見習い箒職人珍走記
二郎マコト
プロローグ:憧れというか、初恋
その出来事はまさに「初恋」とも言えるものだった。と思う。
それは親父に連れられて訪れた箒レースの大会での話だ。
箒レース。それは剣と魔法のこの世界において、最もポピュラーなスポーツの一つ。
競技用の箒に乗ったプロのレーサー達が、鍛え抜かれた箒捌きを駆使して、そのスピードを競うものだ。
俺の親父は箒職人だ。その親父が手がけた箒がその有名な大会で使われる、ということで、その大会に特別に招待してもらった時の話。
あの時の衝撃は、今でも忘れられない。
縦横無尽に飛び交う姿。
あんな華奢な体躯でどこにそんな力があるんだと言わんばかりのスピード。
他の追随を許さず、ブッチギリでトップを掻っ攫う姿。
その姿に、その荒々しさに、その可憐さに。
俺の心は奪われた。
気づけば夢中でその姿を追っていたし、そのスピードとパワー、優雅さに惚れ惚れしていた。
その時――――そうだ。俺はその瞬間に初恋を捧げ、憧れたんだ。
これに人生を捧げたい。それほどまでの衝撃と憧れを抱いたんだ。
え? 誰にって? そりゃお前もちろん決まってるでしょうがよ。
縦横無尽に空を飛び、
他を寄せ付けぬスピードを持ち、
ワイルドさを兼ね備えた存在と言えば、
「箒」しかねぇだろうがよ。
今も俺は、あの頃の初恋を胸に抱き続けている。
王都に出て箒職人の見習いなんてやってるんだからそりゃあもう。
その初恋に、人生狂わされてますよね。ホント。
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