2つの勇者パーティーを追放された太っちょ勇者 〜脂肪蓄積•脂肪分解スキルで敵を倒していたのに誰も見ていなかった。追放は契約書を交わしたから問題ないけど、異世界には大きな問題が発生していた〜
いそゆき
第1話 最初の追放
サングラニト王国の首都サングラニト。
その貴族街にある屋敷の一室で、私、マルティナ•プリズムは大事なことを伝えようとパーティーメンバーを集めていた。
因みに、「私」とか言ったり、名前が「マルティナ」だったりするが、私はれっきとした男だ。
ふぅー
今日の戦闘のことを思い出し、深く息を吐いた。
本当に危なかった•••。
サポーターでありながら、私と一緒に最前線でフォローしてくれていたアーロン。
今日、あと1秒でも私が防御するのが遅れていたら、アーロンを失う所だった。
アーロンはサポーター。
戦う力はない。
そろそろ、パーティーメンバーとしては潮時だ。
彼次第だが、今後は私の家で身の回りの世話係として、迎え入れたいと思っている。
ふぅー
私はもう1度深く息を吐くと、優しくアーロンを見つめた。
「アーロン、本当に申し訳ないが、今日限りでパーティーから追放としたい」
アーロンは追放と言われたにも関わらず、キラキラした瞳で私を見ていた。
「それで、もしよければだが、今後は私の•••」
「ちょっと、お待ちになって!!」
「勝手に話を進めないで下さい」
アーロンの瞳が更に輝きを増したその時、それまで黙っていた他のパーティーメンバーであるミーシアとアリナタが激しい口調で会話に入り込んできた。
ミーシア•リル•サングラニト。
この国の第二王女であり、国王の命令によりこの勇者パーティーの一員となっている。
戦闘をしているとこは見たことがない。
もう1人のアリナタは、ミーシアの侍女としてこのパーティーに帯同している。
一応、魔法使いらしいのだが、正直、使っているところは1度も見たことがない。
「ミーシア、アリナタ、何か異論があるのか?」
「大有りですわ!!」
「なぜ、最前線で活躍しているアーロン様が追放なんですか!?」
ミーシアとアリナタは、その場に立ち上がり、激しく睨んでくる。
「それは、今日の戦闘を見ていれば分かるだろう?」
「ええ、今日もアーロン様は大活躍でした」
「ええ、とてもカッコよかったです」
ミーシアとアリナタは、私には決して見せない恍惚とし表情でアーロンの両腕に絡みつく。
アーロンが心底嫌そうにしているのに気づいていないらしい。
「アーロンは最前線で私のサポーターをしていたが、敵を倒してはいない。彼には敵を倒す力はないんだ」
「まあ、人の手柄を奪うなんて最低ですね!!」
「そうです。アーロン様が全ての敵を倒していたのを私はこの目で見ていました!!」
「「えっ!?」」
ミーシアとアリナタの言葉に、私とアーロンはお互いの目を合わせ、同時に驚きの声を上げた。
私とアーロンが驚くのも無理はない。
本当に敵は全て私が倒していて、アーロンは私の直ぐ後ろで必要な物資を渡してくれていただけだ。
ただ、いつも感じていたことだが、アーロンは私にくっつくように直ぐ後ろにいる。
むしろ、くっついていたような•••。
もしかすると、普段から戦闘に参加せず、超絶イケメンであるアーロンしか見ていなかった2人には、私にくっつくように動いていたアーロンが敵を倒したと思い込んでいるのかもしれない。
う〜ん
2人にどう説明しようか悩んでいた時。
「「ですから、追放されるのはマルティナ、あなたです!!」」
「「えっ!!」」
ミーシアとアリナタのとんでもない発言に、再び私とアーロンは同時に声を上げる。
「いや、しかしそれは•••」
「見苦しいですよ。それと、パーティーから追放ということは、あなたはもう勇者じゃない。ですから、婚約も破棄させていただきます!!」
「えっ?!本当に??」
「当たり前ですわ。そもそも、お父様の言ったこととはいえ、あなたのようなデブと結婚するなどあり得ませんわ!!」
私は『婚約破棄』の言葉に、内心で飛び上がるほど嬉しかった。
こっちこそ、どうしてこんな我儘王女と結婚しなければならないんだと、毎晩悩んでいた程だ。
「分かりました。追放されます!!」
私は自分の顔がニヤニヤとならないよう、気をつけながら言った。
「これでようやくアーロン様と一緒になれますわ」
「よかったですね、ミーシア様」
「お待ち•••」
口を開こうとしたのは、ミーシアの執事でこの屋敷を管理しているマイルスだ。
マイルスの隣には、使用人のリナもいる。
私は賢いマイルスに余分なことを言われる前に、高速で移動し、マイルスの口元に人差し指を押し当てる。
「マイルスさん、王女様の言葉ですよ。何か問題でも??」
「•••」
「そうですよ、マイルス。あなたは黙っていなさい」
「•••、畏まりました」
私は肩を撫で下ろし、席まで戻った。
「では、ミーシア。追放に関する契約書を作りましょう」
「はっ??契約書などいらないでしょ!?」
「いいえ。もしもですよ、私が未練たらしくパーティーに戻してくれと言ってきたら迷惑ではありませんか??」
「確かに一理ありますね。私のこの美貌に未練たらしく縋ってくるかもしれない•••。分かりました。契約を交わしましょう」
ミーシアが同意した瞬間、再び、マイルスが何かを話そうとしたが、私は魔物ですら怯える威圧を使い、マイルスを睨んだ。
マイルスは額から汗を流し、そのまま押し黙る。
さて、契約書の作成だ。
この世界では、契約書は誰もがその場で締結できる。
しかも、例え王族であろうと、決して改ざんなどはできない。
私は目の前にデータ上の契約書を映し出すと、作成を開始した。
▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎
◇契約内容◇
サングラニト王国の勇者パーティー追放に関して、今後、いっさいお互いに関わらない。
※他の王族、第三者を通じた関与も認めない。
◇契約破棄条件◇
〈マルティナ•プリズム〉
サングラニト王国王妃、プリリア•リル•サングラニトとの結婚
※書面上だけではなく、夫婦としての営みが確認されて初めて条件達成
〈ミーシア•リル•サングラニト〉
私の前で土下座で謝罪し、一生、奴隷となること
◇契約違反時の罰則◇
当該者の死
▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎
完成した契約書をお互いで確認し、承諾の意思を示すため、空中に表示されているデータ上の契約書に掌を触れる。
《契約、完了しました》
《悪神様の管理の元、いかなる場合でもこの契約書は有効となり、無理に破棄しようとした場合は死が与えられます》
悪神様、と聞くと、なぜか幼女を思い出すんだけど、なぜかな?
そんなこと考えていると、リーシアが変態を見るような蔑んだ目で私を見てきた。
「それにしても、破棄条件がお母様との結婚だなんて、本当に気持ち悪いわね」
「勇者パーティーには戻りたくないからね。決して実現しない条件にしただけだよ」
そう。
この国の国王と王妃は深く愛し合っている。
謁見にいく度、いつもイチャイチャしているほど仲が良いのだ。
だからこそ、国王は王妃との結婚を許すくらいなら、国が滅ぶのを選ぶだろう。
私は笑みを浮かべながら、「今までありがとうございました」と言って、屋敷を後にした。
★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★
▪️新作について
《タイトル》
今話題の悪徳令嬢に、元Sランク冒険者の女剣士が転生するお話
〜神様との約束で、婚約破棄された国は見捨てます〜
こちらも是非、読んでいただけると嬉しいです。
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