なんでバックアップとってなかったの?

 何故バックアップとってなかったのか。

 それだけやってりゃ危なかったで済んでたのに。


 端的言えば、怠けた。

 後は油断だ。慣れという最多の事故要因だった。


 エディターに変な仕様があって危険性があるのは最初から知っていた。

 ただ、それを置いても便利だったのだ。より正確に言うと相性が良かった。

 サポートなんぞとっくに止まっている古い奴で、JISかSJISしか打ち込めない、縦書きと階層化だけが取り柄のモノだったが、少なくとも自分にはWORDのような高級ソフトウェアよりよほど手に馴染んだ。

 本文はカクヨムのサイトで直接打ち込んでしまうから、それを使うのはせいぜいト書きくらいまで。一部使えない文字があるくらいで何ら支障がなかった。

 実際、一年くらい使ってても変なことは起きなかったしな。

 で、いざ「10万字に挑戦するからしっかりした下準備を作るぞ!」と息込んで始めた時も、「仕様上の動作」でプロダクトの98%が吹っ飛ぶなんて想像もせんかった。

 データが消えることがあるってのは動作設計レベルで理解していたのに、半年も使い込んでいると「自分だけは大丈夫」みたいな恒常性バイアスにすっかりハマっていたという訳である。


 まあそういうことで、最終文庫本一冊分、毎日更新の新作の為の諸々、企画書とか資料とか考察文とか、世界観とかキャラデザインとかテーマやコンセプト、必要なビジュアリティからその場で思いついた他作品のメモまで、まるっと消えたのである。

 丁度、準備の最終工程、プロットが完成して上書き保存した時だったのよ。

 いやぁ、へこんだわね。流石にさ。現在も踏まれた空き缶レベルだけどさ。


 アンタたちは気をつけなさいよホント。

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