既望 <後編>
――俺掲示板チェックしてたって言ったけど
過去の書き込みばかり
最新の書き込みを見てなかったのよ
「ほーん」
――一番最近の書き込みに『午後□時に□□駅に集合』て
オフ会の呼びかけがあって
サイト主の女リーダーの呼びかけで
チャットの常駐メンバーが集まる計画がたってた
俺の名前も入ってた
「参加表明したんかΣ( ゚Д゚;)」
――してないしてない
いつものメンバーみたいな書き方で
勝手に指名されてたんだわ
「いくら仲良くても、実際に会ったことのない人と待ち合わせして会うとか考えられん」
「俺ゲームのオフ会はたまに行くけど」
「目的が趣味の集まりならわからなくもない(;一_一)」
「この場合引っかかるのは、サイト本来の目的ががが」
「生(信者勧誘)か、死(自殺仲間募集)か」
――そゆこと
でもその書き込みされてたのは先週くらいだった
気づいたのがついさっきよ
「オフ会参加すんの? (・∀・)」
――しない
というかできない
「デスヨネー☆」
――だって待ち合わせが
「ハァン? ( ゚Д゚)なんだただの見落としでお流れか」
――ちがう
みんなニュース見た?
「は? え?」
「いきなりwwwなwにw」
――夕方の全国ニュースで見たやついない?
『○○県△△山の近くで見つかった
レンタカーの中から
男女○人が発見された』やつ
気になってそのサイトの掲示板確認したら
あの人らの待ち合わせ場所
○○県の□□駅前だった
「お、おう(-_-;)」
「無理やりこじつけるのはヘタクソ
ちがった、怪談」
「ちょ待てよ! もう少し兄さんの言い分を聞いてやろうず」
――ネタだと思われるのも仕方ない
というか俺としてはネタであってほしい
「なにを言っているんだオニイサン」
――チャットルーム覗いたんだわ
だれもいなかった
「ネットで意気投合してオフ会で実際に会ってみたら
『アレ(´゚д゚`)ナンカチガウ』
で一気に
「オフ会翌日から仲間のログイン激減とかあるあるw」
「たとえ建前でも『死にたい』なんて話し合う奴らが
実際にオフ会しても、ろくなことにならんですよ
速やかに目的を達成するか
勝手に理想化してた相手の顔面を確認して
急激に冷めて疎遠
このどちらかでしょう」
「オフ会で出会った相手の
今後の付き合い考えるクズ思考が
オネーサン」
「ネットの友情はネットで完結した方が幸せなことが多い」
「実際に会って結婚までいく人たまに聞くけど」
「運」
「どんな出会いにも
もれなく『さよならセット』が付いてくるんですよ」
「良いこと言ったみたいに思ってんだろうが
「仲良しごっこは空中分解されて自然消滅したんだよ」
――俺もそう思った
チャットルームは誰もいないし
最新の掲示板の書き込みは『□□駅着きました』とか
『すみません遅れます』とか
『○○ナンバーの白ワゴンを改札出た○口の側に
横付けしてますから』とか具体的な
待ち合わせの連絡に使われてた
「Oh…(;´・ω・)その人らマジでオフしたんだ」
――そこから先の連絡やら会話が昨日からないんだわ
「だから『お互い
「なんで毎日チェックしてたのに
昨日だれも書き込んでなかったのに気づかなかったのさ」
――さっきも言ったけど
一昨日予定されてたオフ会の情報を
目にしたのがついさっきなの
「ニュース気になってサイト開いた?」
――ちがう
一昨日から出張しててパソコン開けなかったんだよ
「厳しいツッコミを入れて申し訳ないが
***sukeさんはこっちのチャットに昨日もいたけど
それは携帯から参加してたんですか(疑いの目)」
――正直に言えば『自殺サイト』の方のチャットや書き込みは
見たくなくなってたんだよ
毎度同じ話の流れだなーとか
こいつら終わってんなーとか思ってて
毎日見るのはきつくなってたから
ちょっと見て他のサイトに行ってた
「サイトの目的からして
「山賊? (;´・ω・)」
「
「寒いボケそろそろ自重しませんかね」
「ヒドイ(TдT)」
――チャットの方ではオフ会の計画なんて話してなかった
計画はあくまで掲示板のやりとりだけでやられてた
俺たまに女リーダーから『掲示板も見てね』と
声かけられてたから
『見てますよー^^』って適当に返事してた
過去の書き込みをがっつり見てただけで
最新の方は抜け落ちてたわけだが
「読んでるっちゃあ読んでるもんな」
「それで? オチは?」
――
ニュースで報道されてた場所が近いのが
ちょっと気になって
サイト見に行ったら誰もいないってなんか嫌な感じせん?
「偶然の一致でもバッドタ
移民グ」
「ごめん切れた」
――俺フリーメールアドレス載せてたこと思い出してさ
メール見てなかったから確認してみた
「お」
「ほいでほいで」
――フリーメールのほうにメールいっぱいきてた
『□□駅△△口で待ってます』
『どこにいますか』
『○○さんだけ連絡とれないのですが』
『△△山方面の□□口に向かってますからね』
ってさあ
「あ……(察し)」
――『○○さんは冷やかしだったんですか』
とかメールも入ってた。
最後のメールには『先にいってます』って
受信時間が昨日の深夜だった
「オフ会は一昨日の○時開催だったんでしょ?」
「いやな流れだ」
――ニュースで流れてる遺体発見から死亡推定時刻の
少しあとだよメールの受信された時間
「エー(´゚д゚`)」
――この人たちの集いと
ニュースは関係ないと思いたいけど
発見された男女比や掲示板でやり取りされてた
自殺の手法が一致するんだよなあ
「たまたまだって(;´・ω・)」
「興味本位で関わった***sukeの自業自得
とはいえ気味が悪い」
――さっきさメールきたんだわ
「あん? また?」
――フリーメールの方
『いらっしゃらないみたいなので向かいます』て
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」
「ああああああああああああああああん」
「他にサイト見てた人間の悪戯だよ
またはタイマー送信的な?」
「その彼らのオフ会、
自殺に見せかけた信者獲得活動とか……むずかしいか;」
――今もう一度サイト見ようとしたら、閉鎖されてた
「え」
「サイト閉鎖?!」
「警察の手が入ったのか…サイト主の手の込んだ悪戯か…」
――俺もう気味悪くて
ひとりじゃ処理できないからここで話した
「まあまあ良いネタだったよ」
「もし実話なら
ご遺族にあたる人たちがいるから
気安く語れる話ではない
よって***sukeの創作」
――そういうことにしといてよ
俺もう疲れたから落ちるね
みんなおやすみ
彼の話が実話だったのか、創作だったのかはわかりません。
その話を最後に、彼は私のチャットルームに来なくなってしまったので。
それ以来、残ってたメンバーと話しててもなんだかすっきりせず、私が飽きていたこともあって、サイトを放置していました。
そしてサービス停止に伴い、自然消滅しました。
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