第7話 ビギナーズラック?
この世界に来て3日目、好きな子に好きになってもらうために頑張るぞ!
「んじゃ、行ってくるわ! 何かあったらすぐ連絡しろよ〜」
アンリくんは今から仕事に行くみたい。
軍服姿から予想はしてたけど、軍人さんなんだって。
お城で王様を護ってる花形のお仕事をしてるって言ってた。
思ってたより何倍もすごい人なんだなぁ。
「今日はルネがお店番するよ☆」
アンリくんに続いて店に出ようとしたらルネちゃんに止められた。
てっきりルネちゃんもアンリくんと出かけて行ったんだと思ってたけど、残ってたんだ。
と言うか——
「僕も接客したいんだけど……」
ルネちゃんが店番しちゃったら、僕2日目で音を上げて失踪したやつだと思われない?
お客様にすごいと思ってもらうのが遠のかない??
「アンタはこっち」
いつの間にか後ろに居たモコちゃんに服を引っ張られ、工房の方へ連れていかれる。
「がんばれ〜☆」
笑顔で手を振りながらルネちゃんが応援してくれた。
「今日は装備品を調整する練習をしてもらうことにしたから」
「分かった! 頑張るね」
「私が言うのもアレだけどさ、急な予定変更とか嫌じゃないわけ……?」
「嫌だけどモコちゃんが決めた事なら嫌じゃないよ」
「……アンタ、晩御飯何がいい? に対して優しさで何でもって答えてたタイプでしょ」
「う……」
一人暮らしで料理をするようになってから思った。
料理、作るものを考える工程が一番めんどくさいと。
モコちゃんが言うならなんでも良いって思ってたけど、モコちゃんに楽をしてもらおうと思うならちゃんと自分の意志を言った方が良いのかも。
あぁでも、僕の意見とかモコちゃんの発言に比べたら些細な事……いや、そういう考え方はモコちゃんのために辞めよう。
「で、でも、装備品の調整できるようになったらお客様も喜ぶよね! 頑張りたい」
「そ、じゃあ頑張れ」
そう言ってモコちゃんが冊子をくれた。
調整のやり方だけじゃなくて細かくコツとかが書いてあるし、すごくわかりやすい。
「ありがとう!」
——という事で、モコちゃんに大量のボロ布を貰った。
装備品にはステータスと、レア度なんかに応じたレベルが設定されている。
装備品は見た目を弄るとステータスが下がる事があって、ごく稀に上がる事もある。
ステータスが合計で5レベル分下がるとアイテムごと消滅する。
だからビギナーのドールメーカーはゴミ箱からいくらでも拾えるボロ布を使って練習する所から始めるんだって。
すごくしっかり練習しないと。人から預かってる物を消滅させるとか怖すぎるからね。
ボロ布は全部一貫して防御力レベル1だけが付与されてる。
つまり、1個でもステータスが下がったら消滅する初心者泣かせなアイテムらしい。
これで練習したら他の装備品を調整するのはかなり楽な気がするようになるってモコちゃんが言ってた。
頑張ったんだろうなぁ……。僕も頑張ろう!
いじれるようになるだけじゃ意味が無いよね。
出来れば可愛いものにしたいな。
モコちゃんに似合う服を作ろう。
黒を基調に、赤で飾るようなイメージで行こう。
冊子の通りに作業開始!
まず、布をじっと見つめる。そうしたら出てくるステータスってボタンを押した。
表示されたステータスに「見た目の変更」ボタンが有るからそれを押す。
これで作業がスタート。
どこからともなくアイテムが現れるから、それを使って布の色を黒に。
材質を革に変えたらアイテムが消滅した。
「なるほど……これが消滅か」
難しいな。
冊子によると、材質を変えるタイミングとかハサミを入れるタイミング、縫い付けるタイミングとか、ありとあらゆるタイミングがズレるとすぐにステータスが下がるらしい。
布の気持ちにならないと。
もう1回布を用意して、作業スタート。
今度は初めから材質を革に変える。
なんで変わるんだろうとかは考えない。元はゲームだからね。
次に色を……いや、なんとなく切ってほしそうな顔をしてる気がする。
服の完成系を想像したら切るべき場所にガイド線が見えるから、それに従ってハサミを入れた。
革なのに柔らかい布を切ってるみたいにサクサク切れる。流石ゲーム。
『防御力が1上がりました』
「えっなんで」
突然視界の端に浮かんできた文字に困惑した。
ハサミを入れて防御力が上がるって何……?
まぁいいか。そのまま切っていく。
縫い合わせる前に色を変えた方が良さそう。
一旦全体を黒にする。
『寒さ耐性が付与されました』
基準が分からない……。
まぁいいか。糸は見えないんだし黒に……緑が良さそう。
直感を信じて、ガイドラインに沿って縫っていく。
『自己修復が付与されました』
ステータスが上がるのってごく稀になんだよね……?
なんでこんなに上がるの? ビギナーズラック?
怖いんだけど……!
ひ、ひとまず形は出来た。
黒い革製のジャケット。
ポケットに赤いラインを入れる。
中に着るシャツとかスカートとかを作れば完璧。
でも一旦モコちゃんに見せよう!
「できたよ! モコちゃん!」
「早くない!?」
別の机で作業してたモコちゃんが驚いた声を出して駆け寄ってきた。
気に入ってくれたら良いんだけど……!
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