僕はまた君に出会いたい

レモン

ありがとう

 「オラッ!」

 声と同時に僕の腹に拳が飛んできて痛みが体全身に走った。

 僕はあまりの痛さにその場で腹を両腕で抑えながらうずくまった。

 「ほらどうした、まだこんなんじゃ終わらねえぞ、っと!!」

 うずくまっている僕に対して今度は蹴りが飛んでくる。

 「も、もう、やめて。」

 僕は蹴られながらも声を出すが彼らはやめることはなかった。

 痛めつけられている僕を見ながら笑っている奴らもいる。


 なぜこうなっているのかはほんの10分前にさかのぼる。

 僕は高校を途中で抜け出し商店街をぶらぶら歩いていた。

 「何かあったのかな?」

 歩いているとショーウィンドウ越しにあるテレビでニュースが流れておりニュースのテロップに大きく「世界の終わりか!?」と書かれており僕はニュースをみた。

 ニュースでは中継映像が流れ始めカメラが空を映していた。

 テレビに映った空には大きな惑星が空を埋めていた。

 テレビを見ていると周りが騒がしくなっていて顔を向けると商店街にいた人たちが

 集まってみんな空を見上げていた。

 僕もそれを見て駆け足で人が集まっている方に向かう。

 向かっている途中で町内放送が流れ始めた。

 「皆さん!すでにご覧になっている方もいると思いですか空の星が地球に向かって迫ってきています!!落ち着いて近くの避難所に避難を開始してください!!」

 放送している人も焦っている声で放送をしていた。

 僕がもう少しで人が集まっているところに付こうとしたとき路地裏から人が出てきて僕は避けようとしたが一足遅く出てきた人にぶつかってしまった。

 「っと、おいおい、いてぇじゃねえかよ。」

 ぶつかった人を見るとぼくと同じ高校生くらいの人が制服を着崩していた見るからに不良の男だった。。

 「すいません。」

 僕は頭を下げ謝罪をしてその場を後にしてその人の横を通り過ぎようとした。

 通り過ぎる瞬間僕の肩をぶつかった人が手で押さえ足を止められた。

 「お前、すいませんだけで済むと思ってんのかよ。そんなんで許してもらえるわけ   

  がないだろうがよ。」

 そう言うと男は僕に向かって手のひらを前に出してきた。

 僕はそれが何なのかわからないでいると

 「ほら速く出せよ。」

 「な、何をですか?」

 「何寝ぼけたこと言ってんだよ、金だよ金。とりあえず3万でいいからほら速

  く。」

 男は手のひらを軽く振ってはやくだすようにと催促してくる。

 「わ、分かりました。」

 僕がそう言うと男は僕を抑えていた手を退かした。

 手を離した時僕は隙を見て油断している男に背を向け逃げだした。

 しかし、男に背を向けて逃げ出した時僕の背にすでに別の男が立ち尽くしていた。

 その男は身長が2m以上ある巨漢だった。

 「おいおい、何逃げだそうとしてるんだよ。」

 その言葉を聞いてこいつもこの不良の仲間だと悟った。

 最初に出てきた男の後ろから仲間だろうか他の不良が2人3人4人と次々と出てきた。

 巨漢の男が僕の両肩を抑えた。

 「お前、ちょっと一緒に来てもらおうか。」

 そう言って僕は不良たちが出てきた路地裏にと連れてかれ逃げ出そうとした罰だとかで不良に囲まれながら暴行をされていた。

 「なあ、おい見ろよ。こんなとこに猫がいるぞ!」

 そう言って不良の一人が猫の首根っこをつまんで持ち上げていた。

 ニャー、ニャー

 猫は苦しそうな声を上げながら悶えていた。

 「やめろ!」

 僕はそんな猫を見てすぐさま立ち上がり不良から猫を奪い取った。

 猫を奪い取って抱きかかえていると、背中から蹴飛ばされ猫を覆う形でうずくまった。

 そんな時また町内放送がまた流れ出した。

 次に流れてきたときの声は打って変わって何が起きたのかわからず混乱しているような声をしていた。

 「えー、皆さん先ほどお伝えした星ですが先ほど消えました。役場としてもまだ何 

  も分かっておらず、念のためできるだけ外出を控えてお待ちください。」

 そう言うと放送は終わった。

 でも僕への暴行は終わることはなく続きゲスい笑い声が路地裏に響いた。

 僕はただただ彼らが飽きるのを待っていた。

 「どうした?もう喋れなくなったのか!?それじゃあ、そろそろ出界の一発行っと  

  こうかな~!」

 男が拳を大きく振りかぶり僕に振りかざそうとしていた。

 拳を構え勢い良く拳が僕に向かってくる。

 僕は覚悟を決め歯を食いしばり、目と強くつぶる。

 「おい、なんだよこれ?」

 その声は僕の目の前から聞こえてきた。

 僕は恐る恐る目を開け顔を上げると男の拳は途中で止まり辺りを見渡していた。

 僕もその異様な光景に辺りを見渡していた。

 周りを見ると空から白い羽が降り注いでいた。

 その光景は神秘的なものを感じた。

 バサッ

 するとどこからともなく音が聞こえ降り注いでいた羽が消えた。

 その場にいた全員が音の方に目を向けた。

 音の正体はすぐに分かった。

 音のは羽をはばたかせた音だった。

 「おい、なんだよあれ。」

 不良の中の一人がそう言うのも無理はない。

 白い羽が姿を隠すようにしていたからだ。

 次の瞬間、羽が動き出し隠れていた正体が姿を現した。

 姿を現したのはまるで白い布をただ纏っているような格好で胸や肩、肘に鎧を身にまとい、腰にレイピアのような細い剣を携えていた女性だった。

 髪はまるで光っているかのように綺麗な金色をしていて胸のあたりまで髪が伸びていた。顔は整っていて肌も白く綺麗で優雅、可憐、といった言葉にふさわしいような女性だった。

