◆3◇ 反旗を纏え、希望と弔いに踊れ。
気がつくと私は、金のシャンデリアから
「
「落ち着いて」
「だって、カラフルがいっぱいで……きゃぁっ!! 」
ディスプレイをグルグルと踊るように見渡していた私はツルリ、と鏡面の床を滑る!
「アイ!? 」
憂いのある冷静さをかなぐり捨てて驚愕するネリアルが目に焼き付き、反転する視界はシャンデリアを仰いだ。鎖が繋ぐ天井には、
「何かキラキラしてるんだけど! 何ここ、色彩の天国なの? 私召されちゃったのかな!? はぅぁ……喉カラカラ」
「とりあえず、落ち着いて 」
私を抱きとめ息を吐くネリアルに、
幼子のようにジュースを与えられるがままに抱えて座り込むと、咥えたストローから口内を満たした冷たさに目が覚める!
甘いのにしつこくないのは、爽やかで程よい酸味があるから。シロップが上品だ。鮮やかさに相反し、薔薇の香りも強すぎず、自然……。
コンビニにあったら、絶対にリピートしたい。けど、市販でこんなの飲んだことないよ!?
「何コレ、ウッマッ!! ローズジュース!? ネリアルが作ったの? お手製ですか、原材料は……てか、ここは何処なの」
つんと得意気に、ネリアルは口角に弧を描く。
「やっと我に返った? 俺の能力は、『創造』だから。コーディネートをするなら、ブティックが必要だと思って。……初仕事は自分自身からだね」
そうだった。我を失い色彩に惹かれるままに、ひたすら服を合わせるのもありだけど……私の目的はただのコーディネートじゃない。『救世主』のイメージを表現するコーディネートだ。
それに、『私自身』のイメージがまだ出来ていない。私はどんな救世主になりたいの?
真四角の氷にカランと、手の内の冷たさが
改めて見ると、日本人とは全く異なる色彩だ。外国人の瞳のようかと言われると、それもまた違う。宿す瞳孔が……宝石のようにダイヤ型なのだ。夜を穿つ輝きで、石言葉通り私自身を『安心』させてくれるはずなのに、今は瞳孔が不安に揺らぐ。
――日本人の
決して私は死にたい訳では無かった。希望に満ちる未来が続くと、根拠の無く信じていた。漠然とした夢だって合った。捨てられない
私を殺した
それとも『
一体
「ネリアル。ここに、日本の服なんて無いよね」
私は郷愁からか。ネリアルに自然と問うていた。見覚えのある
「今は無いけど、欲しいなら創るよ。アイは、日本に心残りでもあるの……? 」
心無しか、私を静かに見つめる
「戻りたいとしても、戻れないでしょ? 私は
「知らない。
――切り捨てるように返された思わぬ冷たさに、胸を突かれながらも息を吐く。
考えたって生き返れる訳じゃないし、生き返っても……私の知る『
「ネリアルは天変地異でも起こせそうなくらい、何でも『創造』出来るんだと思ってた」
「まさか。神じゃあるまいし」
シャンデリア輝く私の
腕を組んだネリアルからは拒絶が滲み、すっと空に消える薄い飛行機雲のように寂寞が私をなぞる。
異世界に
「でも、十分凄いよ。シャンデリアや
私はネリアルに、意識して笑みを綻ばす。
寂寞を覚えたのは、郷愁のせいだけじゃない。突き放さないで、また『妹』に優しくして欲しいと期待しているから。私もまたブラコンなのかもしれない、と自嘲した。
ネリアルは、私が願った通りに張り詰めた
「満足してくれたのなら、何より。シャンデリアや
――私の
―◆
――
フリルが重なる
甦った私は漆黒の夜を穿つ為、金色を帯びた鮮やかな黄緑色の
「私の
「なら
夜の正礼装である
――色彩を弾圧する漆黒の夜が、〖太陽の救世者〗を待っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます