美人の税金 

まりう

第1話

 むかしある港町にとても美しい顔立ちをした女の子が産まれました。

 女の子は馬子と名付けられ、お金をたくさんかけてもらいすくすく成長しました。

 幼稚園の頃から、お父さんに、兄と姉と一緒に百貨店に連れていってもらい、ここからここまでぜーんぶ。と言って、欲しい服を全て買ってもらい、後日おうちに届けてもらいました。


 お買い物が終わった後は、レストランで好きなものを好きなだけ頼んで食べ、おなかがいっぱいになると、たくさん残して帰りました。

 優しいなんでも望みを叶えてくれるお父さんが大好きでした。

 小学生になると、週に九個の習い事をしました。お母さんは仕事や、趣味で忙しく、お手伝いさんが家に居て、学校から帰ると、軽食を食べさせ、お弁当を持たせて送り出してくれました。

 お友だちと遊ぶ時間はありませんでしたが、それが当たり前だと思っていました。

 ところがある日、馬子の11才のお誕生日会を開いてくれることになりました。

 おともだちがうちに来るなんて。 馬子の心は舞い踊りました。

 当日、テーブルには溢れんばかりのご馳走とジュース、フルーツ、お母さんが活けたお花が並びました。

 お友だちがおめかしをして、プレゼントを持って来てくれました。

 ケーキを食べ終えたあと、馬子の部屋で遊びました。

 クローゼットに沢山の洋服。本物のりかちゃんみたい。とみんなが褒め称えました。

 飼っていたインコを見たいと言うので、カゴから出して見せました。

 馬子がトイレに行き、帰ってくると、インコがぐったりして、カゴの中に落ちていました。

 どうしたの。と聞くと、なんにもしてない。といって、お友だちはみんな帰ってしまいました。

 泣きながらお母さんのところへ行き、理由を話すと、わかった。部屋に行ってなさい。とだけ言われました。

 その夜、お父さんが二羽のインコを買ってきてくれました。

 

次の日からお友だちは誰も話してくれなくなりました。


 中学は姉と同じ私立の学校に行きました。

 可愛いセーラー服、電車通学なので、毎日たくさんの男の子に話しかけられました。

 ある日、先輩に呼び出されました。

 お前生意気なんだよ。ヤキいれてやろうか。

と顔をゆらゆらさせながら言われました。

 馬子は、どうぞお好きに。と低い声で言いました。

 すると頭が、お前気に入った、仲間にしてやる。と言い、馬子は久しぶりにお友だちができました。

 スカートがどんどん長くなり、かばんはどんどん薄くなり、中には鉄板が入っていました。

 この頃、お父さんが大腸の病気になり、入退院を繰り返していました。

 弱っていくお父さんを見たくなくて、馬子は家に帰らなくなりました。 

 たまに、家に帰ると、母は泣きました。兄と姉は汚いものを見るように避けました。

弟と妹は部屋にこもり、出てきませんでした。

  

 そんなとき、お父さんが死にました。


 ある日、少し年上の男前な昭彦が集会に来ていました。

 二人はすぐに恋に落ち、馬子は妊娠しました。

 妊娠した、結婚したい。と昭彦と一緒に実家に帰り、母に告げました。すると母に頬を叩かれ、止められました。

 馬子と昭彦は走って逃げました。

           

              つづく

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