 その場にいた全員彼女に見惚れ立ち尽くしていた。

 すると不良の中の一人が彼女に向かって歩き始めた。

 「なあ、そこの綺麗な姉ちゃん。こんなところで何やってるの。それってもしかし 

  てコスプレってやつ?ほんとによく似合ってるよ。もしよかったらこれから俺と  

  飯食べに行かない?」

 彼女は近づいてくる男に気が付き急いで羽を背中に畳んで腰の剣を抜き男に突き出す。

 男は驚き肩が跳ねあがった。

 「おいおい、なんだよいきなり。もしかしてそういう遊び?グォー!」

 男が声を上げると突き出した剣を男に向かって突いた。

 当てる気がなかったのか外したのか、剣は男の頬を掠めただけだった。

 男の頬から生暖かい血が頬を流れ男は手でそれを拭うと初めて血が流れていることを知った。

 「このアマ、いきなり何しやがる!!」

 男は拳を振り上げ彼女に向かって殴りかかった。

 彼女は余裕で男を躱し足をかけ男を転ばした。

 「お前、自分が何したかわかってるんだろうな!お前ら、あいつを捕まえろ!!」

 そう言うと不良の仲間たちは彼女を捕まえようと走り出した。

 彼女は抜いていた剣を鞘にしまった。

 彼女もまた向かってくる男たちに向かって歩き始めた。

 男たちの攻撃は余裕で躱されまるで彼女に遊ばれているようにも見えるほどだった。

 彼女は男たちに脚を掛け転ばせるだけでそれ以上のことをしなかった。

 男たちの転んだ先にはゴミ箱や、室外機などがあり頭や体をぶつけ地面に付していた。

 最後に巨漢の男が彼女の前に立ちふさがった。

 彼女と巨漢の男の身長差は圧倒的でまるで親と子の世に見えるほどだった。

 「俺の仲間の遊びに付き合ってもらって悪いがちょっと大人しくしてもらうぜ。」

 そう言うと巨漢の男は彼女に向かって手を広げ体を掴もうとしたが彼女は男の手首を掴んだ。

 しかし、男の手首は太く彼女の手の大きさには余るほどだった。

 「おいおい、なんだマッサージでもしてくれるのか?」

 男は鼻で笑っているとすぐに表情が焦りと恐怖に変わっていった。

 男は彼女の手を振りほどこうと腕を動かそうとしているが腕がピクリとも動くことはなかった。

 男の腕を見ると彼女の手が先ほどよりも腕にめり込んでいるのが見えた。

 彼女は一切表情を変えていなかったが男の額には汗が流れ顔は焦りと恐怖に染まっていた。

 どんなに腕を動かしても彼女が手を離さないでいると男は彼女に向かってもう片方の手を振りかざした。

 すると女はつかんでいた手を離して拳を躱し、男の間合いに入ると男の腹に一発入れた。

 彼女は一発入れ男に背を向けて歩き始める。

 そうすると立っていた男は気絶して地面に倒れた。

 それを見た僕が最初にあたった男は腰を抜かして仲間を置いて逃げ出した。

 僕はただただ男たちが倒れていく様を見ているだけだった。

 彼女は僕の前に来ると立ち尽くした。

 「あなた、大丈夫?もしかしてッ彼らあなたの友達だった?」

 彼女はそう言いながら僕の顔や腕に手を回してどこか怪我をしていないか見てくれているようだ。

 「えっ、あ、あいつらは別に友達じゃなく、ッ!」

 彼女が傷を見ていると体に痛みが走った。

 「ごめんなさい!やっぱり怪我をしていたのね。ちょっと待ってね。」

 そう言うと彼女は手のひらを傷口に向けた。

 次の瞬間彼女の手が光だした。

 その光はオレンジ色で温かく感じた。

 「ふぅー、どう?もう痛くないと思うんだけど?」

 僕は、彼女が何を言っているのかわからなかった。

 まさかあの光で傷が治ったような口ぶりだけどそんなことがあるわけないと疑ったまま体を動かしてみると、信じられないことに確かに痛みはなくなっていた。

