俺の好きだった姉ちゃんのような幼馴染と俺のことを好きだと言っていた妹みたいな幼馴染の体が入れ替わってから始まるラブコメ

及川 秀

再会と2人の初恋編

0.プロローグ

《ルビを入力…》「ただいま〜」


俺が家に着くと、おばあちゃんは夕飯の支度をしていた。


香ばしい焼き魚の匂いと炊き立てのご飯の香りが鼻をくすぐる。


優太ゆうた、おかえり。そろそろご飯できるから椅子に座っててね」


「うん」


俺は言われた通り、席に着いてから


「そういえばさ、昨日から気になってたんだけどなんで凛津もここに泊まってるの?」


ずっと気になっていたことを聞いた。


凛津りつのおばあちゃんは近所だし、わざわざうちに泊まる必要はない。


それならば一体なぜ、凛津はあんなにも不機嫌だったのにうちにいるのか……考えれば考えるほど分からない。


「あぁ〜そういえばその事まだ優太に言ってなかったわね」


すると、おばあちゃんは俺の質問に対して


「実は凛津ちゃんがこの島に来るって言い出したのはついこの前なのよ。たしか優太が島に来るって事を凛津ちゃんのおばあちゃんに話したちょっと後だったかしら?」


コンロの火を止めながらそう言った。


どうやら、凛津が突然この島に来ることになったから色々バタバタしていたらしいということは分かった。


「それで?」


おばあちゃんはそのまま話を続ける。


「それで凛津ちゃんのおばあちゃんがね、どうせ結婚するんだったら早い所同棲したほうがいいんじゃない? って」


「へぇー……って! えぇ〜〜!!」


急展開すぎる。


俺は驚くあまりに倒してしまった椅子を起き上がらせながら


なんで突然結婚するとかいう話になるんだよ!!


てかおばあちゃんそれでOKしたの!?


てか凛津も断れよ!!


頭の中で色々な事を考えているとおばあちゃんは畳みかけるように話を続ける。


「私もできるならひ孫の顔見てみたいし?」


そう言いながらおばあちゃんはこちらを見てキラッとウィンクした。


「なんなら優太も高校生だし? 色々凛津ちゃんに思うこともあるだろうし?」


キラッ


あっダメだ。


この婆さん、頭おかしくなっちゃってる。


俺はそばにあったスマホを手繰り寄せて


おばあさん、おかしくなった と検索をかけながら


「……ちなみに凛津はこのこと知ってて、ここに泊まってるの?」


そう聞いた。


「もちろん!! 知って…………るわよ?」


『知って…………』の間は何なんだよ!


絶対なんにも言ってないやつだこれ……


「はぁ……」


俺はため息をついてから


「じゃあなんて言って凛津にここに泊まらせてるの?」


この婆さんの事だ。


きっと、とんでもない事を言い出すに違いない。


どんな事を言っても俺は驚かないぞ!


俺は半分意地になってそう思う。


「優太が……」


婆さんの口が動き出した。


さぁ。どう来る……。


「一緒に暮らしたい! って言ってたわよって言ったら」


「おい!」


俺はおばあちゃんの言葉を聞き終える前に、そう叫んでいた。


さっきの宣言は無しだ!


この婆さんの底がしれない……まるで、やっとのことでラスボスを倒した! と思ったのに、後ろからやってきたさらに強そうな奴が『実は俺がラスボスです』といってくるような……そんな絶望感だ。


それを踏まえて、俺はここに来てからの凛津の行動を振り返る。


もしかして、いや、もしかしなくても……


だからなのか……? 


凛津の態度が変だったのは……。


だとしたら……


「俺が全面的に悪いじゃないか!!」


俺は再び椅子から立ち上がる。


「わっ! 優太、突然声上げてどうしたんだい!」


ごめん何でもないと言いながら俺は椅子に座る。


次会う時が気まづくてしょうがない……どうすれば……。


そんな事を考えてると


ガチャ


玄関のドアを開けた時の音が聞こえた。


おぉ神よ……私を救い給え!


俺は早々に言い訳するのを諦めて十字架を切る。


ガチャ


次はリビングの扉が開かれる音


直後、諦めかけていた俺の脳内が高速で回転を始めた。


そっ、そうだ!謝ろう!!俺が変なこと言って悪かった!(俺は何も言ってないけど)一緒に暮らすなんて嫌だったよな?すぐ荷物運ぶの手伝うから! って言おう!


などと考えながら、開いていく扉を見る。


「っ!」


扉がひらかれ、そこには凛津が立っていた。


「ごめんっ! 俺、一緒に暮らしたいとか変なこと言って!」


俺はジャブ代わりに、まずは軽く謝る。


凛津は呆然と立ち尽くしている。


これは……効いてるのか?


