日常の一コマからの、煩悶
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ヨルシカと食事をした後は宿へ帰った。
孤児院へ泊って行かないかと言われるが断る。
いくつか整理しなければいけない事があるからだ。
部屋で陰干ししていた草花を見る。
匂いを嗅ぎ、舐めたりしてみた。
違和感はない。
ガワも別に枯れたり変な文様が浮かんだりしていない。
普通の草、花だ。
ただし、本来は冬に生えるのだが。
そして、その冬でさえこれほどどっさりは採れないのだが。
頭の中でやる事を整理する。
1つ、土を採ってくる。
2つ、手紙を沢山書く。
というのも、土壌に手を加えられて……そう、毒の類だったら草花に悪い意味での変異が生じるはず。
でもこれはまだいいのだ。
良くないのは土壌が変異、活性化している場合である。
ちょっと元気がいいくらいならいいんだが、冬の花が夏前に咲くというのは……強大ななにがしかが居るのかな?
ともあれ善性の何かだ。
あるいはかつて善性だったものだ。
かつて善性だったもの……としたのは、正気ならば明らかに植生がおかしくなるような真似をしないからである。
狂を発したか?
余り考えたくない事だが。
とはいえ悪魔とかそういう類ではなさそうだ。
連中だったら植生変化どころか存在変異して木が襲ってきたりしかねない。
もしくは森林が魔域化する。
魔域はやばい奴が張り切りすぎて周囲もやばくなるという現象だ。
ただの森が迷宮化したりする。
まあ森の調査を単独でするのはキリがないし、何かあった時どうにもならないので却下。
そういう時には巻き込むに限る。
何から何まで全部巻き込んでやるのだ。
巻き込む為の手紙の文面を考えなければならない。
これは慎重に筆を付ける必要がある。
仮に何もなかった場合、杞憂だった場合に空騒ぎさせたとして責任を追及されない為に。
そして、やばそうなら国家権力だろうが宗教権力だろうが巻き込むのだ。
ああ、そういえばヨルシカは王家と繋ぎが取れるのかな?
それと出来れば暇な同僚にも手伝って欲しいが……そもそも連中が何処に居るかも知らないので却下。
色々やる事はある。
明日はギルドで資料請求だ。
逸話、伝承の類を調べる。
だがもう今夜は酔いも回ったし寝よう。
おやすみなさい……
■
朝。爽やかな朝だ。
床の陰干ししていた草花を見る。
萎れていない。
加護の類かな?
ウンザリしてきた。
……そうか。
逃げ出すという案もあるにはあるのだ。
あるのだが……。
ヨルシカは友人だから出来るなら見捨てたくない。が、共に逃げるのは無理だろうな。ここは彼女の生まれ故郷だ。
セドクは馬鹿みたいで少し気に入ったので見捨てたくはない。がヨルシカと同じ理由で無理か。
あとは老夫妻だ。
彼らは結構好感を持てる。できれば見捨てたくないが、彼らが逃げるとなれば彼らの子供や孫も一緒だろうし、そうなるとそいつらの友人知人も……
全員半殺しにして無理やり連れだすか?
冗談だ。
うーん。
無理だな。
こういう時はラインを決める。
ここまでやるが、ここを超えれば逃げ出すというラインだ。
このラインがどの位置へ引かれるかは、俺がどれだけ巻き込めるか次第だ。
■
念の為に神殺しの覚悟は決めておこう。
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