7話 天使をナンパする奴はもれなく天誅でOK!!
「さぁ、貴方の報酬はどうするの??」
突然、私の部屋に入るや否や仁王立ちし、腕を組んでいた。
腕を組んでいるせいで、クロの特徴的で凶暴なものの位置が上がり絶望的な目になりながら、私は読みかけの本を閉じた。
「その~ 何というか・・・」
灯が少し申し訳けない顔をしていた。
「実は・・・あー その...なんですが・・・・」
「どうしたの? やけに端切れが悪いわね」
「・・・・・・・・・・・ださい」
「聴こえないよ?」
「友達の作り方を教えてください」
タコが茹で上がったように真っ赤な顔でこちらに向けながら灯が言った。
「友達って・・・・貴方・・・」
クロがハニワのように口を開け、眼を丸くしながら、数秒フリーズしたと思ったら、うれし泣きしてきた。
「ついに、灯も人の道を歩む決心が出来なのね」
「ちょっと、酷くない!!?!!?」
「だって貴方、学園じゃ基本喋らず、話かけられてもうまく言葉が出ず、どもるじゃない」
「まぁ、灯が声を発しただけでクラスの男子が歓喜してるらしいし」
確かに・・・・
何故か、話をしただけでクラスの同級生が歓喜し・・・・
何故か、休み時間になると他クラスの子が見に来るらしい・・・・
「えぇ、そうですぅ~ 私はエリートぼっちです。 コミュ障だぁし 仕方がないじゃない どういう話をすればいいかわかないし でも、私だって皆と話がしたいんですぅ~」
「分かったわ!! 灯の社会復帰の第一歩だしね!」
「いや・・・そこまで言わなくてもいいんじゃない・・・・」
「今週の日曜日、一緒に外に出るわよ!!」
そう言われ、学園の一個前の駅 近而駅に待ち合わせをした。
駅前近くの広場には、立派な噴水が設置さえており、日曜日ということで、親子連れやカップルなど、多くの人で賑わっていた。
噴水近くの長椅子に座りながら、携帯端末で時間を見つつ、待ち人が来るであろう方向へ視線を向けながら周りの風景を見て時間を潰していた。
平和だな・・・・・・
私としてはこの光景は非日常な感覚で、10年いたあの場所が私の日常だった。
研究所から抜けてもソドールの力を回収する怪盗行為をしていたため、ここにいる人達より中々、濃くて異常な生活を送っている。
でぇ、ここに待ち合わせした本人はいつ来るのだろうか・・・
携帯端末をいじっていると私の方に向かってくる影が迫ってきた。
顔を上げると私より少し年上の二人組の男性が声をかけてきた。
「ねぇー、ねぇー 君、暇? 」
二人とも髪を染めていたり、ピアスをしていたりと派手な服装だった。
これって、俗に言うナンパね? 私、初めてされた・・・
って、それもそうか 休日は基本家から出ないし、出ても家の周辺位しか歩かないし・・・
「ごめんなさい・・・ 人を待っているので・・・・」
「まぁまぁ、言わずにさ~ 一緒に遊ぼうよ!!」
中々、強引な人達らしく、腕を掴んできそうになった。
次の瞬間、男の腕を掴む手が見えた。
「ごめんなさいね!! 彼女は私の連れなの」
そこに居たのは眼鏡姿のクロだった。
クロは男の腕を掴みつつ、足を引っかけて転ばせた。間髪いれず、倒れた男の顔面に鋭い蹴りをした。幸いにも寸止めである。
「まだ、やる??」
ニコニコしながら男に質問したクロの背中が少し危険なオーラが出ているみたいだった。
「すみませんでしたぁぁぁ」「ごめんなさいぃぃぃぃ」
男達は震えながら退散していった。
「遅いーーー」
「ごめんごめん!!」
「待ち合わせがしたいって言うから待っていたのに」
「なんかデートぽくない??」
「女同士だけど・・・・」
灯の言う通り、一緒に住んでいる灯とクロが何故、わざわざ待ち合わせをしたのか・・・
別に一緒に行けばいいんじゃないと思っていたが、クロ曰く「これも訓練の一環ね」らしい。
まず、私に人に慣れさせる所から始めると・・・・
「こんな休日に可愛い子をほっとく男はいないし、貴方もどのように断るか見ていたけど、まだまだ、だったね」
