第14話 いけ好かない男!S級冒険者のビスチェ登場!

「僕のことも知らないのかい? 田舎ってのは本当に嫌だね。だから来たくなかったんだよ」


 銀髪の男は鼻につく喋り方で俺を上から見下ろしながら話している。


「話してないでまずコールに謝りなさい」


 セラが威圧感を出しながら銀髪に近寄っていく。


「そこにいられたら邪魔だったから退かしたまでだよ。僕が用があるのはそちらのマドモアゼルだけだからね」


 銀髪はハナを指さしてセラの横を通り過ぎる。


「さっきの話しは聞いていたよ。君のような天才がこのような凡人達と一緒にいるなんて考えられないポッシブルさ! 僕はS級冒険者のビスチェさ。君の名は?」


「ハナっす」


「素敵な名前だ。おいパイロジェン、アサマキこっちへ来い」


 後ろからビスチェのパーティの一員と思われる二人の女性が歩いてくる。


 二人共格好からして手練の魔法使いと聖職者のようだ。


「ビスチェ様どうしました?」


「何かご用でしょうか?」


「お前達クビ。もう用無しだ」


 は?


「そんな! どうしてですか!」


「今までずっと一緒に旅をしてきたのに!」


「うるさい! 俺はこのハナをパーティに入れることにしたのだ! 全て特1級の仲間入ったとなれば貴様らのような中途半端な奴などゴミクズ以下だ!」


 最低かよこいつ。


 無性に腹が立ってきた。


「酷すぎます!」


「横暴です!」


「はぁ……放て!」


「ぐえっ!」


「あっ!」


 ビスチェの言葉が聞こえた瞬間、先程まで目の前にいた二人が壁まで吹っ飛んだ。


「さぁ、行きましょうハナ」


 ビスチェがハナの腕を強引に掴み外に連れ出そうとする。


「お前、ちょっと待てよ」


 俺はビスチェの前に立ちはだかる。


 ビスチェの頭の上に「0%」の数字がはっきりと見えるきっとこの勝負に勝てる確率だろう。


 だけどそんなの関係ない。


「君、どきたまえ」


「コール辞めときなさい!」


 セラの言葉も頭に入ってこない。


「セラもライリルもミールも全員絶対手を出すなよ!」


 俺は一歩ビスチェに近づく。


「今の仲間だよな? 何やってんのお前?」


「どけと言っている」


「ハナを離せよ」


「嫌だと言ったら?」


「うるせぇ、離せ」


「わかった。離そう」


 ビスチェがハナから手を話した瞬間。


 俺の腹に激痛が走った。


「汚い街ではハエがうるさいくて構わんな」


 腹を殴られたと思った瞬間に左の頬にも一撃を食らわされる。


 その後、何度顔や身体を殴られたか覚えていない。


 気がつくとビスチェに胸ぐらを掴まれ身体ごと持ち上げられていた。


「どうせお前は魔法もスキルもクズで冒険者になれなかったのだろう? それなら生きてても意味がないだろうからな。ここでいっそ……」


 右手には禍々しく黒い塊が見える。


 あぁ、これは終わるな。


「いっ! 行くっす! 私はビスチェさんと行くっすよ!」


「ほう?」


「いやーっ! よかったっすよ! こんな人達と一緒に何かいられないっすからね! さっ! そんな奴置いていきましょっす!」


「そうだな。おい、助かったなクズ野郎。これでおさらばだ」


 最後に一発腹にパンチを食らって俺は床に倒れ込んだ。


「ではハナ行こうではないか」


「はいはい! どうもっすー!」


 薄れゆく意識の中でビスチェの背中を押すハナと一瞬目が合った。


 あぁ、俺のために嘘をついてくれたんだ。


 悔しいなぁ……くそっ……


 涙で視界が歪んでいく。


 そのまま俺の意識は途切れた。

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