シャサツ

いぷしろん

シャサツ


 処刑される直前。今、僕はそんな人の気持ちが手に取るように分かった。


 視線を感じる。


 僕は何もしていない。

 それなのに、今日、無慈悲にも僕の番号は告げられた。


 “No.4”それが僕の運命の番号。


 今年になり「死」を連想させるこの番号を与えられた時から、既に予感はしていた。


 ――視線を感じる。


 処刑される寸前。人は何を思うのか。昔のヨーロッパでは、ギロチンにかけられながらも偉大な言葉を遺した人がいたという。

 僕は、とてもそんなことはできそうにない。

 僕が願っているのはたったひとつ。一発で決めてくれということだけだ。


 相手の腕が悪かったり、僕が変に身じろぎでもしたら――そう考えるだけでも身体が震えてしまう。


 怖くて恐ろしくて、震えを抑えようとしても無理で。

 だから、僕は目を閉じ怯えるしかなかった。



「――王寺おうじ、目を開けろ」



 ああ……見咎められてしまった。

 目を開ければ、そこには黒い物体が見えるはずだ。そうは分かっていても僕の身体は言うことを素直に聞いて、薄く目が開く。


 まず視界に差したのは光。僕は現実を、世界を直視したくなくて上を向いていた。

 青と無色のあまりの眩しさに前を向く。


 すると、そこにはやはり、黒い筒。



「よし、笑ってー」



 なんとも残酷な命令か。

 僕は自分でも分かるぎこちない笑みを浮かべる。


 しかし、どうやらそれは満足のいくものだったらしい。あるいは、ひとりひとり同じように処理するのが面倒になったのか。

 頷き、ついにトリガーに手がかかる。



「はいチ――」



 同時に、音が聞こえた。


カシャリ


 銃声シャッター音の余韻が去っていく。


 僕はくるりとカメラに背を向けた。


 背中には「王子様ぁ……」とか「ステキ……」とか、女子の黄色い声が突き刺さる。


 また、男子からは「写真撮影ごときで……」などの言葉と、数多の二つ一組の睨みつける目を頂戴する。

 それはまるで、僕を射殺さんとするような視線だった。







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ノートに後書き的なのありますのでよかったらどうぞ

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シャサツ いぷしろん @kuma77mon

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