2話 蜥蜴×蔦の変態にご注意を
202X年3月下旬ーーーー
とあるビルの屋上。
私、
ほんの少しだけ欠けた月が目の前に浮かんでいた。
月を見ていると山の中で悪魔の手を取った日を思い出す。
あの山の中で悪魔と出会ってからもう半年が経っていた。
「はぁはぁはぁ......テメェー、よそ見しているとは良い度胸だなぁ」
灯は後ろで息を荒げている奴に呼びかけられた。
灯は後ろへと身体ごと振り返る。
屋上に設置されている電灯、周りのビルの光に照らされてフェンスを背に横たわっている大きな蜥蜴の生物を見ていた。
その大きな蜥蜴の生物は舌を出して眼を怪しく輝かせていた。
口元に血がついており、身体の至る所に鋭利な刃物で切られた跡が残っており、腹部には靴の裏面がくっきり残っている跡がついていた。
「今日はよく月が見えるなって、満月じゃないのが残念だけど」
灯は右の手首を回しながら蜥蜴型のソドールに向かった。
「貴方を痛みつける趣味はないの。貴方の成分頂きます!!」
「ここでやられる訳にはいかねぇぇ」
「女性を驚かすのを趣味として、快楽に溺れている貴方にはこれ以上その力を悪用させる訳には行かないわ」
灯は距離を縮めて至近距離まで到達した。
「でも、よかったわ。貴方がまだもう一つの能力をうまく使いこなせなくて助かったわ」
「ラッキー!」
「え?」
灯は違和感を覚えた。
後ろにあるはずの月の光が突如としてなくなり、4本の影が昇っていた。
目の前の蜥蜴型を警戒しながら、後ろを振り向く。
「嘘!?」
コンクリートから4本の蔦が出現しておりどんどん、伸びていた。
伸びていた蔦が視界に飛び込んだ。
灯は反射的に右手に持っていたナイフで守りに入ろうと伸びている蔦へ構えた。
蔦は思いのほか柔らかくすんなり斬れた。
が、左足に蔦が巻きついく。
「ーーーーっ!」
足に巻き付いた蔦を斬ろうとしたが、身体が上に逆さまの状態に上がっていた。
足に巻き付いていた蔦から解放されたが空へ投げ出された。下を見れば車のヘッドライトが鮮やかな川の流れとなって、街から街へと流れていた。色々な音がまじりあって、まるで雲みたいに街の上に浮かんでいた。
「きゃあぁぁっぁぁっぁぁ」
声はだんだん小さくなり次第に聞こえなくなった。
「ザマァ見ろ。さぁ、次はどの子にしようかなァァァッァァッ!!!!!」
蜥蜴型ソドールは闇に消えた。
ガタンゴトーン ガタンゴトーン
電車内で1人のOLがスマホをいじりながら、心ここに在らずと言った様子で目の前のサイトを見ていた。
「はぁ......やっぱ、転職するべきかしら。」
(明日は休み。どっか行こうかしら......温泉......ショッピング......グルメ巡り......)
携帯端末をいじりながら、自宅近くの最寄り駅に到着したアナウンスが聴こえ即座に、電車を降り、歩いていた。
(何か面白いことないかなぁ......)
「わおぉ!!」
開いたニュースアプリが更新され、夜のニュースになり、今、話題の怪盗の項目がいくつもあった。
『女怪盗レッドクィーンの素顔に迫る』
『レッドクィーンのファン、急増』
数ヶ月前に彗星のごとく現れ、一躍有名人になった赤髪の女怪盗。
近くの公園に生えていた桜が満開になっており、その鮮やかさで夜でも辺りが明るく感じられた。歩きながら携帯端末を触っていたため前に歩いていた人にぶつかってしまった。
「あぁ、すみません......キャァァァァァッァァ!!!」
顔を上げると、そこには、人ならざる姿をした異形な生物がいた。
目の前の生物は全長180㎝。体色は黄緑色に黄ばみ橙色の斑点がある蜥蜴で、左腕全体には赤緑色をした蔦で覆われており、左手に青紫色の野球ボール位の大きさがある球根を持っていた。
「ギャハハハハハァァァァァァ。こんな夜に一人でいると変な奴に教わっれるよ!! おっ嬢~さ~~~~~ん。まぁ、ここで会ったのも何かの縁だぁぁ。ちょっと、オレェェェェ~~~トォォ遊ぼうぜ!!!」
蜥蜴の化け物が声を高らかに喋っている内に原田は少しずつ後ずさっていく。
手に持っていた携帯端末を目の前の蜥蜴の化け物に向かって投げた。
蜥蜴の化け物はなんなく腕で払い落とされてしまうが、逃げる隙はできたと原田は感じた。
「誰か助けて......」
原田は公園のある方向に逃げた。
履いていたヒールのピンヒールが折れてしまい、転んでしまった。
「逃げるなんて酷いなぁぁぁ。まぁ、いっか! 気が変わった。 君を殺すよ!!!!! じゃあね~~~~」
そう言って蜥蜴の化け物は、右手を上げ、下に降ろし原田に攻撃した。
(なんで、こんなに私は運がないんだろ......)