「あんな、もやしどもより凶暴な奴と日夜過ごしているんだから撃退できると思ったもに」
「ち、違うし・・・ ちょっと、驚いただけだし・・・」
「てか、見てたんなら、もう少し早く来てほしかったんだけど・・・」
頬を膨らませながらクロに言った。
「さぁ、行くわよ!!」
腕を引っ張られながら街中に向かった。
そんなこんなで色々あった広場の人ごみの中にカメラをぶら下げながら
2人と見る影が1つ・・・・・・
駅と街のメインストリートに続くスクランブル交差点を歩いている私達
「今日のクロ、いつもより大分違うね??」
そう、今のクロはいつもの黒髪ではなく金髪の姿をしていた。
しかも、いつもの大人のクロではなく私と同じくらいの見た目に変わっていた。
着ている服もネイビー色のワンピースでシャツとスカートが組み合わせたようなドッキングタイプのワンピース。腰にはスカーフ風のベルトを身に着けており、スカートがひざ丈位の長さしかないため非常にエレガントな雰囲気な魅力を感じさせる。
「そう言う灯こそ似合っているわよ」
「これは、凛子さんに勧められて・・・」
ロングストレートの髪を揺らし、白のコンパスTにブラウン色のビスチェを重ねて着ており、フレアデニムスカートを履いていることで、大人っぽさと女性らしさが兼ね備えた装いになっている。
「そういえば、なんでここなの??」
「うんー ここはね、学園の生徒が休日でも良くくる場所でね」
「実は、灯と仲良くなりたいって言う子が多くてね」
「話しかけたいけど、灯さんみたいな高貴な方に話しかけるなんてそんな畏れ多い・罰当たりでって相談に良く乗るのよね」
「噂が広まって休日には乗馬したり、ダンスレッスンなどのお嬢様教育を行っていることになっているらしいわよ」
「で、灯と同年齢に扮している私が仲良くおしゃべりしながら、ショッピングしたり、食事していたら、貴方への変な警戒心が解かれ、話しやすくなる作戦だよ」
灯も普通の女の子だとアピールさせるため。
2人はコーヒーショップで買ったコーヒーを持ちながら、
1時間位、ウィンドウショッピングしていると・・・・
この街の象徴とも言える高層ビルの真下に人ごみが出来ていた。
白を基調としており、表面はガラス張りになっており、屋上には巨大なアンテナがそびえ立っていた。
そのビルの外側に上に向かって転がっている物体がいた。
あれって、ソドールよね??
こんな真っ昼間に何をやっているんだか・・・・
周りの人がコンサート会場のように声が飛び交う中、小声で会話を続ける。
貴方はサングラスで認識阻害してから現場に行って、私も後から向かうから
クロのアドバイス通り、路地裏に向かった私はサングラスを装着し、認識阻害した。
幸運なことにこのパニックになっている人の群衆のおかげで、急に1人がいなくなっても、誰も見向きもしない。
路地裏に着いた私は、今日もバイタルが安定しているので『レッド』に変身した。
赤いコスチュームを纏いながら、『スパイダー』を装填し、起動。
路地裏の建物と建物の間を蜘蛛の糸で上りながらビルに向かった。
この『スパイダー』の糸はトリガーを引き続ければ、長く伸びていき、トリガーを外すと糸が銃口にしまうようになっている。
屋上に到着したレッドが見たのはアルマジロ型のソドールだった。
猫背のような態勢をしており特徴的なウロコ状の硬い鎧が頭部から尻尾、四肢などほぼ全身を覆っている姿をしていた。
「アルマジロって確か、夜行性じゃなかったけ?」
後ろから急に声がしたので、驚きながら振りかったソドールはこちらを見るなり
「なんだ、最近、噂の怪盗さんじゃないですか」
「せっかくの休日だったのに、貴方を見てしまった以上、貴方の成分頂くよ!!」
銃弾を撃って、前に進んでいった。
ソドールは体を丸めて防御態勢に入っていた。撃った銃弾が弾かれ足元近くに被弾した。
