樹神④
◆◇◆
SIDE:ヴィリ・ヴォラント
横薙ぎの一撃を跳ねてかわす。
━━空兎剣ラヴィリス
空中を蹴り、蹴り、蹴り。
後頭部っぽい場所を剣で一撫で。
全然堪えていない様だけど、あたしもなんだかやる気が出ない。
あたしの術はこーゆー時、あんまり強くない。
やっぱりヨハン君にも手伝って貰おうかな…って…
んー?
仲間割れ?
事情を聞きたいけど、ちょ、っと、この!
でっかいのが!
邪魔!
馬鹿!
■
術腕の手首を握り、ぐっと内向きに回す。
「面白い玩具だ」
ふん、とグィルが嗤う。
「俺が死んだ場合、死体は爆ぜる。そして半径50キロルに渡って魔族すら腐敗させる呪いの弾丸を周囲へ振りまく仕掛けを組んである。俺は腐れ果てる貴様の姿を特等席で見させて貰う。まあ行き先は地獄だろうがね。俺も色々してきた。それでもおれを殺ってみるか?きさまがこんな真似してまで焦がれる目的が何かは分からないが、せっかくなら冥土の土産に聞いてやるぞ」
俺がそう言うと、馬鹿な真似を、とやや警戒した様子を見せたので…
「嘘だ、グィル」
と言った。
グィルの目がやや険しくなった。
苛立ったのかも知れない。
「だが……グィル。俺は貴様の術の業前は俺よりも上だと思っている。そんな俺が何も策を打たずに殺し合いの火蓋を切るだろうか?」
俺は指を人差し指を一本立て、にやつきながらグィルへ尋ねる。
まあ切ってしまったんだが、この辺は俺のせいじゃないと思う。
「ヨハン、君の話を聞く事はやめにするよ、今すぐ死になさい」
グィルが指を三本立てた。
その指が俺の方を向けられる前に、俺が人差し指を向ける。
━━爆炎弾
グィルが目を見開く。
だがもう遅い。
指に灯った火種はみるみる内に膨れ上がり、巨大化し、グィルの元へぶっ飛んでいった。
「מַחסוֹם…ッ!」
グィルが何事か呟くと半透明のヴェールの様なものが一枚二枚と展開されるも…やはり遅い。
火球は障壁が形成しきる前に着弾し、大爆発を起こす。
「う、うおおおおお!」
俺の叫び声だ。
ちょっと着弾点が近かった。
交戦中のヨルシカとシルヴィスは一時殺し合いをやめてぽかんとしていた。
まあダメージは与えたかもしれないが…
「ぐ、う…な、なぜ…詠唱は…していなかったはず、だ…」
煙の中から全身を焼けどを負ったグィルの姿がよろよろと現れた。
「していたとも。貴様が間抜けだから気付かなかっただけだ」
爆ぜる 魔 弾 特 行き て そ を 殺き 焦が せ
はぜる ま だん とく ゆき て そ を やき こが せ
ってね…。
詠唱とは時には堂々と朗じ、時には会話に潜ませるものだ。
恐らくグィルは殺し合いが上手くないな?
最初はちょっと厳しいかなと思っていたが、案外いけるかもしれない。
だがもう少し挑発しておこう…。念の為だ。
「グィル、術の業前は貴様の方が上だったとしてもだ。殺し合いが俺より上手い術師はそうはいないぞ。ところで、いつまでエルフェン面してるんだい?別にもう正体を言ってしまってもいいんだぞ。ちなみに、これは余談なんだが、俺が前に殺した魔族もお前みたいに手玉に取れたよ。魔族殺しは楽でいい!人間の様に策を巡らせて来ないからな。その魔族は女だった。四肢を引き千切って揚げてやった!旨かったよ。お前はどんな味がするんだろうな」
魔族殺しは糞大変で二度とやりたくない。
そして魔族を食べた覚えもない。
ただの嫌がらせだ。
◆◇◆
SIDE:ヨルシカ
ヨハンがまともに戦っている所初めてみたかも…
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