原田は、咄嗟に目をつぶっていた。
だが、いつまで経ってもあいつの腕が当たることはなかった。
......数秒経つ。......閉じていた目を開けた。
「えぇ? あなたは......」
地面に落ちていた大量の花びらが下から上に舞い散り、視界がピンク色一面に覆われ、
まるで、桜吹雪のような見事な美しさの中に先ほどニュースで見た風貌の姿がそこにいた。
腰まで伸びている真っ赤な髪、モデル体型のような細い体は烏の羽のような艶のある黒色のワンピース・ドレスに包まれている。
ドレスの上に羽織っている深みのある華やかなワインレッドカラーのコート。
目の周りは、赤色のベネチアン風マスクで覆われており、素顔は分からないようになっている。
右手には銀色ダガーナイフ、左手には、白いサブマシンガンのような銃を所持している。
「おぉっ、お前は......」
振り下ろした腕が銀色のナイフで止められていて、蜥蜴の化け物は焦った声を出していた。
「見つけたわ。さっきはよくもやってくれたわね。私とのデートから逃げて、別の女性と一緒にいるなんてひどいんじゃない」
「しつこいんだよ」
互いの攻撃を回避し、離れるように距離をとる。
「今度こそ、あなたの成分頂くわ!!」
今、装填されている弾倉を外し、新しく透明な色の弾倉が装填された。
「そこの女に使おうと思ったが、お前にもう1回使ってやるぜ」
蜥蜴もどきは左手にもってる球形を地面に向けて投げた。
球根が弾け、私たち側の地面から無数の蔦でてきおり、獲物を狩るがごとく、襲い掛かってきた。
「あなた、そこにいなさいよ」
子どもっぽく無邪気な声の女怪盗はどこから、出したのかわからない、両面が別々のデザイン縦長の金属製の弾倉のような物だった。
片方は無色透明なダイヤモンドが装飾のように彩られ、もう、片方にはNo.52と彫られていた。
一方、灯は、蜥蜴の化け物に近づくために自分を襲ってくるホーミング型の蔦をかわしたり、転げながら避けたりして奴との距離を詰めている。
灯に背後をとられ、首筋に銃口が当たる。
「おいおい、怪盗さんよーーあの女を守らなくていいのかぁ」
灯に攻撃してきた蔦が向きを変え女性の方に向かっていた。
「問題ないわ!」
そう言うと、すでに、先ほど弾倉のような物を装填した銃を原田の方に向けて、撃った。
灯が撃った銃弾が途中で弾け、原田を中心に半径2メートル程にダイヤモンドの柱が円型状に現れた。
「前に手に入れた奴から頂いた能力を使ったの」
「ばかなぁ」
「隙あり!」
灯は、相手が呆けている状態を見逃さず、懐から特殊な注射器を刺し成分を抜き取った。
抜き取られた蜥蜴の化け物から蒸気がたちこみ、先ほどまでの異形の姿をしていた
生物はみるみる、人の姿に代わりその場に仰向けになって倒れこんだ。
「成分採取成功!!」
ゲームで高ランクのアイテムを手に入れたようなはしゃぎぶりを見せ、しまいには
飛び上がるほど嬉しそうな顔をだした。
原田は、今まで目の前にあったダイヤモンドの壁?みたいな物が、徐々に溶けていき、周りに何も無くなってから、彼女に恐る恐る質問してみた。
「あぁ、あの......助けて頂きありがとうございました。こいつはなんなんですか?」
「こいつのような異形の怪物はソドール」
「それ、知っています。でも、それって都市伝説ですよね?」
〈〈怪人人形ソドールがあなたの願いを叶えます〉〉
自分の両手に自分がもっとも好きなもの、嫌いなものを持ち、修道女達が神様に祈るようなポーズを取り、願いを頭の中に強く念じれば、人形が現れて、あなたの望む物が手に入るという都市伝説が半年前位からまことしやかに囁かれていた。ただ、その代償に願いが叶った後、今までの記憶が消えてなくなる。
記憶がなくなるのはいやだけど、願いや夢が叶うならやっても良いかと考える楽観的な人も入れば、怒り・憎しみ・恨み・嫉み・悲しみ・攻撃性などの負の感情が爆発し、自分以外の他者の迷惑になるようなことをして、快楽として楽しむための道具として扱う者もいる。
「そう!! でもね、そんないいものじゃないわ。貴方も見たでしょう。あの男が二足素行する蜥蜴の化け物になり、あなたを襲った」
地面で横たわっている男を哀れな目で見てる女怪盗は「そんなものの為にあるんじゃないのに」とぼそりと言ったが、原田はその言葉の意味を聞く勇気はなかった。
「あなたも気を付けてね」
灯はまた笑顔で目の前の原田の方を見た。
「じゃあ、私はここを立ち去るね! 申し訳ないけど、警察に連絡しておいてくれる?」
「分かりました。ありがとうございました」
原田は一礼して、顔を上げたら、そこには誰もいなかった。
朝 6時30分。
少し空が明るくなっており、後1時間位で日が完全に昇り、人々が活動を開始してしまう。
ベージュ色のトレンチコートに身を包み、中折れ帽をかぶり如何にも男らしさ溢れるハードボイルド風
の男がとある雑居ビルに入っていった。
この雑居ビルは上3階建てで地下2階建ての少し、特殊な建物となっておる。
1階は車庫代わりとなっており、シャッターが閉じていた。2階3階はこの雑居ビルの持ち主達の生活空間
となっており、俺が用事あるのは2階にある会議室
(段々、階段昇るのにも少しきつくなってきたな......これは、本格的に運動やるべきか.......)
