第2話
ついにソフトの発売日ということで、有給取得者が目立つ会社。
かちかちといつものように仕事をこなしていく。
当たり前だが、有給取得者は自分の仕事を終わらせて取得しているはずだった。
が、約1名のバカが盛大にやらかしていた。
今日中の仕事を終わらせず、なんなら前日の仕事も放置したまま帰宅しており、ひどい有様。
連絡をしようにも電話に出ず、しまいには着信拒否時に流れるアナウンスが流れた。
「……はぁ…社長、だめです。この電話はお客様の都合によりお繋ぎできないそうです」
「…あほめ」
同僚のあほは営業職で、ぎりぎりの成績。
それをフォローしていた私もあほだった。
今回の取引先は一人で行きます!!というから、ついに成長したのかと思ったがそういうわけではなさそうだ…。
「この仕事さくっと終わらせて謝罪にいってきます…」
「…うむ、あいつ、解雇するわ」
「そうしてください…」
約束の時間を過ぎることを先方にひたすら謝り倒して、なんとか17時までにお伺いさせていただくことをお許しいただく。
先方の会社まで電車で20分。
間に降りて菓子折りを購入するとして…いや、ここは奥の手だ…。
この会社、よく知らないけど周りがざわつく程度にはなかなか有名なのか勢いがあるようだし、そうしたほうがいい気がするという単純な勘だけど…。
「もしもし?れいちゃん?」
私用電話になるかもしれないが、先方に謝罪するためだ仕方ない。
というか文句なんて言わせない。
スマホを取り出しイヤホンを片耳に突っ込んでから書類に目を通し修正しながら仕上げていく。
周りの人間もさわらぬ神にたたりなし、と言わんばかりに目が合わない。
「ん?ねーちゃん、なしたの」
「ごめんねー、急に。らいちゃんもいる?スピーカーにして一緒に聞いてほしいの」
「らーい、」
『スピーカーしたよ』
「ありがとう」
『ねーちゃん、なした?』
「いやー、ちょっとあほがね」
『あほ?ああ、あのあほが何かしたの?』
双子からもあほ呼ばわりされるほどに、役に立たないあほな同僚だったことはお分かりいただけただろう
まじ次あったら殴る。
「あほがあほなことしたの。ねーちゃん、先方に謝りにいかなきゃいけないのね」
『なんでねーちゃん?』
「あほが着信拒否したから」
『あぁ』
「でね、身内権限使っちゃって本当に申し訳ないんだけど、れいちゃんとらいちゃんに菓子折りをみつくろってほしいの」
なぜ双子に、というのも、れいとらいは最近人気が出てきたケーキ屋のパティシエ。
隠れ家のようにこっそり、週3日しか開けないという状態でひっそりしていたのだが、このご時世、ブログやSNSであっという間に広まってしまい、双子イケメンパティシエのお店として超人気だ。
開店当初はあったイートインスペースは即刻封鎖したぐらいに。
頑として週3日しか開けないのは、それで稼げてしまうことと。
そもそも親の遺産で稼ぐ必要がないこと。
なにより、『趣味程度にとどめておきたい。というか俺たちはねーちゃんの喜ぶ顔が見たいだけ』というもの。
『かまわないよ。俺ら今日は休みだから』
「ありがとう。でも先方さんの好みがわからなくて」
『うーん、どこなの?相手』
どこまでもシンクロ率すごいなぁとわが弟たちながら感心する。
顔もそっくり。そしてイケメン。ねーちゃん、鼻が高いよ。
「えぇっと…株式会社PDworldってとこ、知ってる?」
『…ねーちゃん、しらないの?』
「うん、わかんない。けど、それで何か好みがわかるならごめんだけど、調べて!私あほのフォローで書類が壊滅的なことに気が付いたから」
『おっけー、じゃあ何時ごろどこに行けばいいのかまた連絡頂戴ね!』
そこからお昼休憩なにそれ、な状態で仕事を進める。
無事に書類を完成させ、印刷に回せば10分ほどで印刷が終わるだろう。
その間に会社のある最寄のカフェに来てほしいことを双子に連絡。
出かける準備をして、印刷したての書類を持ってタクシーに飛び乗った。
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