17.おうちデート!?②


「よし。餡も出来たし、そろそろ包むか!」


料理をし始めて少しした後、俺達は手早く餃子の餡を作り、今からみんなで餃子の皮を包む所だ。


「ようやく、わたしの出番ね!」


凛津はさっきまで見ているだけだったので張り切っていた。


隣にいる凛津もうんうんと頷いている。


「じゃあ、キッチンも狭いし、俺は向こうで包むから」


と言いながら、俺はキッチンの奥の方へ行こうとしたのだが


「優太! 今日はおうちデートなんだよ? 一緒に料理しないとデートとは言わないよ!」


「えっ? 一緒に料理って、もうしてるじゃないか?」


「だから……そういう意味じゃなくて!」


「一緒にイチャイチャしながら餃子の皮を包むの!」


「……イチャイチャ?」


「そう! イチャイチャしながら!」


「餃子の皮を?」


「そう!」


聞けば聞くほど凛津の言っていることが分からない。


「……嫌な予感しかしないんだけど、一応、俺は何をすればいいのか聞いてもいいか?」


すると、隣にいた有里香も


「私も聞きたい!」


と言っている。


どうやら有里香も知らなかったようだ。


すると凛津は


「ふふん……じゃあ、まずは」


と言いながら


「え?」


突然、俺の両腕の中にすっぽりと入り込んできた。


俺は凛津の事を後ろからハグしている体勢になって……


凛津のすこし甘い匂いが……って!


「おい! 急に何してんだよ!?」


俺は咄嗟に凛津を引き剥がした。


あんな事をずっとやり続けたままだと俺の理性が持たない!


俺が深呼吸をしながらバクバクする心臓を落ち着かせようとしていると


「もしかして……ドキドキした?」


なんて凛津が顔を赤くしながら言うものだから


「当たり前だろ!! 練習とはいえこんなのやられたら俺もドキドキするよ!」


と思った事をそのまま言った。


のだが、


「……」


何故か凛津は俯いて黙ってしまった。


「おっ、おい? 凛津大丈夫か?」


俺が凛津の肩に手を置いてそう呼びかけると


肩に手を触れた瞬間、凛津がビクッとして


「あっ、あの……さ、私もドキドキした……」


「え?」


すると、凛津は勢いよく真っ赤な顔を上げてこちらを見てから


「あっ……あの!」


と何か言おうとしたところで、さっきから黙って見ていた有里香が


「ちょ、ちょっと!!」


突然大声を上げた。


「どっ、どうしたんだよ!」


俺は驚いて有里香の方を向いた。


すると有里香は


「えっ……と……なんかそこに虫がいたから……」


「虫?」


「そっ、そう! あっ……でも、なんかもういなくなったみたい……」


「そう……か?」


初めから虫なんていなかったと思うけど?


「まぁ、それならいいや。 で、凛津は何を言おうとしてたんだ?」


再び凛津の方を見ると……


「ううっ! あと少しだったのに!」


なんて言いながらそこにうずくまっていた。


どうやらいつもの様子に戻っていたのでまぁ大丈夫だろう。


「それじゃあ、今度はちゃんと料理するぞ」


俺はそう言って、ようやく餃子の皮を包み始めた。




「美味しい!!」


「うん、やっぱりみんなで作ると美味しいね!」


「あぁ、そうだな」


あれから一時間後、俺達はさっき作った餃子を食べていた。


どれも美味しいし、文句なしの仕上がりだ。


2人も喜んでくれているし、大成功だろう。


俺がまた一つ餃子を口に運ぼうとした時、


「次のデートはお祭りに行かない?」


と、珍しく有里香がそう言った。


「お祭りって……あぁ! 毎年島でやってる夏祭りか!」


久しぶりにこの島に来たので忘れていたが、この滝島では毎年この時期に夏祭りが開かれている。


島の住人の数も少ないし、あまり盛り上がらない祭りなのだろうと思っていたのだが……


「実はこの島のお祭りは結構有名でね! このお祭りのために島の外からもいろんな人が来るんだよ!」


凛津曰く、そうらしい。


「へー。 そりゃあ盛り上がりそうだな!」


「うん! 実はね、私の学校の友達も当日呼ぼうかな? って思ってるんだ!」


「そうか、それじゃあ楽しくなりそうだな」


俺がそう言うと、祭りに行く提案をした有里香は


「そっ、そうね! 凛津は友達と遊ぶんだったら……って! あれ? 今は、私が有里ねぇってことは!?」


「ふふふっ!」


2人の間に俺の見えない争いが繰り広げられていた。


「ちなみに、そのお祭りはいつなんだ?」


「明日だよ?」


「はっ!? 明日!?」


急すぎて、思わず俺は聞き返した。


一方で驚いている俺とは対照的に2人は平然としているようだった。


「じゃあ、俺は明日……」


そこまで言ったところで


「「私とお祭りを一緒に回るの!」」


凛津と有里香がほぼ同時にそう言った。


「いや、でも凛津は友達来るんだろ?」


「そうだけど……うーん。じゃあ、仕方ないけどみんなで回らない?」


「みんなでか……。ちなみに凛津の友達って何人くらい来るんだ?」


「えーっとね……13人!」


「いや、多いよ!!」


「来る予定だったんだけど、みんな予定があったみたいで来るのは4人!」


「初めからそう言えよ!」


まぁ、4人でも少し多い気がするけど……


「まぁ、優太もすぐ仲良くなれると思うよ! 優太より年上だけど全然そんな感じしないから!」


「え? 俺より年上なの?」


どういう事だ? 


凛津は今、中3で連れて来る友達は俺より年上?


それって……


「彼氏?」


「ちがぁ〜ぅ!」


なぜか有里香がそう言った。


それから少ししてから


「あ〜! そう言うことか。 凛津と有里香は同じ中高一貫校に通ってて、2人の共通の友達ってな感じか」


「そう! 友達!!」


と有里香がうんうん頷いている。


「そうだよ〜! てか、そもそもここに来る4人は全員女の子だよ?」


「……え?」


今、凛津とんでもないこと言わなかったか?


「えっと……来るのって全員女の子なの?」


「うん」


「男は?」


「いないよ? だって、ウチ女子校だもん」


「……。 俺は一人で家にいるよ……」


聞いてないぞ! 


男、俺1人なんて拷問じゃないか!


どうしろっていうんだよ!


「え〜!! 行こうよ!!」


俺がそんな葛藤をしているとは知らずに凛津は頑なに俺を祭りに行かせようとしてくる。


「いや……だからさ。 女の子6人と男、俺1人だろ?」


「うん」


「ダメだ……」


「えーっ? じゃあ男の子連れてくればいいの?」


「……まぁ、1人じゃないなら、まだいいかな」


「よーし! それじゃあ誘っておくから行こうよ!」


凛津はそう言って再び俺にそう言った。


有里香はどうなんだ?と、思って有里香の方を見ると……


「だっ、だめよ! ライバルが余計増えるじゃない! いや……でも、ライバルがいた方が私の事を意識しやすくなる?…………」


なんてブツブツ言っていた。


まぁ、有里香も嫌がっては無さそうだし、


「じゃあ、行くか!」


俺はそう言って再び夕食を続けた。












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