君になれたなら
リーア
墜ちる
ドサリ
後方から小さな呻き声と共に音がした。
「あぁ、俺が死ぬのはいつだろう」
ふと呟いた。
俺の住む街、リオスは国境沿いにあり隣国の街、マドレータと交流が盛んだった。
十数年前、ちょっとしたことが原因で戦争が始まったとされている。
ほとんどの成人が戦地へ駆り出され、当時のことはぼんやりとしか記録されなかった。
正直どうでもよかった。
俺には愛国心なんて無い。
俺は殺されるために戦地へ行き、何人も殺した。
ただ殺されるのではなく、スリルを味わって殺されたかたった。
今日も戦地へ行った。
ふと前方に倒れている人を見た。
いや、凝視した。
俺は思考を放棄し、その人の元へ駆けて行き家へ連れ帰った。
幸か不幸か戦線は国境線で、家からは少し離れていた。
小さく息をしていたのでベッドに寝かせ、目を覚ますのを待った。
普段なら家へ連れ帰ることはしない。
単に戦地では珍しい少女だからではない。
寝返りをうった少女の背中に生えている羽が気になった。
数時間後、少女は目を覚ました。
俺は水の入ったコップを渡し聞いた。
「俺の言葉が分かるか?」
少女は水を一気に飲み干しコクリと頷いた。
コップに水を注ぎ、尋ねた。
「君の名前は?どうして戦地にいた?」
水を一口飲み、おずおずと答えた。
「私はエティーと言います…。戦争を終わらせるためです。」
「君は…エティーは何者なんだ?」
俺は困惑した。
少なくとも俺が今まで会った人間とは違う。
恐怖が体を支配する。
「天使です。神からの命を受けて向かっていたのですが、風に煽られて落下してしまったのです。」
俺は震える声で聞いた。
「どうやって終わらせるんだ?」
エティーは少し悲しげな目をして答えた。
「私の身体を捧げて神に祈るのです。簡単でしょう?」
「あぁ、でもそれでいいのか?」
エティーは微笑むだけだった。
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