3・魔王と執事とパイチ
「わたくしの
「タヒチみたいな言い方はやめて!」
とすかさず、佳奈。
異空間からさっそうと現れた長身の男は、コンシェルジュのような格好をしていた。つまりタキシードにお洒落なタイをしてる。
灰茶の長い髪を後ろで束ねており、ドSの香りがした。
「こちらの方は?」
と優人。
「
魔王は相変わらず腕組みをしながら、尊大な態度で。
「見ての通り我がアホな主君のせいで、人々の活気に満ち溢れていたworld of
執事は”おこ”なようである。
「いや……あれはだな。某大型ネットショップから届けものがあるのかと……」
「お黙りなさい! あれほど注意喚起されていたのに、魔王様自らリンクを踏みますか?!」
「痛ッ」
魔王は執事にひっぱたかれた。
魔王、涙目。
どうやら異世界にもネットワーク(仮想情報伝達世界)が存在し、そこでは物品の取引などが簡単にできるとのこと。当然、異世界にも悪い奴は存在する。最近ではそのネットワークを悪用し、詐欺を行う集団がいるらしい。
「そんなわけで、特殊な呪いにかかり全てを奪われてしまったのです。しかしあんなものどうするのやら。世界は存在してこそ、価値があるのです」
確かにそうだ。
世界が滅亡してしまっては、どんなに価値があるものでも売ることはできないし、売る相手がいないのだから儲かることもない。
「つまり、相手も相当なアホということです」
ヤレヤレと言うように執事は両手を広げると、肩を竦めた。
「ただ、この呪いには抜け道があり、生き物は回収できないようなのです」
つまり建物など自ら動くことのないものは持っていくことが出来ても、動物や人間、魔物などは奪うことが出来なかったということだ。
しかし見渡す限りの更地。
この大地に生き物がいるとは思えない。
「で、その人たちは何故ダンジョンに?」
と優人。
「建物などを吸収する際に一緒に吸い込まれたようなのですが、”エラー”となり中途の空間に落っことされたといえばわかりやすいでしょうか?」
つまりの落とされた場所がダンジョンということらしい。
元々この世界はこの大地と異空間で出来ており、その異空間は保管庫だったりランダムダンジョンだったりするとのこと。
この世界に人々がいた頃はギルドが存在し、冒険者が数多くいて一攫千金を狙ってランダムダンジョンへ探索へ行っていた。とても豊かな世界だったのだ。
この世界では以前より魔族と人間が仲睦まじく暮らしていたらしい。
魔族を統べる魔王と人間を統治する女神が恋仲となったことで、別世界の秋葉原電気街へ足蹴く通う女神は、魔王にこの世界の全てを任せたのである。
『わたし、アキバ行く。忙しい。最新家電のチェックに余念ナイね!』
(それもどうかと思う)
「ここだけの話し、女神様は隠れ(ているつもり)お腐れ女子でありまして。電気街へいくと偽り、アニメイ〇トに通い詰めているそうで……」
と声を落とす執事。
魔王に聞かれてはならないようだ。
「あなた方を選んだのも、『おお! 兄弟萌えるね。イケるね。弟攻め最高
(それでは死んでいる!)
だが和宏も優人もその意味が分かっていなかった。
意味が分かった佳奈だけが、しらーっと和宏たちを見ている。
「そんなわけで女神には気を付けて……」
どう気をつけろと?
「って、あなた。なんです? その帽子は」
執事は何かに気づいたように、優人の頭を見つめて。
「可愛いでしょ? 女神に貰ったんだ」
優人はいつの間にか兎耳帽子をかぶっていたのである。
「ああ。手遅れでしたか」
まあ、いいでしょうと彼はため息をついた。
「あなた方にはランダムダンジョンへ向かい、住人を救出するという任務を遂行していただきます」
どうやらこれが異世界で和宏たちのなすべきことのようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。