閑話休題 その1

コールは魔法が使いたい

ーこれはコールがまだ十歳だった時のお話し


「ねーコールもう帰ろうよー」


「帰りたいならセラだけ帰ればいいだろ」


 学校の帰り道コールとセラは近くの広場にいた。


 セラはあきあきした顔で遊具の上に座っておりその前でコールが自分の人差し指を見ながら真剣な顔つきをしている。


「燃えろっ! ……でないなぁ」


「だーかーらー今日来た鑑定士さんが言ってたじゃないコールには魔法の才が限りな

く0に近いって」


「0とは言われてないだろ! 出てみろ! 出ないっ!」


「それだけ頑張って出ないなら出ないわよ。出なさい」


 セラがそう言うと人差し指の先から小さいながらも炎が発生した。


「私だって魔法の才は凡人並みって言われたんだから冒険に使えるレベルじゃないわよ」


 人差し指の炎に軽く息を吹きかけるとすぐに消えてしまった。


「何でそんなに魔法使いたいわけ? 別に大人になっても使わない人の方が多いじゃない」


「僕は冒険者になりたいんだよ。だから魔法使えるようになりたいの! うー! やー! でろよっ!」


「えっ! コールって冒険者になりたいの!?」


「何だよ。悪いかよ」


「だって剣術の授業も最下位から二番目だし。魔法も才能ないじゃない。それでどうやって冒険者になるのよ」


 セラの最もな発言にコールは苦虫を潰したような顔をする。


「目指すのは自由だろ。このまま何もせずに家の仕事継ぐの何て嫌なんだよ。炎さんお願いっ! 頼んでんじゃん!!」


「ふーん、冒険者ねぇ」


「セラは将来何になりたいんだよ。出たっ! 出ないっ!」


 セラの顔が急に真っ赤になる。


「わ、私っ! えーっと、うーんっとか、可愛いお嫁さん」


 コールの、とは、言えなかった。


「お嫁さんかセラならなれるんじゃない。ほっ! やっ! たーっ! なんでやねん!」


「ほっ! 本当!」


「家がお金持ちだし。 ほのっ! ぶっ!」


「そういうの聞いてない!」


 セラは立ち上がりコールの頭に一撃を食らわした。


「すぐに叩くなよっ! あっ!!」


 コールが自分の指の先を見ると小さいながら炎がゆらゆらと揺れていた。


 吹いた風ですぐに消えてしまったがコールは興奮した様子でセラに話しかける。


「セラ! でたっ! 炎!」


「本当! なんでなんで?」


「セラに叩かれたらでたよね?」


「そうみたいね」


「もう一回叩いてみてよ! でてこっ! ぶっ!」


「せいっ!」


 セラがコールの頭にチョップをするとまた炎が出た。


「凄いっ! 魔法を出そうとした時にセラに叩かれると魔法が使えるんだ!」


「どういう仕組みよ。意味がわからないわ。でもおめでとうコール」


「ありがとう! セラこれからずっと一緒にいてね!」


 コールが嬉しそうにセラの手を握りしめ大きく上下に降る。


「えっ? ずっと一緒?」


「そうだよ! だって僕が魔法を使うにはセラが必要だもん! ずっと一緒にいてく

れないと困っちゃうよ!」


「ふっ! ふんっ! コールは頼りないから仕方ないわね! ダンジョン行ったらすぐに負けちゃうだろうからいいわよ。ずっと一緒にいてあげる!」


「やったー!!」


 こうしてコールは無自覚にセラの想いを強くしたのであった。

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