アンラッキー7

神村 涼

アンラッキー7

 7月7日の真夏日、灼熱の太陽よりも熱気を、帯びている場所があった。建物の前には開店前から長蛇の列が並んでいる。車越しから見える景色に、異様さを覚える。


 なんでそんなに人がいるのかって? それはパチスロ店の周年で、特定日というやつだからだ。所謂、お店側が遊戯者に還元する日。つまりは、遊戯者が勝ちやすい日と言う訳だ。


 特定日には当然、その道のプロや軍団と言った輩が多く集う。その人達が集まるという事は、それなりには熱くなれる日で間違いないのだ。


 店舗に入る前に、運試しの時間がある。それは抽選というやつで、開店時に入場する順番を決めるものだ。入場する順番が若い程、打ちたい台を確保しやすい。プロと言われる人達は、この抽選時に人を雇ったりする程だ。


 早速、抽選の順番が回って来た。前から1番、2番……7番目、良い番号を引けた。


 開店まであと7分。じんわりと汗が滲みだす。並んでいる人達の熱量が外気と混ざって揺らめく。まだか、まだかと逸る気持ちを押える。


 「いらっしゃいませー!」


 店員の呼び声と共に入場が開始した。人がぞろぞろとアリの行進を始める。パチスロ店の入り口へ吸い込まれるように、程無くして行列は無くなった。


 入店から2時間。熱気は次第に上がっていく。額の汗が止まらない。このひりつく感じ、胃液が上ってくるのがたまらない。まだ、始まったばかりだ。ここからが勝負所だ。


 あっという間に、熱気は最高潮に達して、腹も減ってきた。熱が籠り過ぎたのか、頭痛もしている。ああ、喉が渇く。でも、まだだ。早く来て! 来い! 来い!


 西日が差し掛かる頃、パチスロ店を去る客が増えて来た。気が付くと、いつの間にか汗も止まっている。もうここから、動けない。でも、まだ望みはある。ここから捲れた事だって経験済みだ。今日は特定日。年に一度の激熱の日だ。後はただ祈るだけ……。











 「早く来てよ。お母さん……」

 

 

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アンラッキー7 神村 涼 @kamira09

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