危険じゃない賭け 怒り

阿滝三四郎

危険じゃない賭け 怒り

それは『初夜』から2ヶ月が経った、ある夜の出来事だった



帰宅したら、妻が、不敵な笑顔で迎えてくれた




「ただいま」

「おかえり、夕飯食べよ」


「そうだね。食べよ」




「なにかあった?」

「なにもないよ」


「そんなことはないでしょ、やたら笑顔が眩しいんだけど」

「あらそう、そんなことないと、おもうけど」

と、妻は笑った




「早く食べようよ」

「そうだね、隠しダネがあるとか?」


「いいから、いいから」

「じゃ食べよっか」





「あっ、大事な事を言い忘れた~❤」

「なに?やっぱり隠しているじゃん」


「食べ終わったら、わかるわよ。だから早く食べて、時間無くなっちゃうよ」

「うん。そうする」






                   ☆     ☆     ☆



「お風呂入るでしょ、沸かしておいたから、入ってね❤」

「うん。入ってくるよ」



「どうだった?」

「ありがとね、温かくてよかったよ」

「そうじゃなくて」

「もしかして、服のこと?」

「そう、全部裏返しだったでしょ」

「そうでした」




妻は、少し怒りながら

「いつも、脱ぎっぱなしで、裏返しのまま、放置する」

「ごめんなさい」


「だから、全部裏返しに、しておきました」

「えっ?全部?」

「そうです。全部です」





急いで、クローゼットを開けに行った





「うわっ、うっそでしょ。マジでやったの」

「そうです。大変時間が、かかりました(怒)」



クローゼットにある、スーツの上下からYシャツを含め

全ての衣類が、裏返しされて、ハンガーにかかっていた


それから、靴下も、すべて裏返しにされて、陳列されていた





それを見て


「ごめんなさい。ごめんなさい」

と、何度も謝った





「独身のとき、一人暮らしだったのに、なんで裏返しのまま、放置するの?」

と、妻が質問をした


「来たことあるでしょ、1Rだったから、全部届くところにあって、そのまま洗濯機にも、放り投げていたんだよ」


「それで?」

「だから、そのまま洗えば、なんとなくホツレテね。それから裏返しのまま洗っても、干すときに表にするか、乾いたら表にするとか」


「ふ~ん。それで?」

「だから、だから、なんとなくね」


「それで?」

「ごめんなさい。これからは、放置しないで、洗濯カゴに入れるようにします」


「それから」

「裏返しにならないように、表にしてカゴに入れます」


「それから」

「ごめんなさい」





「うん。じゃー、全部戻そうかな」

「一緒にやってくれるの?」

「仕方ないでしょ、これ全部やるのに、3時間かかったんだからね~」

「ありがとね、一人で戻すの、大変だと思っていたんだよ」

「そこまで、鬼ではないですよ」

と、またまた不敵な笑顔で答えた



「でも、また、同じことをやったら、裏返しではなくて、八つ裂きにしますから。覚悟しておいてね」

「ごめんなさい」





ちなみに、この日の出来事が、休みの日の前日だったことは

計算の上だったということは、あとから聞いた話

やさしいんだか、こわいんだか


今回の件が、イタズラに目覚めさせたのか

時々、イタズラとドッキリを仕掛けるようになった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

危険じゃない賭け 怒り 阿滝三四郎 @sanshiro5200

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