最後のデート編

47.一夜明けて!?

「おーい! 起きろーっ!」


「……ん―」


「早く起きなさいっ!」


「……んっ」


俺の寝室の中で、聞こえるはずのない凛津と有里ねぇの声がした……気がした。


まぁ、でも昨日は疲れたし、これくらい寝ても罰は当たらないだろう。


それに、まだ夏休みだし。


俺は開きかけていた瞼を、再び閉じる。


「なかなか起きないわね? んー。それじゃあ……」


「ちょっ!? 有里ねぇ何してるの!」


「なにって、なかなか起きてくれない優太を優しく起こしてあげるための添い寝だけど?」


「ダメっ! 昨日はデートとかして良いとか言ってあげたけど……、その……添い寝とか、……キスとか……とにかく! 性的なのはダメなんだからっ! ……って聞いてるの!?」


「はぁ……優太、私に乗り換えればすぐにそういうことだって……」


「何しようとしてるのよっ!」


だんだんと部屋の中ぎ騒がしくなってきたので俺はたまらず


「静かに寝させてくれ!」


そう言って布団から起き上がったはず……なのたが


「ん?」


なぜか体が持ち上がらない。


「優太、おはよ……」


「って……おい!」


それもそのはず、有里ねぇががっしりと俺に抱きついていたのだから。


さっきからいい匂いがするし、心なしか背中の方に柔らかい感触もする。


「寝坊はいけないことだけど、これはこれで悪くないかも……ねぇ? 優太」


そう言いながら有里ねぇは、より自分の体を俺の体に密着させてくる。


「ちょ……」


流石にこれ以上はまずい……。


そう判断した俺は、有里ねぇを振り払う様に起き上がると……


「優太? 私の事好きなんだよね?」


「りっ、凛津!?」


仁王立ちになった凛津がそこにいた。


「この前私に謝ってたよね?」


「……はい」


「私以外の女の子にドキドキしないって言ってたよね?」


凛津からドス黒いオーラの様なものが見える。


「……はい」


「それじゃあ……これはどう言う事?」


「えーっ、どういう事って言っても……」


朝起きたら、突然有里ねぇがいてすぐ横で寝てた。


これは真実だ。


「起きたら、有里ねぇがすぐそばにいて……それで」


信じてくれないかもしれないけれど、俺は凛津にそう弁明した。


しかし、


「知ってる……だって、見てたもん」


凛津はあっさりと俺の言う事を信じてくれた。


「そっ、それじゃあ!」


「でも……」


「え……でも?」


「でも……それとこれは別! だって、有里ねぇと一緒に寝てる時、優太なんか嬉しそうだったし!」


「なっ! ちっ、違うぞ!? 俺はあの時、夢を見てて……」


「ふーん?」


「ほっ、本当だって!」


「じゃあ、どんな夢?」


「それは……」


「どんな夢?」


凛津がニコッと笑いながらこちらに問いかけけくる。


表向きはとても可愛い笑顔だ。


でも、俺には分かる。


これは威圧だ……。


その証拠に、目は微塵も笑っていない。


「凛津の夢……だよ?」


昨日の、制服姿だった有里ねぇと凛津と一緒に、学校に登校する夢を見た事は本当だし、嘘ではないはずだ。


俺は凛津の方を真っ直ぐと見ながらそう答えた。


「……嘘、ついてない?」


「はい」


「本当?」


「……はい」


「じゃあ、私は何してたの?」


「……」


これは……結局、全部言わないとダメなやつなのか。


そう悟った俺は、素直に


「凛津と有里ねぇと一緒の学校に行く夢を見てた……」


そう言った。


すると、さっきまで凛津の威圧に怯えながらも、依然として俺のベッドに潜り込んでいた有里ねぇが


「私も?」


そう言って起き上がった。


「……うん、3人で」


「へぇ〜っ! それは楽しそうだね! ねぇ、凛津?」


「……そうね」


さっきまで怒っていた凛津はそう言ってから


「くすっ」


なぜか笑った。


「……なんで笑ってるんだ?」


「なんかね……優太はやっぱり、どこまでいっても優太なんだな……って、そう思った」


「それってどういう意味だよ?」


「んー、そのまんま? ねぇ、有里ねぇ?」


「そうだね〜、なんか私も全く同じこと思った」


そう言って有里ねぇまで笑い始めた。


「……一体なんだってんだ」


俺一人だけ、訳の分からない状態でそう呟いていると


「ご飯出来たわよ〜!」


下の階からおばあちゃんの声が聞こえた。


すると、横にいた有里ねぇも、すぐそばに立っていた凛津も


「はーい!」


と言って、


「ほら、優太行こう!」


「昨日は疲れたかもしれないけど、今日は最後のデートなんだから朝ごはんしっかり食べて体力つけてよ!」


俺の腕を引っ張ってリビングの方まで向かっていった。






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