依存
連喜
第1話 依存
世の中、色々な依存の形がある。親子間、夫婦、恋人同士、友人関係、ペット、赤の他人への依存。その他にも、アルコール、違法薬物、市販薬、処方薬、風俗、ホスト、キャバクラ、カフェイン、自傷行為、窃盗、放火、万引き、仕事、運動、ニコチン、買い物、ギャンブル、ネット、ゲーム、過食・拒食・ダイエット、セックス、恋愛。何にでも依存できると思う。ほとんどの人は何かに依存しているのかもしれない。
私は依存するよりされる側だった。常々、人に頼らないで自分で何とかしようと思って生きて来たから、自分から人に頼ったことはあまりない。親にさえ頼れなくて、子どもの頃から欲しい物は我慢して、高校生になってからアルバイトして買うようになったほどだ。
私は愚痴っぽい人は苦手。聞いている方はいい迷惑だ。高校時代からの友人で、電話で話す度に愚痴ばかりの人がいる。彼女は高給取りの旦那さんがいて、専業主婦。子どもが2人。旦那さんは次男で老親の介護もないし、転勤もないし、自分の実家の近くに住んでいる。みんなが羨ましがるような境遇だ。なのに、口を開けば旦那の悪口と、子どもと実家の愚痴ばかりだ。
私は40代で独身。非正規雇用で、両親はどちらも亡くなっている。弟がいたけど、行方不明だ。そんな私によく愚痴れるなと思う。でも、私は彼女しか友達がいなくて、愚痴を聞くのがしんどいと言えない。彼女を切ってしまったら、もう、友達が誰もいないから。非正規雇用だと友達が出来づらい。職場を転々としているし、その場で親しくなったつもりでも、職場で会わなくなると音信不通になってしまう。
私は電話を切る時に「話し聞くから、また電話して」と言ってしまう。心にもないことなのに。私は彼女のせいで頭がおかしくなりそうだった。
そのうち、彼女から「実はうつ病で・・・」と告白された。私は嬉しかった。世間的に恵まれている彼女が、陰で苦しんでいることを知って、安心した。私たちは毎日電話で話していた。話す時間は夜の8時くらい。子どもたちがテレビを見ている時間に電話でおしゃべりする。旦那は仕事でいないと言っていた。
「多分、浮気してるんだ」
彼女は言っていた。旦那はイケメンだった。高収入でイケメンだったら当然もてるだろう。
「浮気なんてみんなしてるよ」
私は言った。私も誘いたいくらいのいい男だった。周りの女が放って置くはずない。
「みんなではないんじゃない?」
「私の前の職場なんて、社内不倫してるカップルが何組もいたよ。特に忙しい職場だとさ・・・、連帯感が生まれてそういう風になりやすいって言うよね。旦那さん、車通勤だから、車の中でもできるし。送って行くって言って、浮気しやすいよね」
「そうだよね」
彼女はため息をついた。
私たちは毎晩話していた。高校時代からよく知った間柄だから話が途切れない。
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