ドラゴンと包丁
夜野はずみ
前書き
『我が冒険と葛藤と思索、食事の香りに満ちた
――著者・
これは日記であるが、それを編集して冒険小説作者として名を残すことになろうとは思わなかった……と言うのがこの老いた料理人の思うことである。まだ若かった頃なので、文に若さがあるのもまた面映ゆいものだ。
軽く我が身の紹介をしておこう。勤勉な冒険者よりなお早く、朝の日の出よりも前に目覚め、仕込みをし、朝食を仕立て、仕込みをし、軽い仮眠。昼食を仕上げ、希望があれば摘まむものとおやつを作りながら仕込みをし、勤労を終えた冒険者に夕食を献上して、キッチンを清掃して月が天頂に来る頃に眠る……しがない料理人である。よって、あらかじめ読者諸兄には言っておく。
ここまで書いたがそもそも一般的な料理人は一党になどならないし、あまつさえ旅団の料理を作ったりするわけもないので、余計なことなのかも知れない。
歳をとると口数が増えるとは言うが私は昔から口数多かった上に書くのもそこそこ多かったから、そう言う意味では私はあらゆる意味で『口』が多いのかもしれない。よって、何故これほどまでに嫌がる一党の料理人になった理由に入ることにする。
忘れもしない。見習いからひとかどの料理人になってから2年後。私の街がドラゴンに襲われた後の事だった。何があろうが、町が壊れ、人が死のうとも腹は減ると思い知り、私は命からがら持ち出した調理器具を手にして、ドラゴンの肉をどう料理するべきか悩んでいた。
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