そんなことを思いながら、俺は、ドアをノックして入っていった。
「入るよ!先生!! 姫いるか?」
「これは、零冶様。いらっしゃいませ」
俺に話しかけたのはここでメイドをしている女性。名前はクロ。ロング丈のクラシカルなメイド服を着ている。
年齢不詳。今日はロングストレートの銀髪に、170cmと女性の中ではかなり高身長で全ての人間を魅了してしまう程の翠の眼、モデル顔負けのプロモーション。100人いえば100人が彼女のことを美人と表現すること間違えない。人間では到底、追いつけないであろう美貌を有していた。彼女の美しさには誰もが目を奪われても仕方がないと感じてしまう。俺も初めて会った時は最愛の妻が霞んで見えてしまった。まぁ、速攻でバレて修羅場になったことは言うまでもない。
「やぁ! クロ。 おはよう!! 2人は?」
「
俺、坂本零冶は壁一面本棚に設置されており、白を基調とした内装に、ナチュラルな木目調と
透明なガラスが合わさって清楚さが印象になっている部屋を見渡していた。
家具もダークブラウンで統一させており、
シックで落ち着いた雰囲気のある。社長室を連想される上質な空間になっている。
(相変わらず、この部屋はすごいなーーさすが、先生ってところか)
数分が経ち、部屋の右奥の本棚が開き、そこから、ヒールをカツンカツンカツンと音を立てながら、
白衣を羽織った女性が俺を通り過ぎて椅子に座り、クロが持ってきた紅茶を一口飲んだ。
この白衣を着ている女性は
自称天才科学者である。俺は『先生』と呼んでいるが本人はあまり言われたくないらしい。
こっちもクロに負けず劣らずのプロモーションを持っている女性。クロと同じくらいの身長。髪色は黒色に見えるが目を凝らすと極めて黒に近い深い赤紫色となっている。
「これ、ア―ルグレイね! いい香りだわ!」
「はい! 遅くまで作業されており、寝不足と考えましたので、頭も気分もスッキリできる紅茶を選びました」
「ありがとう! 今日は、英国式のメイド服なのね?」
170㎝で腰まで伸びている銀髪に服の上からでもわかる胸、クラシカルなロング丈・長袖、王道の黒と白カラーのメイド服を着こなしており、よく似合っている。
「昨夜、灯お嬢様との賭けに負けましたので.......」
「あぁ......たしか、敵が出してきた蔦の攻撃を全部、回避できるかだっけ??」
「なるほどね——あなたが勝ったら、灯に何しようとしたの?」
「1週間、日常で『ですわ』の高飛車お嬢様口調で話すです」
「うわぁ.....あの子が日常で絶対にやらないことをやられるなんて......それで、灯は?」
「まだ、寝ております」
「灯は朝が弱いからね。怪盗活動関係なしで......悪いんだけど、起こしてきてくれる」
「かしこまりました」
「お願いね」
クロが一礼し、部屋から退出した。
「姫様は朝、弱いから仕方ないんじゃないか?」
「今日から新学期よ——さすがに、初日から遅刻はまずいわ」
「まぁ~~な。でもただでさえ、怪盗と高校の2重生活はしてるんだ。少しくらいいいんじゃないのか? さすがに、キツイだろ?」
「私はね——灯には良い人生を送ってもらいたいの。目的を果たしたら、多分、灯は——この世からいなくなると思うから」
2話現在、回収済
No.33 ホッパー 青ピンク色
No.35 スパイダー 赤紫色
No.47 シャーク 青水色
No.52 ダイヤモンド 水白色
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