お前がいいんだよな
@M1MM
第1話
「ああ、誰でもいいからヤラせてくれねーかな」
春休みが明けて希望に満ち溢れた新入生を横目に友人とベンチでたばこを吸っていた。
「1年生ならまだ右も左も分からないからいけるんじゃね」
「いや、おれ年下は無理や」
「この際、文句言わずにいっちゃえば」
「じゃあ、いっちゃいますか!」
そんなバカみたいな話をしていたら昼休みが終わり、次の授業の講義室に向かった。
この講義はとにかくペアでおこなう内容が多いらしく、常にニコニコしているのがダルいし、早く終わって飲みにいきたいなと窓の外を眺めていた。
幸いなことに周囲からのイメージは良く、話しやすいからすぐに打ち解けられる、頭が良い、気配りができてみんなを引っ張てくれる存在らしい。
それらが全部作り物であることに誰も気づいていない。
皆に優しくしていると、自分が困っているときに助けてくれるし、友達が多いと試験前に聞いたりすると簡単に教えてくれる。
じゃあ、信頼できる友達少ないんじゃないて思うかもしれないが、バカみたいなことで笑い合える親友もいれば、赤裸々に話すことが出来る親友もいる。
いわゆる八方美人&人生充実してるやつ。
今日の講義はやはりペアで課題を解決していく形式で、隣には顔は知っているが話したことはない金髪に近い髪色の女の子が座っている。何も望んで座ったわけではない、教授から座席指定があったからだ。
「初めましてに近い…よね」
「そうやんな、でも存在は知ってたで」
「いつもみんなで楽しそうに話しているグループにいるやんな」
「あ、そうそう!ってなんか恥ずかしいわ」
彼女は思っている数倍話しやすく、関西弁が強い子だったので自分も素で関西弁がでてしまっていた。
初対面の女の子と話すときは、関西弁だと強い口調に聞こえると思い標準語を意識的に話、時と場合で使い分けるようにしている。
「名前も知ってるで、京介くんやんな!」
「正解~、璃子ちゃんやったよね…」
「ちゃうわ!璃香です~」
「ああ~そうやそうや。あえて間違えたんやけどな」
「絶対嘘、知らんかったやろ」
「知ってるにきまってるやん」
本当は知っていたが、あえて間違えた。
印象を残すため。
彼女は、可愛い顔立ちをしておりスタイルも良く、胸が大きかった。彼女には申し訳ないが話していくうちに仲良くなれば、いけるんじゃないかという考えが浮かんだ。
そこからの展開は速く、Lineを交換することは簡単だった。交換したはしたが、特に話す内容もなく一週間がたった。
ある日、いつものように飲んでいたときに友人が
「誰か女の子ほしいな」
「いいやん。誰かおらんかな」
しばらく携帯とにらめっこしていた時に彼女の顔が浮かんだ。
「あ、一人心当たりあるけどどうする」
「どんな子」
彼女のインスタグラムを知っていたので写真を見せた。
「可愛いけど、俺のタイプじゃないんだよね」
「じゃあ、この子の友達誘ってもらったらいいやん」
「あり、そうしよ!」
「ちょっと電話してくるわ」
外の空気を吸ってたばこを吸いながら璃香ちゃんに電話をかけた。するとすぐに電話にでた。
「どうしたん~」
「今、竹田駅の近くで飲んでるんやけど良かったら一緒に飲む?」
「え、璃香も近くで友達と飲んでる!」
「ほんまに!じゃあ璃香ちゃんの友達の許可がでたら一緒に合流しようよ!」
「ちょっと待ってね」
…
…
「お待たせ!友達もいいよって言ってる」
「やった、じゃあまた後でね」
「いいよ~また後でね~」
彼女はすでに酔っており、とても甘えたような声をしていた。
嬉しい表情を抑え、もう一本だけたばこを吸い、店に戻った。
「結果は…」
「…」
「…ダメか」
「ミッションコンプリート!!」
「え、ほんとに?」
「まじ、向こうもこの辺で友達と飲んでたらしい」
「お持ち帰りはありますでしょうか」
「僕たちの腕次第ですね」とバカな会話をしながら残りの酒を飲みほした。
店をでて夜風にあたりながら集合場所のコンビニまで二人で歩いた。
集合時間まで少し時間があったので、コンビニの前に座りながらどうでもいい話をしていると彼女たちがやってきた。
「京介くん、お待たせ~待った?」
「3時間は待った、待ちすぎて疲れた…」
「うそつけ!」と僕の肩をペットボトルで小突いた。
「最近できた店で料理もお酒も美味しいところあるけど、そこでいいかな」
「さっすが~」と冷やかしてきた。
どうやら彼女はかなりできあがっていたみたいだ。
「璃香ちゃんの友達もそこでいい?」
「はい、大丈夫です!」
少し距離があったので、お互いのことを話ながら歩いて店まで向かった。
15分ほどで店についた。
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