14.それぞれの処分


ここでそれぞれの処分を発表しよう。


第一王子ジャランは、王位継承権を剥奪された。これで王位は、現時点では、無能ではないが有能でもない第二王子ケイジャンが継ぐことになる。


ジャランの罪は、聖女召喚の儀式を行い見事召喚に至ったが、その後聖力鑑定に失敗し聖女を城から追いやり、連れ戻す際も上に立つような者にあるまじき行為(誘拐、強制わいせつ罪未遂)をしたこと。

次期王としての道は断たれたが、今後は勉強に剣術に魔法に精を出し、規定のレベルまで上がったら王の補佐に着く道は残された。親の温情である。



「それでなんでお前まで一緒になって剣を振るっているんだ?」


「やだなジャラン様。僕はあなたの側近なんですよ? ここにいるのが当たり前でしょう。剣の稽古は、ついでです。最近事務ばかりで体が鈍っているので。」


「そ、そうか……。」



第一王子が罰せられると同時に、側近は皆離れていった。この、ハイデルド・グリュー以外は。ハイデルドにとってジャランは、『からかいがいのある素直なバカ』で、とても貴重な存在だった。王位にはつけなくとも、今後も側で楽しませてもらう気らしい。



「いまさら王になれなんて……もう高等学園も卒業したのですよ?」



この決定に、第二王子ケイジャンは乗り気ではなかった。それはそうだろう。もう18にもなるのに、これから王政のすべてを学ばなければならないのだから。

しかしジャランについても、学んでいたはずがレベルに表れていなかったのだ。どちらにしろ今から真面目にやらせるならケイジャンのほうがマシだろう。



そんなこんなであまり優秀でない息子たちには不安しかないが、王は「いいお嫁さん見つけるからね。」と優秀な嫁探しに精を出した。




騎士団長ゲオルグ・ドミストスは、信じるものを間違えたために聖女に多大なる迷惑をかけたとし、降格処分となった。警備課に配置され、警備隊長の元鍛え直される。


王都市街の警備隊長といえばパン屋の常連サイラスの上司にあたる人物だ。彼は普段ヘラヘラしているが、出身は瘴気の湧き出るポイントの多さが国内ナンバーワンの北の辺境伯領で、そこで騎士をしていたバリバリの戦闘中毒だ。訓練が半端なくキツい。

騎士団長に就いてからは訓練よりも事務に忙しかったゲオルグは、剣の腕は落ちてはいないものの今までやったことのないような過酷な訓練で毎日くたくたになっている。




パニクル・ビオーテは、伯爵家で謹慎したのちに北の辺境伯領に移動となった。

前述した通り、そこは生と死の狭間にあるような大変な場所だ。



「のろのろしてんな新人!」


「はっ! パニクル・ビオーテ、スピードアップします!!」


「そんな小さな魔法の球でモンスターが倒せるかよ!!」


「はっ! パニクル・ビオーテ、魔力量アップします!!」


「「なんだパニクル・ビオーテ。あいつ、結構使えるな。」」



元騎士団長ゲオルグ・ドミストスは、パニクル・ビオーテについて「対して秀でたところのない一団員」と言っていたが、やる時はやる男パニクル・ビオーテ。辺境の地では意外と使えるやつだったので問題なく馴染んでいた。



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