32.もう1人の友達!?

インターホンを鳴らしてからすぐに


ガチャ


と音がして


中から出てきたのは


「優太君と……有里香さんじゃないですか!」


凛津の彼氏だという横川照だった。


それにしても、今の有里ねぇを見て、凛津と勘違いしない辺り、本当に凛津から入れ替わっていることを聞いているようだ。


「……えっと」


突然インターホンを鳴らしておいてなんだが、何を話せばいいのか全く分からない。


俺がソワソワしながら言葉を彷徨わせていると


「じゃあ、お邪魔しま〜す!」


そう言いながら有里ねぇがそそくさと、玄関から家の中へと入って行った。


「ちょ、ちょっと有里ねぇ!」


流石に初対面でこれはまずいだろ……なんて思いながら横川の顔をチラッと見たのだが……


「はははっ……有里香さんは相変わらずですね」


そう言いながら横川はニコニコしていた。


ていうか、今、『相変わらず』って言ってたけど、横川は有里ねぇの事を知ってる……のか?


「あの……もしかして有里ねぇと知り合いなんですか?」


俺がそう問うと、横川は少し間を置いてから


「知り合い……か。優太君は覚えてないんだね……まぁ、そんなところ……かな?」


一瞬だけ少し悲しそうな顔でそう言った。


もしかして、俺は横川と会ったことがあるのだろうか。


そんな事を考えていると


「まぁ! 立ち話もなんだし、優太君も入ってよ!」


いつもの爽やかな笑顔に戻った横川が俺を家の中へと入るように手招いた。


凛津の彼氏、俺にとって今、横川は倒すべき相手……なのだが


「なんか……引っ掛かるんだよな」


「優太君?」


「あっ、あぁ! じゃあ、お邪魔します」


俺はそう言ってから横川の家へと足を踏み入れた。



和風な雰囲気が漂う家の中の、広さ6畳程の和室。


そこに、凛津はいた。


なにやら、窓の方を見てぼんやりとしており、心なしか、その後ろ姿はいつもよりも小さく見えた。


私はしばらくその後ろ姿を眺めていた。


優太達がここに来るまでの間は、声を掛けない方が良いと思ったからだ。


「……」


どうせすぐに優太達もこの部屋に入ってくると思っていた……のだが


それから15分が経っても優太達は、まだ姿を現さなかった。


一体2人で、何を話しているんだろうか……凛津は目の前にいるのに……。


そんなもどかしさからか


気づけば私は


「凛津!」


と声を掛けていた。


「え? なんで有里ねぇがここに……」


そう言って凛津は、すぐにこちらを振り向いた。


やってしまった……と思いつつも、とりあえず


「なんでって……そりゃあ凛津が心配で……」


と話し始めたのだが


「もしかして、優太も来てるの?」


凛津は私の言葉を遮るようにそう言った。


「えっ……と」


ダメだ……まだ優太達が来てないのに、このままだと凛津はここから逃げてしまう。


なんとか足止めをしないと……私がそう思った時、


「あぁ! 来てるぞ」


後ろの障子の扉が開き、優太が姿を現した。


その横には、何故かニコニコと笑っている横川照……いや、私達のもう1人の親友『テル』が立っていた。



俺がその違和感に気づいたのは、横川の家に入ってからすぐだった。


「ここらの家の中でも、内装まで完全に和風な家は珍しいな」


「そうですね、僕のおじいちゃんがこういうの好きらしくて」


「なんかいいな……こういう家」


俺は廊下を通りながら横川とそんな会話をしていた。


「はははっ! 優太君、少しおじいちゃんっぽくなったんじゃないですか?」


「うるせぇ! 俺はまだ17歳ですよ!」


「はははっ! そうか、そうか……優太君も、もう17歳なのか……。時が経つのは早いな……」


「横川さんだって見た感じ、俺とそんなに変わらないのに、親戚のおじさんみたいな事言うじゃないですか」


「はははっ、確かに」


「それに、さっきから何で俺の事を知ってるみたいに……」


俺がそう言うと、そこで突然、横川はリビングの扉の前で立ち止まった。


「あの……凛津のいる部屋に行くんじゃ?」


「……優太君、君に見てもらいたいものがあるんですけど、少しだけ時間をくれませんか?」


そう言いながら前にいた横川はこちらに向き直ってからそう言った。



リビングに入ると、廊下で見た和風な雰囲気とは打って変わり、生活感のある普通の家という感じだった。


「あの……それで見せたいものって?」


「はい……こっちです」


俺は、横川に連れられるまま戸棚の前まで来た。


「この中ですか?」


「うん」


そう言いながら横川はその戸棚の引き出しを開き、ある一つの古いアルバムを取り出した。


「これです」


そう言いながら横川は俺にアルバムを手渡した。


持った感じはずっしりと重い。


すぐそばにあった机にアルバムを置き、横川に促されるまま、俺は最初のページを開いた。

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