 それによく見ると体に合ったほかの小さな傷までもがいつの間にかなくなっていた。

 「凄い、ほんとに傷が治ってる。」

 「そう、ならよかったわ。」

 僕は傷が治ったことに驚いていると彼女は僕に背を向けて歩き始めた。

 「それじゃあ、もう怪我しないようにね。」

 そう笑顔で言うと彼女は路地裏から出てたたんでいた翼を広げた。

 「ちょ、ちょっと待って、せめて名前だけでも!」

 言い終わる前に彼女は飛び去ってしまった。

 彼女は飛んでいくとすぐに姿が見えなくなった。

 彼女が飛んでいった空を見ていると一枚の白い羽が僕の前に落ちてきた。

 僕はそれを拾い上げ再び空に顔を向けた。

 「まだ、お礼を言っていないのに。」

 

 次の日のニュースでは昨日の惑星の事さらに昨日から相次ぐ未確認生物、今では亜人と言われているがその目撃情報のことで世間は大騒ぎだった。

 それから1週間ぐらいした後だろうかテレビで地球とガイウスあの時現れた星が何らかの形で融合してもともとその星に棲んでいた生物たちが一緒になったとニュースで報じられていた。

 それから5年後最初は人間は亜人を亜人は人間を互いに嫌っていたが今では全員ではないだろうが今では互いに仲良く共存していた。

 そんな僕も今では社会人となり一人で暮らしている。

 「行ってきます。」

 誰もいない部屋に向かってそう言って会社へと向かう。

 今日はいつものように熱く僕はカバンをあさってハンカチを取り出す。

 その際、僕はいつの間にかカバンの中にあった一つのお守りをハンカチをとるときに落としてしまったが僕は気が付かなかった。

 「あの、落としましたよ。」

 僕の後ろから突然声が聞こえてきた。

 僕は振り返り、僕を呼び止めたのは翼人と言われる背中に羽の生えた亜人だった。

 差し出されたものを見てカバンの中を確認すると僕の物だと気が付いた。

 「ありがとうございます。落としといてなんですが、これとても大事なものなんで  

  す。」


 「そうだったんですかならよかったです。もしよかったら、教えてくれませんか?

  なんで大事なものなのか。」


 「ええ、良いんですけど、気を悪くしたらすいません。これは僕を助けてくれた女

  性が落とした羽をお守りにしたものなんです。その女性はちょうどあなたと同じ 

  種族で見ず知らずの私を何の見返りも求めないで助けてくれたんです。でも、そ

  の時にお礼が言えなくて次あったら必ずいうために忘れないために持ち歩いてい

  るんです。まあ、最悪を覚悟しているんでもし会えなくてもしょうがないと思っ 

  ています。世界は広いですしね。」


 僕は彼女に向かってあの日のことを話した。

 その話を彼女は全部聞いてくれた。

 「そうだったんですか、でも、もうその彼女さんにお礼言わなくてもよくなりまし

  たね。」

 彼女は僕に向かってそう言ってきた。

 「それって、どういう意味ですか?確かにあなたと同じ種族ですがまさか、

  そんな」



 「世界って意外と狭いものですね。」



 彼女は僕にあの時見せた時と同じ笑顔を僕に向けてきた。



 「やっと、あなたに言える。

   ありがとうございます。」




















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僕はまた君に出会いたい レモン @lemosuka

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