「よっ、よおしっ! 荷物!! 荷物運ぶの手伝うよ!」


俺はそう言いながら凛津の部屋へ向かう……が


「ちょ、ちょっと待って!!!」


凛津の声がリビングに響いた。


「どっ、どうした?」


やはり怒っているのだろうか……。


またみぞおちに一発喰らうかもしれない。


覚悟を決めろ! 


月島優太!


俺は自分にそう言い聞かせた。


「いっ、いいぞ! 殴れ!! さぁ!」


俺は体を凛津の方へと突き出す。


「いや!! そうじゃなくてっ!! 聞いて」


「うん……」


まさか……キックなんて甘いものじゃすませる訳ないだろ?


このハゲタコが!


そういう意味だろうか。


俺はオドオドしながら静かに凛津の言葉を待った。


「あっ、あのね……私……全然怒ってないよ? 優兄ちゃん。だって私、優兄ちゃんのこと大好きだもん!」


「…………は?」


今、優兄ちゃんって?


いや、『このハゲタコが!』の聞き間違いか?


「あのさっ、聞き間違いかもしれないからもう一回言ってくれないかな?」


俺はこれから酷い目に遭わされる覚悟を決めながらそう言った……のだが


「えっ!? そんな恥ずかしい事もう一回言わなきゃダメなの? もーぅ! 優兄ちゃんは仕方ないなっ!!」


「いや、やっぱりいいや……」


どうやら聞き間違いではなかったらしい。


一体どうなってるんだ?


凛津の方を見ると、顔を真っ赤にして本気で恥ずかしがっているようだった。


「あのさ……凛津。何かあったのか? 昨日と随分様子が違うし……」


「えっ? りっちゃんってこんな感じじゃなかったっけ? おかしいな? 私の知ってるりっちゃんはこんな感じだったんだけど……」


「何一人でブツブツ言ってるんだ?」 


ビクッ!!


「いやっ! こっちの話だよ〜!!」


ますます謎が深まる。


すると


ピンポーン


と、またチャイムが鳴った。


おじいちゃんが帰ってきたのかな?なんて思いながら玄関のほうへと向かう。


すると、なぜか凛津も一緒についてきた。


ピンポーン、ピンポーン 


「はいはい。今開けます」 


俺は少し駆け足で玄関のほうまで行き、ドアを開けた。


その瞬間……


ムギュッ! 


「えっ?!」


隣にいた凛津が突然、俺の腕に抱きついてきた。


ガラララっ


「おいっ! 凛津!! なんで急に抱きついてきてんだよ!!……って有里ゆり……姉ちゃん!?」


「……」


扉を開けると、玄関の前には有里姉ちゃんが立っていた。


だが、何か様子がおかしい。


「何かあったの?」 


「……」


「有里姉ちゃん?」 


俺が再び有里ねぇちゃんに呼びかけると、急にハッとしたかと思えば……体をワナワナと震わせて


「っ! ……私のっ……私の体でっ! なにしてるのよっ!!!」  



真っ赤な顔で有里姉ちゃんが凛津をビシッと指指して叫んだ。


一方で凛津はというと……


「んふふふっ!」


なぜか、めちゃくちゃ嬉しそうだった。


「あのさ……有里姉ちゃんどういう事?」


「そっ、そいつはっ!!…………」


そこまで言いかけると、なぜか俯いてから黙ってしまう有里姉ちゃん。


「本当にどうしたの?」


俺がそう言いながら有里ねぇのそばまでいくと


ムギュッ! 


「え?」


突然もう片方の腕に柔らかな感触が……って!


「ゆっ、有里姉ちゃん!?」


俺はそう叫ぶので精一杯だった。


「そっ、そうよっ!! ……わたしっ! 今、有里姉だしっ……? 別にこんくらいのスキンシップは普通にやる……よね? ……優太?」


真っ赤な顔で俺を見ながら有里姉ちゃんが俺の空いている腕に抱きついていた。


「ちょ、ちょっと!? 有里姉ちゃんまでどうしたんだよ!!」


今、俺の片腕には凛津が、そしてもう片方の腕には有里姉ちゃんが抱きついている。 


そしてさっきから、両腕にムニュムニュした感触がして……。


ヤバい。


頭が追いつかない。クラクラしてきた……。


「あぁ……これ……夢だろ。勘弁してくれ……」


目が回ってきた。


バタンっ


俺は両腕に捕まっていた2人が何か言い合っているのをぼんやりと眺めながらそのまま床に倒れ込んだ。

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