世紀末な凶悪顔だからと追放されたけど、実はギルドを支える影の実力者。だから嬢ちゃん、今更戻れっても実家だっての!《ギラッ☆世紀末兄弟》
和三盆
第1章 神か悪魔か。田舎町に現れた最凶の男たち
第1話「悪行っつったってなー」
「アニー、オットー。あんたたちはギルド追放よ! この犯罪者!」
突き付けられた、ギルドからの容赦ない突然の処置!!!!
あまりのことに、現場であるギルドホールに居合わせた一同は言葉を飲んだ。いや、いまいち飲み込めていない。
「ハァ? 何言ってんだ嬢ちゃん。寝言か?」
「嬢ちゃんじゃない! 私は成人済みで、ここの副ギルド長よ!」
声を張り上げる、少女にしか見えない金髪の女。
対するは、今現在追放処置を突き付けられている二人のハンターの片割れアニーがテーブルについたまま、ツルツル頭をさすりつつその世紀末のような強面を歪ませ鼻で笑う。
「副ギルド長
「うるさいわね! 見習いだろうと、権限はあるんだから! とにかくアニー、オットー、あなた方は追放です」
言われたアニーが、弟であるオットーを振り向けば、鋲つき肩パットを装備した肩をすくめながら世紀末ヅラを横に振って応えた。
「そもそもなんで追放なんだ? 犯罪ってのは聞き捨てならねーな。俺たちなんにもしてねーだろ」
「なんもしてねーですって……オットー、あなたよくそんなことが言えるわね!」
「は?」
「これです!」
副ギルド長がギルドホールのテーブルに叩きつけたのは紐で綴じられた紙束で、表紙には “アニー、オットーの恐喝ならび迷惑行為に関する調査書” と書かれていた。
アニーが「へー。どれどれ」と手を伸ばす。
「触らないでください!」
「ならなんでここに叩きつけたんだよ」
「う、うるさい! とにかく、当ベルクカーラハンターギルドのギルド会員への調査をまとめた資料です。新人ハンターへの恫喝。新人ハンターの依頼の横取り。新人ハンターへの暴力行為。拉致監禁。あなた方のありとあらゆる悪行がここに記されているわ」
「悪行っつったってなー」
「言質は取れているんだから。たとえば……この新人ハンターらの証言では、ハンター申請の受理直後、アニーとオットーが彼らを恫喝。強制的に依頼を押し付け、裏取引のある武具屋で高額な装備品を買わせ、女性ハンターにセクハラ発言」
「いつもやってるアレか」
「そうだな兄貴。いつものだ」
「他にも、この女性ハンターは下卑た笑みで近づき、足や胸を嘗め回すように見た上でのセクハラ発言。無理やりどこかへ連れ去ろうとしたと」
「ああ、あの女か」
「あれは残念だったな。もっと強く迫るべきだった」
「あなたがたッ……そんな報告が複数。中には脅されたあげく舎弟になった者もいて、同様の迷惑行為に及んだという報告もあります」
「人徳のなせる業だぜ。なぁ兄貴」
「俺らの男気、わかってもらえたんだな。ガハハハ」
「ガハハハじゃないわよ!」
少女……いや、副ギルド長見習いがバンとテーブルを叩く。
「あなた方の行為はまさに犯罪よ。よって副ギルド長権限によりあなた方をギルド追放処置とします!」
すると他のハンターの男が声をかけてきた。
「副ギルド長見習い、ちょっと待ってくれ。アニーとオットーに限ってそんな」
「あなた、庇い立てするんですか? つまり彼らの犯罪に加担しているということですね」
「無茶苦茶ってもんだぜ。そもそもその犯罪ってやつが本当か、もっと調査を」
「調査はこの通りよ。いい、これ以上口をはさむなら、あなたも追放処置よ」
「そりゃ横暴ってもんだ!」
「おいレッズ、そこまでだ。その気持ちだけで十分だ」
アニーはレッズと呼ばれた中年のハンターの肩に手を置くと、のっそりと立ち上がった。
「いわれのねぇ処置で追放なんざ受けるつもりもねぇ。だが、これ以上このもめごとで皆の仕事の手を止めさせるわけにはいかねぇ。おい、オットー。帰るぞ」
「ああ、兄貴」
剃髪、強面、鋲つき革ジャンの二人が連れ立って出口へと向かう。
「待ちなさい、話はまだ!」
「これのことか?」
アニーが首にかけていた金色のハンタータグをギルドの床へと放り、オットーも続く。投げつけられたそれに、副ギルド長見習いが詰め寄る足を止めた。
「じゃあな、お前ら。しばらく達者でな」
アニーは片手を上げるとギルドを出て、オットーとともに砂塵舞う街の雑踏へと溶け込んだ。
……いや、そんなに溶け込んでない。その外見は随分目立つし、道行く人がみな避けてる。
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