バブルでブイブイ言わせたダンサー、異世界に転生して踊り子として生きる。神様に与えられた、「踊っている時のみ素早さが四倍になる」だけのゴミスキル<舞姫>で無双する。絶対貰うスキル間違えた!!

服英字髑髏

第1話 死んだっちゅーの!

東京、麻布十番。

 爆音で鳴り響く音楽に、振動する空気を与えない程、場を埋め尽くす人々。ディスコのお立ち台の上で、彼女は踊っていた。


 真っ赤なルージュ、ボディコンを身に纏い、大勢の前で踊る。毎日繰り返す事だ。


 だがそれが、彼女には天職だった。毎日楽しく踊れたから、魅せ方や、楽しんでもらうための努力を努力と思わずに頑張れた。


 (ここは、こうした方が良いか。)


 一生懸命働いているうちに、少しずつテレビや雑誌で紹介されるようにもなった。自分目当てに来る人もいた。紛れもなく、トップダンサーだっただろう。


 何も無ければ、そのまま幸せに家庭を持って居たかもしれない。


 だが人間、いつその時が来るかわからない。諸行無常。輝かしい生活も、終わりを迎える時が来た。


 いつも通りに仕事場へ、


 「今日も一日、頑張るぞい!」

 

 バキッ


 お立ち台の頂上へ登る瞬間。履いていたハイヒールのヒールが折れた。


 「ふぇ!?」





 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 「お..........て...!」

 「おね...さん!...きて!」

 誰かの声がする。

 

 はっとして目を開ける。


 (寝てた!?どうしよう〜怒られる!)


 「おねぇさん!おきてって!」


 「いい加減おきなさい!フン!」

 

 ちびっ子2人に覗き込まれていた。


 「あなた達、迷子?どうしてディスコなんかに...」


 見たところ8〜10歳だ。ディスコに入れる年齢じゃない。


 私のことを呼んでいたが、見たことがない。しかし2人とも、かなりの美少年、美少女だ。


 女の子の方は、キョンシーのような格好で、背中まである髪をツインテールにして、深紅の髪を揺らしている。男の子は、白いシーツの様なものを体に纏わせている。


 二人とも、特殊でナウい格好だ。


 「やっと起きたぁ。可哀想だなぁ...。僕のことなんていいからさ、まず自分の心配した方がいいんじゃない?」


 呆れた顔で少年は言った。美少年の呆れ顔、良い...


 あたりを見渡すと、真っ白な空間。白以外の色は、少年と少女、私だけだ。どう考えても、もといた場所ではない。


 「自己紹介するわ!私は舞の神サラよ!サラ様とお呼び。フン!」


 「僕は慈愛の神。エリアス。」


 きっと夢だな。早く起きて、踊らないと。


 「貴方達、若いのに凄いのねぇ。」


 これからはちゃんと寝よう。今までも10時間睡眠くらいしてた気がするけど。睡眠って大事だ。


 「私たちは見た目ほど若くないわ!フン」


 「うんうん。僕は人に慈愛の心が生まれてから、サラは踊

りが生まれてからずっと居るよ?」


 凄いリアルな夢だなぁ。


 「夢だと思ってるんじゃないのぉ?」


 「神を信じてないの?アンタ!」


 「本当に、今の人間は!あーだこーだあーだこーだ。フン!」


 「そうそう、あーだこーだあーだこーだ。」


 いきなり愚痴が始まった。


 おばあちゃんの話を聞いている気分...。要約すると、最近の人は、神様を信仰しなくなっているそうだ。


 「みんなが踊らなくなったり、慈愛の心を持たないと、その神様は力を失ってしまうのよ。」


 「サラは良いよね!地球では踊ることが流行ってるんだからさ!僕なんてもう消えそうだよ...可哀想...。」


 「うっさい!私だって地球以外から力が得られないの!みんな踊らないもの。フン!」


 ちびっ子同士の喧嘩、かわいいなぁー、田舎、帰ろうかなぁ。


 「ところで、私は貴方の踊りに目をつけたの。その踊りを使って、どうにかして踊りを広めてくれないかしら?フン。」


 「良いよぉー。」


 「えっ!?即答ね...もっと渋るかと思ったわ。」


 ふふふ、かわいい女の子からの頼みは断れないね!夢でもそれは変わらないぜ!


 「...コイツまだ夢だと思ってるわよね、フン。」


 「まぁ、そっちの方が静かで都合がいいよ。」


 「それもそうね。」


 何かコソコソ話しているが、かぁわぇぇぇ!!魔覇羅蛇(職場)には無かった癒しだわ。


 「僕も君に加護をあげるから、それで慈愛の心を広めて欲しいんだ。人助けするだけで良いから。簡単だよね?」


 「もちろん!」


 美少年の頼みも断るはずはない!


 「すぐ死なないように、15歳くらいにしておくよ。」


 「私も加護と、生きていく上で便利なスキルをあげるわ。欲しいスキルもひとつだけ選びなさい。」

 

 パァァァ


 目の前に、文字が浮かぶ。


 ステータスウィンドウ

 名前 鈴木国子

 年齢 20歳

 職業 ディスコダンサー

 Lv 0

 スキル 

 <鑑定Ⅰ> <言語取得Ⅹ>

 称号

 「慈愛神の加護」「舞神の加護」

 ステータス

 HP 0

 MP 0

 攻撃力 0

 素早さ 0

 防御力 0

 精神力 0


 「このステータスウィンドウってのは何ですか?」


 「わからない事は鑑定を使えば大体わかるから!」


 丸投げである。

  

 「こんなに手厚くするのは僕達くらいだよー。全く。僕も可哀想だなぁ...。」


 「そうですか。」


 「これがスキル一覧だよ。欲しいスキルをゆっくり選ぶといいさ。」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 パッと見て、適当に今欲しいスキルを選んでみた。


 「それで良いんだね?」

 

 「バッチグーです!」


 「........。」


 「貴方が行くのは、踊りも、慈愛の心も少ない世界。剣と魔法の世界よ!」

 

 「僕達は君の活躍を期待しているよ。じゃぁね!目的を忘れないでよ!空間転移テレポート!」


 こうして、夢だと信じて疑わない一人のダンサーは異世界に飛ばされたのだった。

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