アルマジロはスペイン語で「武装した小さいもの」を意味する「armado」から由来されており、その名に相応しい頑丈なウロコを身に付けている。アルマジロの甲羅は銃弾をも跳ね返すとされており、私のクイーンズブラスターASKの銃弾も弾くとなると中々、骨が折る戦いになりそうね。
硬いのは頭からお尻にかけて覆う甲羅だけだと思うのでひるませて防御を解除した所の銃弾の雨を降らせる。
だったら、接近するしかない。あの甲羅の防御力を低下させるには、今はこれしかない。
クィーンズブラスターASKに水青色の弾倉を装填した。
『シャーク』
トリガーを引き、私が右手に持っている裁紅の短剣の刃先から切先にかけて鮫の牙が現れた。
水色の牙に機械的なコーティングが施されており、3本ある牙は等間隔に離れており、つるはしの刃のような長さの見た目になっている。
No.47『シャーク』
武器付与系
3本とも大きな獲物を引きちぎれるほどに尖っており、へりののこぎり状でギザギザしている。歯は切先部分に位置しているのが一番長く、刃先開始部分は一番短い歯となっている。
歯の耐久性はあまりなく、切先の歯がする減ると自然に落ちていき、エスカレート式のように2番目が上に上がり、上がると同時に歯が成長し鋭い歯になる。刃先開始部分も新しい歯が誕生する。歯を抜いて相手目掛けてブーメランのように投げることが出来る。
甲羅の一部分を集中して狙えば、甲羅の防御力が低下し中身が出てくる。そこを撃つ。
狙いは首元の甲羅。釘を打つ感覚で何度も打ち続けていると中身が現れてきた。
「はぁ~ うそだろ!?!?」
「もらった!!」
「勝ちを急ぎすぎたね 怪盗さん」
「えぇ・・・」
私のうなじ部分に何かに掴まれている感覚が起こり、持ち上げられながら、宙に浮いていた。
辛うじて動かすことが出来る首を後ろを向くと、骸骨が右腕を伸ばしながら、左手には赤い傘を持っている状態で浮遊していた。
大きさ10mほどの人間の全身骨格のような姿をしており、上下の歯をすり合わせ音を立てていた。右腕は足元まで伸びており、左手は標準の腕の長さだったが、この骸骨の肩幅を覆うことが出来る大きさの赤い傘を左手に持ち、宙に浮いている。
「キョウハアマリカゼガナクテココマデクルノニジカンカカッタ」
「まァ、シかたねーよ」
吊るされている状態の私に向かってアルマジロ型のソドールが近づいてきた。
「さっキはよくモやってクレタナ」
爪で私に攻撃してきた瞬間、私の周りにダイヤモンドの柱が出現した。
「なニ?」
柱が出現したと同時に骨の手から抜け落ち体が真っ直ぐ落ちていた。
骸骨型のソドールの手が切断され、黒服がアルマジロ型のソドールの腹部に蹴りを入れておる光景はまるで、周りがスローモーションのような感じでほんの数秒のことだった。
私の背中をさすってきた黒服はクロだった。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう」
17世紀位のレトロ風のコートタイプのペストドクターに、膝までの長さがあるレザーのニーハイブーツ、私と同じクィーンズブラスターを左手に、右手には40㎝程の黒と赤が合わさった忍者刀を持っている。
可変式変身銃クィーンズブラスターBLACK
灯が使用している可変式変身銃クィーンズブラスターASKと同型だが、変身器スライドは黒色の1つのみ クィーンズブラスターASKとは違い、小型銃からランチャー型まで様々な銃の形に銃の形は変更可能。しかし、変更する場合、クロが身に付けている服や武器などをエネルギーとして使われるため、攻撃力や防御力を捨てれば位ならとクロはあまりこの機構を使用しない。
変形充填式忍者刀 『黒志』
40cm程の忍者刀で『レッド』と同じように裁紅の短剣で使われているグリゴンテンを刀身に使用している。しかし、反りがない直刀であるため、突くには有効的だが、引き切りにはあまり適していない。刀身が折れて使用不能になっても刀の握り部分にトリガーがあり、取り外しができる。木や石など周りの材質を鍔に置くことで刀身の代わりに変化する。刀身の強度は素材になった材質に由来される。
