を放した。

次の瞬間、工場の屋上に備え付けられた電灯に電気が通り、辺り一面が煌びやかな光に包まれ、そこだけ、暗闇から脱却していた。


「私が使っていた力?」


「そうよ!」

「この力があればあの2人を救える」


「こんなに明るければ、逃げる必要もないわね!」

「早速、攻撃に移りたいけど、私の役目はここまで」

そう言って、『レッド』のスライドキーを外し、3番目のスライドキー『イエロー』を付け、

引き金を引いた。

「黄華ちゃん行くよ!!」

「変身!!」


黄色のコスチュームに身を包み、黄色に輝く銃、右腕部分が黒色のガントレットに3本の爪が備わっている巨大な黄色の鉤爪。


「久しぶりの娑婆だ!!」


屈伸したり、両手を背伸び、上体の前後屈などの準備運動してみた。

(少しは鍛えているみたいだね〜)

(多少、無理な姿勢を取っても大丈夫か〜)


「さぁ、モンスターさん!!」

「僕と楽しいことしよう!!」


黄色のショートヘアーの怪盗が屈託のない笑顔を見せていた。




黄華(こうか)

僕っ子

戦闘狂

意外と料理好き

青奈とは水と油だが、本当に嫌っているわけではない。


灯は毎度その光景を見て、あたふたしているが

ただ、お互いじゃれあっているだけ

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