第5話 レッツ外出準備
早速学校の先生みたいなメンタルケアをした後は、
互いに同じ釜の飯を食い、交流を深める時間になった……要は、ランチタイムである。
とはいえ、こっちは彼らの関係の中では新参者。
そうそううまく話に入れるはずもない。
「ドラゴン!? そっちの世界ドラゴンいるの!?」
「そーだよ。え、もしかしてこっちにはいないの?」
「よくもまぁそんなに目を輝かせるもんだ。
ドラゴンなぞ移動手段と非常食としてありふれたものだというのに」
……私は自分のオタクメンタルを侮っていたようだ。
異世界の話、しかも実際にそこで生活している面々の話という貴重な時間に、
ついうっかりツッコミを入れてしまう。
「そういえば、一木はさっきの機械は解析できたの?」
「……それが、複雑すぎて見えていないんだ。
なにか雷撃魔法の気配と、その力を冷たさに変換する? ような物体は見えるんだが……」
「あー、雷撃魔法かぁ」
流石に冷蔵庫に雷撃魔法かましたら一撃で壊れるわ。
どうやら全く関連知識のない物体の完全な解析はできないようだ。
「えっと、ミヤビさんはその機械の作り方がわかるんですか?」
「ちっとも。けど、その「冷蔵庫」って機械が電気…雷っぽいもので動いているのは正解。
うーん、解析眼でできることが限定されるとなると、
三国なかよし計画に支障が出るかもねー」
その言葉に三人の目線が一瞬私に集中する。
なんだよ、憐れむような目でこっちを見るからにはなにか理由があるんだろうな?
「いやー、色々察しが良すぎるから怖かったけど、ミヤビちゃんネーミングセンスはダメダメなんだねー」
「言わないで。オタクをこじらせるとみんなこうなるのさ……」
「オタク?」
「じきにわかるようになるよ」
ほら、かっこいいの色々考えては没にして最終的に一周回って着地することってあるよね?
着地地点がたとえ南国の孤島みたいな辺鄙なものだったとしても、
そこにいたるまでのプロセスはうんたらかんたら。
「それじゃ、少し実験してみますかね」
「実験?」
「いい? 管理者権限/アドミン使ってとりあえずのルールを決めます」
管理者権限、の言葉に一同がピリッとなるが、そこまで大したことはしない。
ただ、乗りかかった船で私が協力しやすくするために縛っておく必要が有るだけの話だ。
「まず、勝手な外出はしばらく禁止とします」
「え~!?」
「最後まで聞け三崎。
しばらくは慣れてもらうために一人ずつ連れ回します。
外出するときは私がその場で指定する例外や緊急事態を除き私から離れないこと。
異世界由来の能力も色々あるだろうけど、それも当面禁止。
情報収集用に魔眼は使っても使わなくてもいいけど、むやみに一般人にケンカふっかけたりしないこと。
それを守ってくれるなら、私の予定が許す範囲で社会勉強に協力します。
オーケー?」
とりあえず三王子に話を振ってみると、一木が律儀に片手を上げた。
「ちょっと待った」
「何かな一木くん」
「管理者権限ってことは命令だろうが。
俺たちに同意を求める必要はあるのか?」
うーん、さすが王子様。ここらへんの意識は薄いのかもしれない。
「逆に聞くけど、同意のない命令になにか意味ってあるわけ?
命令を理解していなければそれに従って動くこともできないわけだけど」
これは私の安全を保つための実験でもある。
正直管理者権限とやらがどのような効果を発揮して、違反した結果どういうことになるのかがわからない。
命令を理解していないから勝手に動いていいよね?
とか言われて困るようではこの能力は使い物にならない。
「それもそうだな……俺は理解した」
「よろしい。二条くんと三崎は?」
「わかりました」
「わかった!」
よし、とりあえずは大丈夫そうだ。
「ところで、連れ回すと言いましたが、どこか当てはあるんですか?」
「まずは二条くんからにしようと思ってたからちょうどいいや。
君には私と一緒に「図書館」に来てもらいます。
一般人でも行ける書物庫ってイメージだね」
「そんなところがあるんですか!?」
「うん。そこで君にはある分野について勉強してもらいます」
「分野……」
正直私は「理解眼」を正確に理解しているわけじゃない。
だからまずはどんな事ができて、どういう成長を見込めるかをチェックしたいのである。
「君にはゲームについて勉強をしてもらおう」
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