第3話

最寄りのカフェに駆け込めば、双子はもう到着していた。

周りはハートが飛びまくった女子たち。

虎視眈々と声をかけるタイミングをはかっている。



「ご、ごめーん」


『大丈夫?いろは』



電話や家ではねーちゃんと呼ぶのに、外で会うと名前で呼ばれる。

恥ずかしいらしい。

走って乱れた髪をらいが直してくれる。本当に器用だわこの子。

目の前に出されたアイスティーと軽食のサンドイッチをありがたくいただく。



『どうせ食べてないかなって』


「さすが」



5分ほどでそれらを食べ、手渡された菓子折りをありがたくいただく。

お金は家に帰ってからだ。



身だしなみを軽くチェックし、ツインズのオッケーサインをもらったら速やかに会社に向かう。

そこからはもう謝罪・謝罪・謝罪。



「大変申し訳ありませんでした」


「こまりますよ、本当に」



目の前の社長は困った顔をされている。

それもそうだ。こちらの落ち度なのだから仕方ない。


ただ何より、社長がお若い。

これにはこちらとしてもかなりの驚きだ。


同僚が一人で行きたがったためにてっきり女社長かと思ったがそうではないらしい。

なにか他の理由があるのだろうけれど…。



「本当に、申し訳ございません」



ただ、どこかで見たことあるんだよなぁ。

頭を下げる前にちらりとみた顔はどこかで見たことのある顔で、のど元まで出かかっている記憶がでてこない。



「ひとまず頭を上げてください」


「申し訳ありません、お詫びの品としてお持ちしました」



ツインズが作ってくれた菓子折りを渡せば、社長が少し静止した。

周りにいた役員たちも不思議そうな顔で社長の様子をうかがっている。


これはまずいことをしたか?


役員たちは徐々に私を吊るし上げる準備をはじめているようだし…。



「これ!!有名店の!!ディオスクリの!!」



役員たちが口を開きかけた瞬間に、社長が嬉しそうな声を上げた。


あれ、これいけるかもしれない?



「お気に召していただけましたか」


「俺甘いものだいっすきなんです。でも今日はお休みでしょう?ディオスクリ」


「そこまで把握されていると…、ごまかせませんね…。私の身内の店でございまして」


「ええええ!すごい!ツインズのお姉さんかなんかなの?神さんって」



役員たちはなんとかしようと考えているようで、思わずちらりと視線を向ける。

それを社長は目ざとくみつけ、にっこり笑顔を浮かべられる。



「あ、下がっていいよ。あとは僕が話をつけてしまうから」



その笑顔はとても言い返す雰囲気を与えてもらえず、非常に怖い。

この社長かなりのやり手かもしれない。


役員たちが下がった後、残ったのは秘書らしき男性と社長、私だけ



「ねぇ、神さん。一緒にお茶しよう!」


「紅茶を入れてまいります」


社長の笑顔とそういって部屋から出て行った秘書さんの有無を言わせない空気に、うなずくしかなかった。

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