「まさか、ソドールが2体とはね・・・」
「でも、ラッキーよ」
怪盗として活動開始してから約半年が経っているが、まだ、回収しているソドール成分は6つ。半年で6つのペースだとすべて回収するのに一体、何年かかるのかわかったもんじゃない。
「オイオイ、2人イルトハキイテイナイゾ???」
「イッタン、ニゲルゾ・・・・」
「ボスニホウコクダ・・・」
アルマジロ型が身体を丸め、ガイコツ型が上に乗りサーカスの玉乗りのような格好になりながら屋上から逃げるつもりらしい。
「逃さないわよ」
私が相手に向かって銃を撃ったが、何故か、すべて放物線を描くように銃弾が外れた。
威嚇射撃でわざと銃弾を外すことは今までしてきたが、今回はすべて当てるように撃ったのに全弾弾かれた。
そうこうしている内に2体のソドールはビルから身を投げていた。骸骨が玉の上でバランス良く転がしながらビルの壁を地面に見立て、徐々に加速しながら進んでいた。
ものすごいスピードで何かが降りているため、下にいた野次馬が上から降ってくるのを目視しながら恐怖を感じながら、巻き込まれないように、当たらないように安全な場所まで一目散に逃げていた。
幸いにも直撃した人はいなかったが着地した影響で低震度の地震のような揺れが発生し、その場で尻餅を着く人が少なからずいた。
そのまま、2体は周りを気にせず街中のストリートを駆けて行った。
「逃げられたわね・・・」
過ぎてしまったことは仕方がない。今はここから逃げることだけ考えよう。
屋上に居た私たちが下からかけて登ってくる音が聞こえきた。恐らく、このビルの警備員かもしれない。鉢合わせするのはマズい。そう、思いクロが『スパイダー』を起動し、逃げる算段を付けていた。弾倉は同じものの複製は無いため私はNo.33を使って帰還するしかない。
これ、苦手なんだけどな・・・・
溜息混じりながら、渋々、装填しているとクロに腰に手を回され、上半身を支えながら糸をどこかのビルの壁に付けながら、振り子の原理でその場から逃げていた。
これが、俗に言う「お姫様抱っこ」というやつか・・・
偶々、現場に居合わせた俺はすぐにビルに入ろうとしたが、入り口で止められ身元が判明するまで時間がかかった。
身元が分かり、警備員の協力で屋上まで行くことができたが、そこには誰も居なかった。
一呼吸入れてから、気持ちを切り替え携帯端末から今、対策室にいるであろう同期のアイツに連絡した。
「もしもし、俺だ!!」
「警察にオレオレ詐欺とは随分、勇気があるね!!」
「連絡先が表示されているだろう・・・燐兎(れんと)だ」
「あぁ〜 燐兎か〜 で、どうしたよ?」
事情を話し、現場に来るように伝えた。
「ok 賢人(けんと)と一緒に移動するから 俺らが着くまで何も触るなよ」
「素人や新人じゃあるまいし、そんなヘマしない」
「どうだか お前、例の怪人達の事件で熱入りまくっているだろう」
そう言って、同期で同じ未確認生物「ソドール」の対策室実行部隊所属の緑川颯は電話を切った。
目撃情報も少なく、被害も少ないため、こんな対策室を作る必要はないと思うが、上の指示らしく2ヶ月前から発足した。
緑川は重い腰を上げながら、支給された上着を着て、対策室用に作られた研究室に向かった
「賢人、出動するぞ」
「颯(はやて)さん 待っててください すぐ終わらせますので」
研究室の中ではメタルカラーの籠手のようなものが3つ置かれており、1つ1つに配線コードが繋がれて、繋がれている先の複数のパソコンで刹那的なスピードでキーボードを操作している白衣の男がいた。
「それが、例の対策室に支給される武器か・・・」
「現在、最終調整中ですのが、もう少ししたら実践投入できるようになります」
「今さっき、2体目撃されてらしい リーダーから連絡があった」
賢人は作業を一時中断して一輝と同じような制服を着て現場に出動した。
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