第5話 サタナキア
ブレイズによれば、地上にはビエラ族、ラーバ族、アルテミア族と呼ばれる人種が存在するらしい。
ビエラは、俺の認識から言ってより人間らしい姿をしているが、残り二つはどちらかと言えば亜人種的だ。ラーバ族は背が高く、硬化した皮膚をもつ戦闘向きの種族。
アルテミア族は、悪魔に転生する前のブレイズのように、翼が生えた有翼人種だ。
人間には他にも様々な種族が存在するが、彼らが取り沙汰されるのは、彼らが自らを【選ばれし民】と称しているからだ。
三種族が同じ選ばれし民を自称しているのは不思議な事だが、それには深い事情があるようだ。しかし、所詮は人間同士の下らない小競り合い。俺が気にしなければならないのは、今はダンジョンの建設以外にない。
ダンジョンのためにはどうしても魔鉱石が必要になる。
魔鉱石を発見できればコアの魔力量を増やせるし、そうすれば更にダンジョンを拡張できる。魔力装置を使ったワナや設備も置くことが出来る。
悪魔たちに分け与えれば、デビルロードやブレイズのように上位悪魔に進化させることができ、戦力確保になる。
しかし、魔鉱石は簡単には見つからない。探索範囲が広がればインプの数も多く必要になるので、やはりこれにも魔力が必要になってくる。どうしたものか・・・。
「ぎぴぴ・・・(ダンジョンマスターさま)」
「インプよ。どうした」
インプはもじもじしながら支配者である俺をみつめている。
手に持っているのは魔鉱石だ。このインプが発見したのだろうか。
「おお。よくやったぞ。魔鉱石を一つ見つけたのか」
「ぎぴぴーぃ(見つけたのは一個じゃないですよ)」
「なに?」
「ギピピ!(こんなに大きな鉱床を発見したのです。まったくの偶然ですが)」
インプは手を大きく広げて見せた。
「ぎゅぴぴぃ(私にこの魔鉱石ひとかけらを頂ければ、鉱床の場所をお教えしましょう)」
こ、こいつ・・・。ダンジョンの支配者である俺に"交渉"を仕掛けてきたぞ。どういうつもりだ?
シャレのつもりか。だとしたらつまんなすぎる。
しかし、本気だとしたらいい度胸だ。憎たらしいが小悪魔らしくて面白い。
よく見ればコイツ、オリジナルメンバーじゃないか。
尻尾が二股に分かれている。俺が昔、ネコマタくんと名付けたインプだ。
「・・・・・・・・・・フンッ。いいだろう」
「ギュピー!(ありがとうございます! マスター!)」
ネコマタくんは、魔鉱石ひとかけらを口に入れた。
魔鉱石は非常に貴重なので、デビルロードやブレイズにも半カケラ分しか与えていない。
大悪魔である俺がインプの口車に乗るなんて・・・こいつ・・・妙な期待感があるんだよな。
ネコマタくんは、やはり進化しても尻尾が二股に分かれていた。くん付けで呼んでいたが、実はメスだったようだ。
「・・・・はぁ、はぁ。やっと、やっと上級悪魔になれた!ダンジョンマスター様、私の事はこれから"サタナキア"とお呼びください」
「よかろう。さあネコマタく・・・サタナキアよ。鉱床の場所を教えてもらおうか」
「もちろんっ! あ。よければ私にダンジョン拡張をするインプたちのいくらかを統括する権限を与えて欲しいんですけど・・・」
「なぜだ。いいから鉱床の場所を言え」
「私の尻尾は魔力センサーになっていまして・・・。魔鉱石の場所を、ぼんやりとですが感知することができます」
「・・・・」
こいつ、どんどん話を大きくしやがる・・・。どっちなんだ?
しかし、デビルロードが魔眼を手に入れたように、コイツにも上級悪魔に特有の能力が発現してもおかしくはないか。
悪魔たちの扱いには長けているつもりだが、そんな俺でもコイツのことはなかなかつかめそうにない。
「・・・・わかった。数匹のインプをお前の下につかせる。その部隊を連れて鉱床から魔鉱石を取ってこい」
「はい! 了解です!」
騙されてるような気がしなくもないが、しばらく様子を見るか。
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